アップルが「Apple SIM」でデータ通信サービスも掌握か ━━キャリアと端末、ユーザーの関係が一変する恐れも石川温のスマホ業界新聞

» 2014年10月24日 11時45分 公開
[石川温]
「石川温のスマホ業界新聞」

 10月16日(現地時間)、アップルが「iPad Air 2」「iPad mini 3」を発表した。iPad Air 2は6.5ミリという薄さという点に驚かされたが、その他においては、概ね予想通りの発表だったように思う。

 しかし、我々の予想を超えてきたのが「Apple SIM」の存在だ。発表会では特に触れられなかったが、アメリカとイギリスで販売されるデバイスに関しては、Apple SIMカードが内蔵され、ユーザーはiPadを起動後、好きなキャリア、料金プランや契約期間を選べるようになるという。

この記事について

この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2014年10月18日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額525円)の申し込みはこちらから。


 また、Apple SIMカードは、アップルストアでも販売され、日本からの旅行客でも購入でき、現地の契約が利用できるようになるとのことだった。

 アメリカではAT&T、スプリント、T-Mobile US、イギリスではEEが対象のようだが、いずれは対象国やキャリアが拡大していくのだろう。是非とも日本のキャリアでも使えるようになって欲しいものだ。

 アメリカの報道では「ベライゾンで使いたい場合はベライゾンのSIMカードを挿入すれば使える」とあるので、完全なソフトウェア対応ではなく、SIMカードを用いたサービスと思われる。NTTドコモがサービスを開始している「eSIM」に近い形といえそうだ。

 これまで、日本から海外に行った際には、現地でSIMカードを購入し、プリペイド契約するという手間を毎回、惜しまずにやってきたが、Apple SIMカードが出てくれば、そうした煩わしさから解消されつつ、安価な料金プランでiPadを使えるようになるのはとてもありがたいことだ。

 ただ、アップルがこのような取り組みを始めたと言うことで、今後、業界には様々な影響が出てくるものと思われる。

 例えば、これが「アップルがiPad上でデータ通信契約を販売している」という図式ならば、この仕組みを経由した契約は、今後、アップルがキャリアから手数料やデータ通信料金の一部を徴収する、という取り決めをすることも可能になってくるだろう。

 また、同じ画面上で複数のキャリアが選べると言うことは、キャリア間の競争が過熱し、値下げやキャンペーンが盛り上がる可能性も考えられる。

 iPadで手軽に使える料金プランがキャリアから出てくるようになれば、日本においては、ここ最近、ようやく盛り上がりを見せているMVNOにとっては逆風にもなりかねない。

 もし、アップルが「Apple SIMに対応したキャリアしか使わせない」という方針になってしまえば、SIMフリーであっても、他のMVNOが使えなくなるという恐れも出てくるだろう。

 現在、総務省がSIMフリー市場を盛り上げようと躍起になっているが、アップルの意向次第では総務省の努力は水泡に帰す可能性もある。

 キャリアとメーカー、そしてユーザーの契約体系までも一般化させる可能性を秘めたApple SIM。今後、いろいろと面白い展開が期待できそうだ。

© DWANGO Co., Ltd.

アクセストップ10

2025年12月24日 更新
  1. 「iPhone 16e」が突然登場 「iPhone SE」とは微妙に違う立ち位置【2025年2月を振り返る】 (2025年12月22日)
  2. 「楽天カード」は2枚持てる? 2枚持ちのメリットや注意点を解説、持てない組み合わせもあり (2025年12月23日)
  3. “やまぬ転売”に終止符か 楽天ラクマが出品ルール改定予告、「健全な取引」推進 (2025年12月23日)
  4. 「スマートフォン・オブ・ザ・イヤー2025」開催 ハイエンド/ミッドレンジで10機種を選定 (2025年12月22日)
  5. シャープのAIロボ「ポケとも」と暮らしてみた スマホよりも自然に会話ができる“もう1人の家族”だ (2025年12月22日)
  6. 「iPhone 16e」の価格が出そろう Appleと4キャリアで最安はどこ? 一括価格と実質負担額を比較 (2025年02月21日)
  7. 「スシロー」アプリはスマホのバッテリーを消費しやすい? 無駄な動作を抑える方法 (2025年12月23日)
  8. メルカリで詐欺に遭った話 不誠実な事務局の対応、ユーザーが「絶対にやってはいけない」こと (2025年04月27日)
  9. 「HUAWEI WATCH GT 6」レビュー:驚異のスタミナと見やすいディスプレイ、今買うべきスマートウォッチの有力候補だ (2025年12月24日)
  10. 最長14日駆動のスマートウォッチ「GARMIN Venu 3」がセールで13%オフの4万8309円で販売中 (2025年12月22日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー