ポストPCの中心に――iPad Airに「タブレットの理想」を見た(1/3 ページ)
多くの人のライフスタイルを変えてきた「iPad」は、世紀の大発明だったといえよう。そんなiPadシリーズの最新モデルとなる「iPad Air」を、いち早く試す機会を得た。“Air”の使い心地はどのようなものか。体験を交えながらリポートしたい。
使う人を選ぶ無粋なPCの世界から人々を解放し、より洗練されたネットとアプリの世界へ。これは2010年1月に初代iPadが登場してから変わらない、“iPadの魔法”である。そこで求められたのは、いつでもどこでも誰もが使えるというコンピューティングの理想だ。iPadの登場と普及は、単なるIT業界のトレンドなどではなかった。人々の生活を豊かにし、社会や産業を変革し、世界そのものの風景を一変させるもの。ゴットリープ・ダイムラーとカール・ベンツが作りだした自動車、ライト兄弟が成功させた飛行機、トーマス・アルバ・エジソンが実用化した白熱電灯や電話機に匹敵する「世紀の大発明」だった。
あれから、わずか3年。iPadの累計出荷台数は1億7000万台を突破し、多くの人々のライフスタイルを、オフィスや仕事の在り方を、教育や医療の現場を変えていった。2012年には7.9インチディスプレイを搭載し、小型の「iPad mini」も登場。ラインアップが拡大したことで、タブレット市場におけるiPadの牙城は揺るぎないものになった。
そして2013年10月22日。Appleが「iPad Air」と「iPad mini Retinaディスプレイモデル」を発表した。筆者は今回、発売前のiPad Airをいち早く試す機会を得た。初代iPadから続くiPadシリーズの後継機となるiPad Airの使い心地はどのようなものか。体験を交えながらリポートしたい。
“Air”の名に恥じない見た目以上の軽さ
持ち上げたときに、その軽さに嘆息する。
iPad Airとの出会いはそうして始まる。実際、思わず「おおっ」とうならずにはいられない軽さなのだ。
パッと見たときの印象は従来のiPadではなく、iPhone 5/5sやiPad miniに近い。ディスプレイサイズは9.7インチ(IPS液晶)のRetinaと先代を踏襲するが、ベゼルが43%も小さくなった。iPad Retinaディスプレイモデルの約185.7(幅)×241.2(高さ)×9.4(厚さ)ミリから、iPad Airは169.5(幅)×240(高さ)×7.5(厚さ)とひとまわり小さくなっている。このサイズ縮小により、重量はWi-Fiモデルが469グラム、Wi-Fi+Cellularモデルが478グラムと、先代よりも180グラム以上の軽量化を果たしている。
と、スペックを見れば“軽くなっていることに納得”なのだが、実際に手にしてみると、数値よりももっと軽くコンパクトに感じる。これはiPad Airが軽量化をしつつも、質感の部分で一切の妥協をしていないことに起因するだろう。金属とガラスを組み合わせるというAppleのお家芸はiPad Airでも健在であり、ボタンのひとつひとつからダイヤモンドカットで面取りされた側面まで、高い金属加工精度で作られている。むろんボディ剛性も高く、隅の部分をつまんで持ち上げても、たわむような不安感を感じることはない。高級時計のような質感はそのままに軽量化を実現しているため、数値以上に「軽さ」の印象が強いのだ。Appleがあえて“Air”の名称を付け加えたくなったのも納得である。
そして、この軽量化の恩恵はそこかしこで感じることになる。
カバンに入れてもずっしりとした重さを感じず、どこにでも持ち運びたくなる。カバンの中の荷物が多いと先代までのiPadは重さが少し憂鬱になることもあったが、iPad AirはiPad miniと同様に気軽に持ち歩ける。日本では日常的な移動で、クルマではなく電車やバスを使う人が少なくない。そのような交通環境下でもiPad Airの軽さならば、持ち運びが面倒になることはない。
また、長時間持っていても肩が凝らない、というのも大きなメリットだろう。例えば電子書籍や電子新聞をじっくりと読んだり、ゲームに夢中になって遊んだりしても、iPad Airでは先代までのように重さで肩が凝るといったことが起きなかった。
むろん、より軽く小さくということでは、今回Retina化されたiPad miniの方がもっとコンパクトだ。しかし、iPad Airは9.7インチというディスプレイサイズながら、iPad miniに引けを取らない軽さにまでなったところに意味がある。軽量&モビリティ重視でiPad mini派の人も、一度手に取ってみる価値がAirにはある。
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