「MADOSMA」に続くスマホも――日本で再びWindows Phoneが登場した理由:石野純也のMobile Eye(5月25日~6月5日)(1/2 ページ)
マウスコンピューターが、日本では約4年ぶりとなるWindows Phone搭載スマホを発売するなど、日本で再びWindows Phoneが盛り上がりを見せつつある。今回はグローバルと日本、それぞれの観点からWindows Phoneを取り巻く状況を解説する。
約4年ぶりに、Windows Phoneが再び日本で発売されることになった。マウスコンピューターは6月2日、Windows Phone 8.1 Update搭載の「MADOSMA」を6月18日に発売すると発表した。合わせて同日から、直販サイトや家電量販店で予約の受付が始まっている。まだ発売日は確定していないが、プラスワン・マーケティングもWindows Phoneの「Ninja」を開発中だ。
KDDIが販売した「IS12T」以降、Windows Phoneは日本で日の目を見ることがなかった。開発を進めていたメーカーもあるようだが、商用化には及んでない。では、ここへ来て、なぜ急にWindows Phoneを出そうとする動きが活発化しているのか。グローバルと日本、それぞれの観点からWindows Phoneを取り巻く状況を解説する。
要件緩和が功を奏し、Windows 10への期待も高まる
Windows Phoneの転機となったのが、2014年2月にスペイン・バルセロナで発表された各種施策だ。同時期に開催されたMobile World Congressに合わせ、Microsoftは、Windows Phoneのハードウェアに求める要件を大幅に緩和することを明らかにした。デュアルSIMやTD-LTEといった、中国、アジア市場に向けた取り組みが発表されたのも、この時のことだ。それまでは、Windowsキーの搭載が必要だったり、ハイエンド向けのチップセットが必要だったりと、メーカーにとってWindows Phoneを作りやすい環境とはいえなかった。
これに対してMicrosoftは、Windows Phone特有の取り決めを撤廃していったというわけだ。リファレンスデザインに簡単なカスタマイズを加えるだけで出荷できる「クアルコム・リファレンス・デザイン」(QRD)が、Windows Phoneに対応したことも、ローエンド端末を作る中小メーカーにとって影響が大きかった。その結果、メーカーは、Android向けに作ったハードウェアを“流用”可能になった。1つのハードウェアでAndroidとWindows Phoneの両方に対応させることで、開発リソースを大幅に削減できるというわけだ。
実際、中国メーカーのTCLなどは、同一筐体(きょうたい)でFirefox OSも含めた3つのプラットフォームに対応した機種を2015年のCESで発表している。2015年6月に開催されたCOMPUTEX TAIPEIでも、台湾メーカーのAcer関係者が、これまで発売してきたフラッグシップモデルの筐体を使い、Windows Phoneを開発する意向を明らかにしている。また、同イベントでは台湾メーカーのBungBungameも、WindowsとAndroidに両対応した「WOLF2」を出展している(ただし、2つのプラットフォームでチップセットが異なる)。
とはいえ、Windows Phoneに市場性がなければ、端末は増えてこない。米調査会社のGartnerによると、グローバルでのWindows Phoneのシェアは、2015年第1四半期でわずか2.5%。国別で見ればシェアを伸ばしている国もあるものの、依然としてパイは小さい。そんな状況を変える1つの可能性として期待されているのが、この夏に登場する「Windows 10」だ。
2015年第1四半期出荷台数 | 2015年第1四半期マーケットシェア | 2014年第1四半期出荷台数 | 2014年第1四半期マーケットシェア | |
---|---|---|---|---|
Android | 26万5012 | 78.9% | 22万7549 | 80.8% |
iOS | 6万177 | 17.9% | 4万3062 | 15.3% |
Windows | 8271 | 2.5% | 7580 | 2.7% |
Blackberry | 1325 | 0.4% | 1714 | 0.6% |
Other OS | 1268.7 | 0.4% | 1731.0 | 0.6% |
Total | 3360万5440 | 100% | 2816万3690 | 100% |
Gartner調べ |
Microsoftは6月1日、Windows 10の提供開始日を7月29日と発表した。Windows 10はPC、タブレット、スマートフォンでプラットフォームの共通化が図られており、1つのユニバーサルアプリがすべてのデバイスで起動するのが特徴だ。OSそのものはPC、タブレット向けとスマートフォン向けで異なっているが、PC向けに開発したアプリはそのままスマートフォンで流用できる。特に法人ユーザーについては、業務用に開発したWindowsアプリを、そのままモバイル環境で利用できることは大きなメリットだ。
また、スマートフォンについては、iOSやAndroid向けに開発したアプリを、そのままWindows用アプリに“再利用”できるようになる。シェアの上ではiOSやAndroidに大きく引き離され、現時点では開発者がWindows Phone専用にアプリを投入する動機は乏しくなりつつある。これに対して、すでにある資産を活用できれば、少ない手間でもう1つのプラットフォームにもアプリを拡大できる。これは、4月に開催されたBuild Developer Conferenceで発表された施策だが、COMPUTEX TAIPEIでもMicrosoftによって「コードのリユースが簡単に行えるようになる」(OEM部門 担当副社長 ニック・パーカー)とアピールされていた。
メーカーの間にも、Windows Phoneを開発する機運が高まっている。特に、PCとスマートフォンの両方を開発するメーカーにとって、Windows 10の登場は大きな転機になるかもしれない。中国メーカーのLenovoでアジア・パシフィックの社長を務めるロードリック・ラピン氏は、「Lenovo Tech World」で行われたグループインタビューで、「Windows 10 Mobileには可能性を感じている。Windows 10はPC、タブレットとスマートフォンで共通のコード(アプリ)を使えるからだ。法人向けとしても期待が持てる」と語っている。先に挙げたAcerも、Windows 10に対して積極的といえるだろう。同社はSnapdragon 200を搭載した「Liquid M220」をWindows 10にアップグレードする意向を示しており、COMPUTEX TAIPEIではテクニカルプレビュー版をインストールした同機を展示していた。
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