Xperiaは「インテリジェンス」を持つコミュニケーションツールへ――Xperia“第3章”の幕開け:Mobile World Congress 2016(3/3 ページ)
Xperiaの「究極の集大成」こと「Xperia Z5」シリーズの発表から約5カ月。コミュケーションの道具として、スマホ・タブレットの枠を超えたXperiaの“第3章”が始まる。そのキーワードは「インテリジェンス」だ。
―― Zシリーズはもう廃止、ということか。
伊藤氏 この質問も多くいただく。我々は“第3章”として、新しい(Xperiaの)ストーリーを始めたい。後継機種はどれで、という話は社内的には考えていない。Zシリーズの商品は「Z5」が最後の商品で、「Z6」という商品は考えていない。
―― 「Xperia XA」や「Xperia X」に日本投入はないのか。
伊藤氏 今の時点で国内販売を検討しているのは「Xperia X Perfomance」だけとなる。
―― 「X」という文字の意味を教えてほしい。
伊藤氏 Xperiaの新しいストーリーを初めていく上で、Xperiaというブランドと再び向かい合っていくという強い思いがある。グローバルでの認知をより高めるために、分かりやすい「X」とした。これからはIoT(Internet of Things:モノのインターネット)の時代で、人と物、人と人、物と物とのコミュニケーションがより盛んになる。それぞれの間には、必ず「×(かける・Multiple)」というものが存在し、それを拡大したいという思いも込められている。
―― Xperia Z5は「究極の完成形」「究極の集大成」としていたが(参考記事)、それに対して、Xシリーズはどのような位置付け・定義になるのか。
伊藤氏 ソニーの技術をスマホに取り入れていくとどうなるのか、というのがXperiaの“第2章”で、Xperia Z5はその「究極の集大成」であると説明してきた。Xperia Xでは、ソニーの技術をもちろん有効活用するが、それだけではなく、世界中の優れた技術を取り入れたり、逆にXperiaから世界に発信していったりすることも含めて、新しいストーリーを作っていきたい。そういう意味では、インテリジェンスを伴って「Xperiaが“独り立ち”して歩いて行く」第一歩である。
―― (親会社の)ソニーと製品ラインアップ上でカニバリゼーション(共食い)が起こる可能性はないのか。
伊藤氏 今のところその議論は起こっていない。我々は「コミュニケーション」にフォーカスしている。その限りでは、カニバリゼーションは今日時点では存在していない。ただし、IoTの世界になると、境界線が少し見にくくなってくることはある。そうなると、ドメイン(事業領域)というものが大切になってくる。
―― そうすると、テレビにも「コミュニケーション」要素がある。将来的には「Xperia TV」もあり得るのか。
伊藤氏 今のところは考えていない。ただし、いろいろな展開が考えられるのがXperiaの“第3章”の魅力だ。「これはXperiaだね!」と言ってもらえる商品展開を考えていきたい。
―― (スマートプロダクトの)APIはオープンな形になるのか。
伊藤氏 1つ1つの商品について、ケースバイケースで考えていきたい。
―― スマートプロダクトに「Xperia」のブランドが付くと、Xperia向けの周辺機器というイメージを持たれてしまうと思うのだが、他社のスマホでも使うことは想定しているのか。
伊藤氏 コミュニケーションデバイスであってほしいということから、スマートプロダクトにも「Xperia」ブランドを冠した。「Xperia専用ですか?」と聞かれれば、Xperiaと組み合わせて使うことがベストであるという考えではあるが、必ずしも「Xperiaの中だけで」ということは考えていない。例えば、Xperia Earと他社のスマホを組み合わせて楽しんで使う、ということも可能だ。いろいろな形で使えるようにしたいと考えている。
―― One SonyとしてXperia Zシリーズを進めてきた中で、あえてここで“第3章”として新しい世界を切り開かないといけなくなったのか。
伊藤氏 まず、1つにユーザーを取り巻く環境の変化があると思っている。先ほどもIoTという言葉を出したが、スマホが生まれた時にはなかったデバイスやサービスが増えてきた。そろそろ、新しい進化を遂げるべきタイミングではないかと考え、Xシリーズへの切り替えを決めた。
もう1つ、環境の変化の中で、スマホだけではなく新しいコミュニケーションツールを一緒に提案していきたいということもある。今まではどちらかというと「Xperiaに付随するアクセサリー」だったが、単体で使っても「これはXperiaだ」「新しいコミュニケーションツールだ」と思ってもらえるものを作りたい。
―― Xperia Zシリーズは「世界初の4K対応」など、とがった部分を切り開いてきたイメージがある。それは今後、徐々に薄まっていくのか。
伊藤氏 とがった部分が薄まっていくのか、というと決してそういう選択をしたわけではない。ただ、まずは本質にこだわりたい。いろいろなユーザーの意見を聞く中で、「100人いたら1人うれしい」という機能は、Xシリーズを始めるにあたっては“違う”のかなと考えた。
―― つまり、「いい音を聞く」だとか「高精細の映像を見る」という要素の優先順位は下げたのか。
伊藤氏 例えば「いい音を聞く」という要素は、非常に多くのユーザーが必要としていることなので、Zシリーズで培ってきたものをXシリーズにも入れていく。ただし、(今まで重視していた要素については)1つ1つの見極めをしっかりしていきたい。
先々、この考えにもとづいて「とがった物が出てこない」かというと、これからの展開次第だ。現在、スマホは「いろいろな機能が入ったハード」と見られることが多いが、そこにインテリジェンスが入ってくると、今までとはちょっと違うサポートを毎日できるデバイスになるかもしれない。今までとは違う分野も含めて、新しいもの(スマホ)が出てくるかもしれない。
―― Xperia EarやXperia Eyeは外国人受けするとは思うのだが、日本では、Bluetoothヘッドセットですら抵抗感を感じる人が多かったり、カメラでもシャッター音が強制的に鳴ったりと、独特の「社会」がある。これらの製品は、日本でも受入れられるのか。あるいは、日本で発売する場合は独特のアレンジを施すのか。
伊藤氏 新しいコミュニケーションの形を作っていきたいので、「今までなかったけれども、これからは使ってもらえる」ような提案をしていきたいと考えている。我々は日本企業で、日本とヨーロッパに注力している。日本のユーザーにも、新しいコミュニケーションツールを使ってほしいという思いは強いので、「今はここはダメだけど……」ということを1つ1つクリアしていければいいと思っている。
取材とラウンドテーブルを終えて(筆者の感想)
スマートフォンに「目新しさ」がなくなり、コモディティ(日用品)化した昨今。スマホメーカーは自社のスマホに「ならでは」を盛り込もうとあの手この手を考えている。ソニーモバイルコミュニケーションズの場合、それが「日用品としてのスマホの使い勝手の強化」と「コミュニケーションツールの多様化」として現れた。
率直にいうと、Xperia Xシリーズには「とがった」部分は少ない。今までとがっている方向に振っていたリソースを使い勝手の向上に振った印象だ。ITmedia Mobile読者で、Xperiaファンの人には物足りないかもしれない(かくいう筆者も物足りなく感じている)が、スマホの日常での利用シーンを考えると、とがった部分は使われないことが多い。スマホに関しては、この路線は“正解”かもしれない。
一方、新たに登場するXperiaブランドのスマートデバイスには「とがった」部分を多く感じる。ただし、「使われないとげ」ではなく「便利に使ってもらうためのとげ」であることが従来路線の違いだ。Xperia Ear以外はまだコンセプト段階で機能の詳細も決まっていない状態だが、とにかくコミュニケーションをより円滑にするために技術を使おう、という方向性に強い共感を覚えた。
ともあれ、Xperia XシリーズとXperia Earから、Xperiaの“第3章”が始まる。スマホ・タブレットの枠から飛び出したXperiaがどのような進歩を遂げるのか、注目したい。
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