もはや「格安スマホ」にあらず――ハイエンドのSIMフリースマホが増えている理由:石野純也のMobile Eye(9月26日~10月7日)(3/3 ページ)
従来売れ筋だったミッドレンジモデルの枠を超えたSIMロックフリースマートフォンが、秋冬モデルとして続々と登場している。特にHuawei、ASUS、FREETELがハイエンド端末を投入している。MVNOのユーザー層が徐々に変化していることと関係がありそうだ。
メーカーの世界観を打ち出しやすく、差別化にもつながる
ハイエンドモデルの比率が上がることは、SIMロックフリースマートフォンを開発、販売するメーカーにとっても、メリットがある。利幅を考えると高価なモデルの方が有利になる上に、コストを削りつめなくてもよくなるため、デザインや機能、スペックなどで、他社と差別化できる要素も増えてくる。メーカーの世界観を打ち出しやすいのも、ハイエンド端末だ。
分かりやすいところでいえば、冒頭で挙げたMotorolaのMoto Z、Moto Z Playだと、背面に「Moto Mods」と呼ばれるアタッチメントを取りつけることができる。これによって、カメラやスピーカー、プロジェクターなど、さまざまな機能を拡張できるというのが、両機種の特徴だ。Moto Modsは、ハッセルブラッドやJBLといった、その道のメジャーブランドとコラボレーションした製品がそろえられており、本格的な撮影や音楽を楽しめる。
Huaweiのhonor 8やP9は、背面にデュアルカメラを搭載。一眼レフカメラで撮影したときのように、背景を大きくボカしたり、深度を記録しておき、あとからピントを合わせる位置を調整したりといった操作が可能になる。honor 8は背面にガラス素材を使い、15層のコーティングを施したデザインも特徴。対するP9は、金属素材を使って、フラグシップモデルならではの重厚感を打ち出すなど、手に取ったときに分かる質感でも違いを打ち出せている。
差別化の要素を、スペックに振るという選択肢もある。FREETELのKIWAMI 2は、MediaTek製の10コアCPUを搭載。メインメモリも4GBを搭載して、ディスプレイにはコントラストの高さで定評のある有機ELを採用した。KIWAMI 2と同時に発表された新シリーズの「RAIJIN」は、バッテリー容量を5000mAhまで増やし、長時間駆動を実現する。これに対し、ASUSのZenFone 3 Deluxeは、最上位モデルでQualcommの「Snapdragon 821」を採用。メモリも6GBと、大手キャリアのスマートフォンを上回るスペックを実現している。
ここまで取り上げてきた、Huawei、ASUS、FREETEL、Motorola以外では、10月13日にZTEが発表会を開催する予定。音楽を示唆するティーザー画像も公開しており、9月にドイツ・ベルリンで開催されたIFAで初お披露目となった「AXON 7 mini」が、日本に投入される可能性が高そうだ。
もちろん、高機能モデルはそのぶん価格も高くなり、スマートフォンに必要最低限のスペックを求めるユーザーにとっては負担感も大きい。ボリュームゾーンという意味では、SIMロックフリースマートフォンの主戦場がミッドレンジであることに変わりはないだろう。ただ、ユーザー層の裾野が広がるにつれ、徐々にではあるがハイエンド端末の入り込む余地ができ始めているのも確かだ。選ぶ楽しみが増えるという意味で、ユーザーにとっては歓迎すべき状況になりつつあるのかもしれない。
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