有識者会議で展開される「ガイドラインの穴」を埋める議論――構成員の提案で、ガイドラインの穴が余計に広がる事態に:石川温のスマホ業界新聞
2014年末から総務省が行ってきた携帯電話販売に関する政策をフォローアップする会合が、とりまとめに入った。会合の中で、2016年4月から施行された端末販売に関するガイドラインの「穴」を埋める議論があったが、むしろ別の「穴」を空けてしまいかねない事態になりつつある。
総務省の有識者会議「モバイルサービスの提供条件・端末に関するフォローアップ会合」が11月7日、とりまとめに入った。一連の会合をすべて傍聴取材しているが、議論の内容には呆れるばかりだ。唯一、まともな意見と言えば「端末を一括購入したときにはすぐにSIMロック解除をさせてもいいのではないか」という点ぐらいだ。
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この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2016年11月12日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額540円・税込)の申し込みはこちらから。
野村総合研究所の北俊一プリンシパルが「ガイドラインの穴は徹底的にふさぐべし」と語り、博多駅前並みに穴を一生懸命埋めようとしているが、そもそもガイドラインは穴しか存在していない。しかも、その埋めようとしている穴も、簡単に穴が空いてしまうような策でしかなく、結果、これからも堂々巡りを繰り返すだけのような気がしている。
例えば、現在は期間限定でキャンペーンが認められており、それが週末限定キャンペーンにつながっているが、会合では「週末というのも規制すべき。しかし、週末とはいつからいつまでを定めるべきか」という議論に終始しているのだ。「金曜は含めるべきか」「年末商戦のキャンペーンはどうすべきか」といったように、議論の内容が些末な定義にとらわれてしまっているのだ。
仮に週末の定義が定まったところで、販売代理店は新たなキャンペーンを仕掛けてくるだろう。総務省がガイドラインを強化したところで、それ自体が穴だらけであり、販売代理店は簡単に穴を見つけてくるはずだ。
また、今回の議論では「ケータイからスマホへの乗り換えに端末割引を適用しても良いが、ケータイを使っているという証明を提出させるべき」という意見もあった。
単にケータイ端末を持参するだけではダメなようで、場合によっては請求書や購入時の領収書などを提示させる可能性もありそうだ。ただ、これも抜け穴になる可能性が高く、例えば、店頭で一度、スマホからケータイに契約変更し、すぐに欲しいスマホに機種変更すれば、「ケータイからスマホ」への切り替え扱いとなり、大幅割引をゲットできることになるだろう。
有識者会議の議論は現場が全く見えておらず、無駄なルールばかりを増やしているようにしか思えない。
また、議論のなかでは、端末の割引後の価格について、旧機種の下取り額を下回ってはいけないという意見もあった。つまり、「旧機種の下取り価格よりも、新機種が割引された後の値段が安くなるのはおかしい」という指摘だ。
有識者会議としては「合理的な端末価格にしていく」と息巻いているが、果たして、総務省がそこまで口出しすることが妥当なのか理解に苦しむ。
フォローアップ会合がやるべきことは、ほかにあるのではないか。例えば、昨年のタスクフォースで「ライトユーザー向けプラン」を作るように、各キャリアに求め、実際に「1GB」というプランが登場してきた。しかし、1GBのプランを選ぶと、毎月割などの割引が適用されないという謎のルールが存在する。
キャリアとして、端末割引を展開していくのであれば、1GBで月々の支払い額が少ないからといって、端末割引を適用しないというのはおかしな話だ。
総務省としてライトユーザー向けプランの提供を各キャリアに迫ったのなら、それらがちゃんと多くのユーザーが選択できるように、キャリアに毎月割の適用を要請すべきだろう。
それこそが「フォローアップ会合」としてやるべきことではないだろうか。自分たちが作らせたルールなのだから、それが活性化されるまで、責任を持つのが総務省の役目であるはずだ。
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