arrows Alphaの「大丈夫。強いから。」の真実 FCNTの“実験室”で見た秘密と足りないピース(1/2 ページ)
FCNTが8月28日に発売した「arrows Alpha」では、あえてタレントを起用せず、「大丈夫。強いから。」というメッセージを打ち出している。arrows Alphaの強さを裏付けるべく、FCNTがメディア向けに独自の実験室を公開。MIL規格や防水とは別に、メーカー独自が行っている耐久試験を見てきた。
「大丈夫。強いから。」
これは、FCNTが8月28日に発売したスマートフォン「arrows Alpha」に採用されたキャッチコピーだ。
arrows Alphaは、米国国防総省の調達基準に基づく23項目の耐久性試験をクリアしたMIL規格(MIL-STD-810H)に準拠しており、水中での利用や80℃のお湯の噴射にも耐えるIPX9の防水にも対応している。上記のようなスペックは競合他社のスマホも対応しているが、arrows AlphaはFCNT独自の耐久試験もクリアすることで差別化を図っている。
実は、こうした耐久性はarrows Alphaよりも前のモデルでも実現していた。しかし、「arrows=強いスマホ」の認知はまだ進んでいないのが実情だ。2024年に「arrows We2」と「arrows We2 Plus」を発売した際は、オダギリジョーさんを起用したCM「arrows 漂流記」を展開し、タフな環境でも壊れにくく、バッテリーが長持ちする点を訴求していた。
1年後の2025年、再び同様のCMを展開するのかと思いきや、今回はタレントを起用せず、冒頭の「大丈夫。強いから。」というメッセージを全面に打ち出す手法にシフトした。タレントを起用すると、タレントのイメージが強くなってしまうため、arrowsの本質を知ってもらうことに特化したわけだ(参考記事)。
では、arrowsの「強さ」とは具体的に何を示すのか。もちろん、製品ページを見ると、その概要は知ることができる。だが、その裏ではスペックシートからは分からない地道な作業が行われている。FCNTが2025年8月下旬に報道陣に公開した“実験室”から、強さの秘密を見ていきたい。
レノボ傘下になった後も、日本市場で欠かせない要素を重点チェック
神奈川県大和市中央林間の三機大和ビルに本社を構えるFCNTは、各種試験を行う実験室を同ビルの地下に設けている。三機大和ビルには2019年に移転したが、独自の試験自体は、2000年よりも以前のフィーチャーフォン時代から実施しているという。富士通時代から長年のノウハウを蓄積してきた、まさに「秘伝のタレ」といえる取り組みだ。
2023年にレノボ傘下になって以降、レノボが持つグローバルの工場でarrowsやらくらくシリーズなどの携帯電話を製造し、品質を確認するための試験も一部は海外で行っている。こうした製造プロセスやテストを経て試作機が完成した後に、日本のFCNT本社で独自試験を行う――という流れだ。
独自試験の方針はレノボ傘下になった後も変わっていない。「グローバルでは携帯電話としての基本的な部分を評価しているが、日本の技術者が、日本のお客さまに対してきちんと見たい部分に関しては、自分たちの目でテストしている」(FCNT担当者)という形ですみ分けを図っている。
26方向からの落下試験も 日常のあらゆるシーンを想定して「割れないガラス」に
品質試験で特に重視しているのがディスプレイの耐久性だ。スマートフォンの顔でもあるディスプレイの表面はガラスで覆われており、このガラスが割れるとスマホとしての使用は厳しくなる。そこでFCNTでは、9つの耐久試験によってガラスの耐久性を確固たるものにしている。
その1つが、かねて訴求している、1,5メートルからコンクリートに落下させる試験だ。1.5メートルは、実際の利用シーンに即して「手で持ったときの高さ」を想定している。コンクリートに落下するので本体に軽微な傷が付くことはあるが、落下してもディスプレイが割れず、スマホとして問題なく使えるかを確認する。
試験では、実験器具のホルダーにスマートフォンを固定し、ボタンを押すとホルダーごと落下して、スマホはそのままコンクリート面にたたきつけられる。これを、1台につき26方向から行う。26方向は、表裏と4側面の「6面」、4側面の辺を含む「12稜(りょう)」、側面の「8角」を合わせた数。つまり、ディスプレイを下にした状態で落とす、角がモロにコンクリートに当たって落ちる、側面から落とすなど、あらゆる方向から落としても画面が割れないかどうかを検証する。
その他の試験も見ていこう。円すい落下試験では、ディスプレイ面に金属の塊を40センチの高さから落としている。
3点曲げ試験では、スマートフォンの左右を支えた状態で中央に20kgぐらいの加重を加える。これはポケットにスマートフォンを入れて座ることを想定した試験となる。
アスファルト面落下試験では、1.3メートルの高さから、アスファルトに角度をつけてスマートフォンを落下させる。
Vビット(鋭鉄)落下試験では、ディスプレイの端に、鉄の先端がとがったものを落下させ、画面に異常がないか、ガラスが割れないかを試す。ディスプレイのガラスは端の部分が弱いので、その硬度が確保できているかを見るという。
角曲げ試験では、スマートフォンのディスプレイ端の部分に負担をかけて耐久性を試す。机の上にスマホを置いてうっかり負荷をかけてしまったシーンを想定している。
繰り返し落下試験では、10センチの高さから複数の方向に、合計1万2000回落下させて問題ないかを確認する。例えば、机の上に乱暴にスマートフォンを置いても問題ないかを見る。
ねじり試験では、スマートフォンの上部を拘束してねじりの負荷を加える。
点圧迫試験では、金属の塊をディスプレイに押し込んで負荷をかける
これらの試験はarrowsに限らず、らくらくスマートフォンやらくらくホンを含む、FCNTの携帯電話全般で実施しているという。
9つの試験からは、不意の落下から乱暴な扱いまで、日常のあらゆるシーンでスマホが破損、故障するシチュエーションを想定していることが分かる。これらの厳しい試験をクリアしたarrows Alphaは、確かに強いスマホであることが理解できた。落下に備えてケースを装着する人も多いだろうが、arrows Alphaなら裸のままで使っても破損するリスクは低いといえる。
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