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KDDIの5G SAエリア年度末9割超に 「ミリ波で具体的に何ができるのか」も提示し普及へ

KDDIの松田浩路社長は11月6日の決算説明会で、今後のネットワーク戦略の柱として、5G SA(スタンドアロン)のエリア拡大と、ミリ波の本格的な普及に注力する方針を明確にした。5G SAは2026年3月期第4四半期(2026年1~3月)までにエリア90%超を目指す。ミリ波の具体的なユースケースを創出し、普及を加速させたい考えだ。


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 KDDIの松田浩路社長は11月6日の決算説明会で、今後のネットワーク戦略の柱として、5G SA(スタンドアロン)のエリア拡大と、ミリ波の本格的な普及に注力する方針を明確にした。5G SAは2026年3月期第4四半期(2026年1~3月)までにエリア90%超を目指す。ミリ波の具体的なユースケースを創出し、普及を加速させたい考えだ。

5G SA:エンタープライズとコンシューマー両面で活用

 KDDIは5G SAの「フロントランナー」であると自負しており、外部調査機関(オープンシグナル)からもナンバーワンの評価を得ている点を強調する。業界最多のSub6とミリ波の基地局で快適なエリアを構築するとともに、4Gの転用周波数を含めた5Gへの移設化を進め、5Gの特性を最大限に発揮できるエリアを拡大していく。計画では、2026年3月期の第4四半期(2026年1~3月)までに、5G SAのエリアを人口カバー率90%超まで拡大する。

 5G SAの活用については、エンタープライズ向けとコンシューマー向けの両面で進める。エンタープライズ向けでは、すでに「上りの帯域をこれだけは確保してほしい」といった医療ニーズなどが顕在化しており、SAを活用して特定のエリアで要求に応じたネットワークを提供していく。

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 コンシューマー向けには、現在提供している通信優先制御サービス「5Gファーストレーン」の前哨戦と位置付ける。SAが本格化することで、このサービスをより安定した「保証型」の分かりやすい価値として提供できると見込む。ただし、スマートフォンでの本格的なSAサービス提供にはOS側との調整も必要なため、それまでにインフラ整備を完了させる考えだ。


KDDIの松田浩路社長

ミリ波:「負のループ」を解消へ、具体的なユースケースで可能性を提示

 ミリ波については、松田氏が「個人の思いも強くある」と前置きした上で、普及に向けた強い意志を示した。

 現状の課題は、「ユースケースがないから、なかなか(端末に)搭載ができない」という負のループにあると分析。国内ではiPhoneも非対応であるなど、対応製品が非常に少ない。この負のループを解消するため、KDDIは具体的なユースケースを提示し、ミリ波の可能性を広く訴求していく。先日、高輪の実験場(高輪ゲートウェイ:KDDI本社所在地)で行われた実証実験では、パートナー企業との連携によるデモンストレーションを実施。

 松田氏は、ミリ波の具体的なユースケースを2例紹介した。1つはNetflixとJR東日本の協力のもと、動画1話分が約1秒でダウンロードできることを実証したこと。ミリ波が持つ超高速大容量通信の特長を生かしたユースケースだ。もう1つはソニー製カメラの連写データ高速アップロードだ。ソニーのカメラで撮影した80枚の連写画像を、わずか80秒でアップロードできることを実証した。これは、プロフェッショナルな現場やクリエイティブな活動において、大容量データを瞬時に共有・保存できるミリ波のメリットを示すものだ。


松田氏はミリ波の実力を示す具体例を紹介した。NetflixとJR東日本の協力で、動画1話分を約1秒でダウンロードできることを実証し、超高速大容量通信の特長を示した。さらにソニー製カメラで撮影した80枚の連写画像を80秒でアップロードできることも実証し、プロの現場での即時共有や保存に役立つ可能性を示した

 「日本でしっかりユースケースを作って、他の国にも持っていきたいぐらいの思い」と語った松田氏は、ミリ波のリピーター開発も進めていることを明かした。さらに、端末メーカーとの交渉も自らが「陣頭指揮を取りながらやっていきたい」とし、トラフィックが増加する中、6Gが本格化するまでの「過渡期」に対応する重要な技術としてミリ波の普及を強力に推進する姿勢を明確にした。

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