F-12Cは“100年ケータイ”――富士通×グローブ・トロッターが目指す普遍性と愛着:紙ケータイ誕生の舞台裏(2/2 ページ)
Fブランド初のAndroid端末「F-12C」は、英国の旅行カバンブランド「GLOBE-TROTTER」とコラボし、富士通ならではの使いやすい機能やUIも盛り込んだ意欲作。F-12Cはどんな経緯で開発されたのか。富士通とグローブ・トロッターが説明した。
ヴァルカン・ファイバー採用の苦労――限定モデル
グローブ・トロッター 日本支社長 田窪寿保氏。「GLOBE-TROTTERのカバンはファッションアイテムとして語られることが多いが、出身はもっとハード。空軍などイギリスを代表する冒険家たちに愛されてきた。旅行カバンはかつては重いものだったが、GLOBE-TROTTERは軽さと頑丈さを持ち込んだ」
今回、グローブ・トロッターと富士通はどのような経緯でコラボレーションに至ったのだろうか。グローブ・トロッター 日本支社長の田窪寿保氏は「ブランドコラボした携帯電話というと、名前を付けただけというイメージがあるが、今回のプロジェクトは2009年の東京デザイナーズウィークから始まっており、1000人ものスタッフが関わっている」と話す。
F-12Cで目指したデザインは、100年先も色あせない「100年ケータイ」。このコンセプトはGLOBE-TROTTERのアイテムとも共通しており、「持ったときが終わりではなく、そこから100年かけて、子どもや孫の世代まで語り継いでほしい」という思いが込められている。「旅行カバンはユーザーにとって思い出を詰める箱だが、スマートフォンも性能やスペックで物を語るのではなく、ペットやパートナーのような存在。100年ケータイと言っても実際に100年使うことはないだろうが、普遍的なデザインは100年持つものだと思う」(田窪氏)
限定モデルのClassic Orangeは、16層の紙(ヴァルカン・ファイバー)を樹脂に圧着する製法で作られており、カバンと同様に純粋な紙が使われている。「カバンのデザインを携帯電話に落とし込むのは非常に難しかった」と田窪氏は苦労を話す。ヴァルカン・ファイバーが使われているリアカバーにの側面にはカーブがかけられているが、ヴァルカン・ファイバーは硬い素材なので、200度の熱を加えてすべて手作業で曲げられているという。「曲げたヴァルカン・ファイバーの“暴れ”を防ぐためにリベットを付けて固定している。このリベットはギミックではなく必要なもの」と田窪氏は話す。
高田氏は「ドコモに収める際、厚さを増やさないようにコンパクトなボディを実現し、傷を付けないようにするなど、紙とプラスチックの素材を組み合わせるのが大変だった」とメーカーならではの苦労を話した。
なお、このヴァルカン・ファイバーカバー自体は防水性能は有しておらず、水回りで使う際はもう1枚の通常カバーを装着することが望ましい。ヴァルカン・ファイバーカバーは旅行カバンと同じ素材ということで、ある程度の防水性は備えていると思われるが、変形・変色の可能性があるので注意したい。同カバーの厚さは約0.7ミリで、通常カバーよりも厚い。また、限定モデルの価格はBlackやRose Goldよりも高くなる見通し。
今回の発表のために、英国本社からクリエイティブ・ディレクター ギャリー・ボットも駆け付け、富士通との連携、そしてGLOBE-TROTTERの未来について話した。
「ウィンストン・チャーチル氏は財務大臣時代にGLOBE-TROTTERのブリーフケースを、エリザベス女王もハネムーンでスーツケースを愛用した。GLOBE-TROTTERの製品は現代においてもほとんど変わっておらず、ヴァルカン・ファイバーを使い、英国で昔ながらのビクトリア式の機械で作られている。GLOBE-TROTTER最大の強みは普遍性。過去から変わらず、時代に合った製品を送り出せること。一方で、世界は変わり続けており、グローブ・トロッターにとっても新たな道を切り開くとき。私たちの戦略は、同じ精神を持つ他業界のプロとコラボレートすること。その分野はファッション、アート、テクノロジーなどさまざま。携帯技術のマーケットリーダーである富士通と共同で、世界初の紙のケータイを制作した理由もここにある」
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