集大成であり新しいスタート地点 “らくらく”13年目の超進化(後編):開発陣に聞く「らくらくスマートフォン F-12D」(2/2 ページ)
ドコモの「らくらくスマートフォン F-12D」は、13年続く「らくらくホン」シリーズで培った使いやすさと、スマートフォンならではの大画面や便利さを兼ね備えたシニア向けAndroid端末。新機軸のシニア向けスマホは、どのように作られたのだろうか。
Googleアカウントを使わないからこそ可能な「らくらくパケ・ホーダイ」
―― F-12D用には専用のパケット定額サービス「らくらくパケ・ホーダイ」が用意されています。確かにこういった料金プランは必要だと感じます。
細井氏 F-12DはGoogleアカウントを取れないので、当然、Google Playが使えません。アプリをダウンロードできないことによって、データ通信量が比較的少なく済むだろうと考え、シニアの方により安心してご利用いただくために月額2980円という料金を設定しました。これからスマートフォンを使ってみたいと思っていて、ウェブ閲覧や乗り換え案内などを比較的使う方であれば、2980円払っていただける価値は十分あって、スマートフォンをより手軽に使っていただけるのではないかと思っています。通常であれば、月額5460円のパケ・ホーダイ フラットが必要になりますから。
ただ、月間で500Mバイトという上限値を設けていますので、それを超えて通信する場合は、送受信のスピードを最大128kbpsに制限させていただきます。でも、ほとんどのユーザーはそこまで行かないと思います。
またらくらくパケ・ホーダイはパケット定額サービスですから、このほかに基本料金プランとspモードの315円、ユニバーサル料金、追加したオプション料金と通話料が必要になります。
―― ちなみに500Mバイトという上限は、どういった基準で導き出されたのですか。
細井氏 本当に手探りといいますか、今使われているデータ量を見ながらです。500Mバイトくらいであれば、十分安心してご利用いただけて、低くもなく高くもないというレベルかなと判断しました。
―― 通常のAndroid端末ですとインストールしたアプリが勝手に通信したり制御信号をやり取りしたりします。F-12DはそういったAndroid特有の通信がかなり抑制されている、ということはありますか?
今田氏 そうですね。Googleアカウントを取らないので、バックグラウンド通信を行うアプリがほとんど存在しません。通常ですとGmailやダウンロードしたアプリのアップデート通知などが常にやり取りされているので、それによる通信料が発生します。F-12Dではまったくゼロとはいえませんが、裏で走っている通信がほとんどないため、料金を抑えることができました。
―― らくらくパケ・ホーダイを2段階定額制にしようという話はなかったのですか。
細井氏 議論はしましたが、やはり分かりづらいので、シンプルでフラットな完全定額にしました。Xi向けのプランでは上限が来たら追加料金を支払うと速度制限を解除できますが、それもシニアの方には認識しにくいだろうと。
もし、月間データ量と速度制限が気に入らなければ、5460円のパケ・ホーダイ フラットに変えていただくことで対応できるだろうと判断しました。
―― らくらくパケ・ホーダイ以外のパケット定額プランを選んでもいいわけですね。
細井氏 もちろんです。F-12Dなららくらくパケ・ホーダイも選べます、という考え方です。同じ月内でらくらくパケ・ホーダイからパケ・ホーダイ フラットに変えた場合は、パケ・ホーダイ フラットの料金しかかからないようにしています。二重にかかることはありません。
今田氏 最初はらくらくパケ・ホーダイに入っていたただいて、やっぱり超えるようであれば移っていただければと思います。らくらくホンからスマートフォンに変わっているリテラシーの高いユーザーも当然いらっしゃるので、そういった方々がスマートフォンに変わってどれくらいデータ通信を使っているのか、シミュレーションで見させていただいています。それを見た上でも、500Mバイトあれば、十分楽しんでいただけるとだろうと思っています。
―― 今後もらくらくスマートフォンとして新しい機種が出ると思うのですが、それでもこの料金プランを提供される予定ですか。
細井氏 そのときの端末のスペックによって変わるとは思うのですが、当然、これだけで終わりではありません。あくまでらくらくスマートフォンというシリーズ向けの定額制なので、当然、継続して検討していきます。
―― らくらくパケ・ホーダイの対象端末が、フィーチャーフォンのらくらくホンやほかの端末に広がる可能性はありますでしょうか。特にスマートフォン向けに中間的な料金のサービスがあるとうれしいのですが。
細井氏 らくらくパケ・ホーダイは機能が制限されていることを条件に提供していますので、これをフィーチャーフォンなどにそのまま展開することは、今のところ検討していません。今後のパケット定額サービスとしては、10月1日から「Xiパケ・ホーダイ ライト」を提供します。弊社としてもXiをどんどんご利用いただきたいので、Xiのメニューを充実させていますが、当然ながら、今後の動向を見ながら、どうしていくか検討していきます。
―― ちなみに、アプリをダウンロードできないことで、バッテリーの持ちがよくなるということはありますか。
今田氏 それが理由でバッテリーが持つかといわれると、そうしたことはないと思います。ただF-12Dは、今夏モデルの中でも比較的大きい1800mAhのバッテリ−を積んでいますので、十分に持つと思います。
集大成でありつつ新しいスタート地点
―― 従来のらくらくホンユーザーがF-12Dに移行した場合、Webブラウザの利用が増えるなど、利用シーンやスタイルが変わるのでしょうか。
今田氏 F-12Dにすることで、色々なことを試していただきたいという思いはすごくあります。例えば、今までよりももっとたくさん写真を撮って仲間内で共有できるようになったりとか、ブラウザで調べものをしたりとか。先程、乗り換え案内のニーズが高いといいましたが、なぜかといえば外出したときに移動ルートを調べたいからですし、株価も家ではみなさんPCで見られるんですが、外出しているときにも見たいからで、自分の行動範囲の中で、これを使って何かをしたいというニーズと結びつけておっしゃっています。らくらくスマートフォンを持つことによって、行動範囲が広がったり、今までにやっていなかったことを試したりと、楽しさを広げていただければ、それで十分じゃないかと思います。
また、らくらくiメニューには「らくらくニッポン探訪」という旅や食を中心とした情報サイトがありますが、dメニューの中でも「らくらくニッポン探訪コミュニティ」というSNSに近いサービスを提供します。旅、食、温泉といったテーマを用意し、ここに写真を付けて投稿できるなどコミュニティサイトとして情報を共有できるようになっています。メーカーである富士通さんに監視体制まで含めてしっかり運営してもらってますので、安心して使っていただけます。
―― らくらくスマートフォンがきっかけで、SNSに熱中してしまうシニアのユーザーが増えるかもしれませんね。
今田氏 リテラシーの高いシニアの方は自分からどんどんネットに情報発信されていて、フォロワーの多いブロガーさんもいらっしゃいます。そういったネット利用のきっかけになるとありがたいとおもいます。
―― 将来的な話になりますが、Xi対応のらくらくスマートフォンが出る可能性はありますよね。
今田氏 大容量のデータ通信で何をするのか、ということがあるので、ニーズを見ながらだとは思います。僕らも今回、らくらくホンシリーズで初めてスマートフォンをやってみるので、非常に注目されているのは大変ありがたいのですが、発売されてどうなるかは、実はふたを開けてみないと分かりません。少しビクビクしているんです(笑)
たぶんいろいろな声が上がってくると思います。今までのらくらくホンにもユーザーからのさまざまな声があって、それを少しずつ取り入れて今がある。そういった意味で、今までのらくらくホンの資産を引き継いた発展系ではあるものの、新しいスタート地点でもあります。継続していくことで、よりいいものに育てていかなくてはならないと思っています。
―― らくらくスマートフォンは集大成でありつつ、新しいスタート地点であると。
今田氏 そうです。らくらくホンがスマートフォンになるとどうなるのか、ということで新しいスタート地点に立ったと思います。
―― 今、スマートフォンを使っている人がシニアになっていけば、スマートフォンを使い慣れた人向けのらくらくスマートフォンが誕生する可能性もありますね。
今田氏 UIだけ分かりやすくしていれば大丈夫、という方々も出てくると思います。そこは時代の流れや、そのときのユーザーのニーズに合わせて作っていかなくてはならないと思っています。
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