あの感動、再び――Appleは新たな時代に踏み出した:神尾寿のMobile+Views(4/4 ページ)
6月10日(現地時間)に開催された「WWDC2013」では、OS XとiOSの新バージョンが発表されたほか、「MacBook Air」と「Mac Pro」のモデルチェンジが行われた。WWDC 2013で示された未来とは――。キーノートから読み解いていきたい。
「iOS in the Car」でクルマ連携も進む
iOS 7でもうひとつ、筆者が注目したのがクルマ連携の部分である。ここでは「iOS in the Car」という機能が新たに実装されて、各自動車メーカーの車載情報端末やディスプレイオーディオとiOS 7が連携するようになる。
このiOS in the Carによって、クルマ側からハンズフリー通話やiPhone内の音楽コンテンツが利用できるようになるほか、Siriを用いて簡易的なiMessageのやりとりが可能になる。さらにiOSの「ターン・バイ・ターン・ナビ」もクルマ側から利用できるようになる模様だ。
スマートフォンとクルマ連携の市場環境について俯瞰すると、北米では「KT(Kids and Transportation Safety Act)法の完全施行」という重要なキーワードがある。KT法では、駐車場などでクルマが後退する際に子どもを轢いてしまう事故の防止のため、“2014年までに、すべての新型車が1台以上の(後退時にクルマの後方確認をするための)バックモニターカメラを搭載しなければならない”と規定されている。
そして、このKT法によって普及すると見られているのが、ディスプレイオーディオである。これは車載オーディオにタッチパネルディスプレイとバックモニターカメラ機能を搭載したもの。カーナビ機能は持っておらず、その代わりにスマートフォンとの連携機能が用意されている。カーナビ機能をスマートフォンに任せることで低価格化を実現し、KT法が定める「すべての新型車への標準装備」を実現しようというものだ。
アメリカ市場における自動車の年間販売台数は約1200万台。ここでディスプレイオーディオが広がっていけば、スマートフォン側にとってもクルマ連携は重要な機能になる。iOS 7のiOS in the Carは、KT法の完全施行と同じ2014年の投入が予定されており、この流れに先手を打つものと言えるだろう。今回の発表では、メルセデスベンツ、フェラーリ、ジャガーのほか、日本の本田技研工業や日産自動車もiOS in the Car対応に名前が挙がっているが、今後さらに対応する自動車メーカーやディスプレイオーディオメーカーが増える可能性は高そうだ。
夏スマホは手が出しにくい!? 今年は「実りの秋」に
WWDCは開発者を対象にしたカンファレンスということもあり、ハードウェアではなく新OSの発表に重点が置かれる。一部で期待されていた新型iPhoneやiPadの発表はなかったわけだが、OS X MavericksとiOS 7の発表はそれを補って余りあるほど、魅力的かつ興味深いものだった。
とりわけ注目なのが、iOS 7である。
iOS 7は今回実機のハンズオンがなく、プレゼンテーションとデモンストレーションが見られただけであったが、それでも“ライブで動くiOS 7”のインパクトはすさまじいものがあった。
iOS 7の登場は今秋。ここで新型iPhoneが発表・発売される可能性は極めて高い。今夏にAndroidスマートフォンの購入・買い換えを考えているのなら、秋まで待った方が賢明かもしれない。iOS 7とそれが搭載された新型iPhoneは、再び「他の数年先を行く」可能性があるのだ。自らの目で見てその手で触ってから判断しても、遅くないだろう。
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