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インタビュー

「3インチ台も検討した」が――Xperia Z1 fが“4.3インチ”である理由開発陣に聞く「Xperia Z1 f SO-02F」(前編)(1/2 ページ)

Xperia Z1の“小型版“として注目を集めている「Xperia Z1 f SO-02F」。どのような過程で4.3インチというサイズに落ち着いたのか。デザインやカラーバリエーションの狙いはどこにあるのか。ソニーモバイルの開発陣に聞いた。

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 ソニーモバイルコミュニケーションズ製のスマートフォン「Xperia Z1 f SO-02F」(レビューまとめはこちらから)は、幅約65ミリのボディに4.3インチのHD(720×1280ピクセル)ディスプレイを搭載したスマートフォン。5インチの「Xperia Z1」よりも本体サイズを抑えながら、高性能な「Gレンズ」や「トリルミナスディスプレイ for mobile」「X-Reality for mobile」など、Z1と同等の機能を詰め込んだ。日本では一足先にNTTドコモから2013年12月に発売され、海外では1月のInternational CESで「Xperia Z1 Compact」という製品名で発表されて話題を集めた。

photophoto ソニーモバイル製の「Xperia Z1 f SO-02F」。ボディカラーは左からピンク、ホワイト、ブラック、ライム

 Xperia Z1 fはどのような狙いで開発されたのか? 「f」に込められた意味とは? ソニーモバイルの開発チームに話を聞いた。

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左から商品企画担当の内田氏、機構設計担当の藤田氏、カラー&マテリアル担当デザイナーのリンダ氏、ソフトウェア担当の難波氏

3インチ台も検討したが、「4.3インチ」がベストと判断

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内田氏

 ソニーモバイルは、これまでも約3.3インチの「Xperia ray」や約3.7インチの「Xperia SX」といったコンパクトなXperiaを開発してきたが、商品企画担当の内田氏は「(rayやSXには)何かしらの妥協点がありました」と振り返る。例えばXperia rayはグローバル版とほぼ同じ仕様でおサイフケータイや防水には対応しておらず、Xperia SXは防水に対応していない。Xperia Z1 fは「妥協点をできるだけ排して、フラッグシップモデルと同じコンセプトで作りました」と内田氏が話すように、Xperia Z1のデザインと機能を小さなボディに凝縮させた。ただしフルセグ、NOTTV、赤外線通信はZ1 fには搭載されていない。

 Xperia Z1 fの「f」は「fusion(融合)」を意味するもので、「高機能と操作性を高次元で融合させる」という思いが込められている。手にフィット(fit)するという意味もある。

 Xperia Z1より一回り小さいモデルの開発を決めたのは、「サイズ感を重視する人が多い」(内田氏)というユーザー調査の結果に基づいている。調査は国内外で実施したが、特に日本では小型モデルを求める声が多かったそうだ。

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「これでもまだ大きい」と言う人もいるだろうが、「大きい」「小さい」のバランスを取って、4.3インチに行き着いた

 「日本では、フィーチャーフォンユーザーの方も多数いらっしゃいます。5インチ前後のスマートフォンも増えてきていますが、自分の持っている携帯電話よりも(1インチ以上などの)大きなものは持てないという人もいらっしゃいます。また、スマートフォンをお使いになって、『やっぱり手に余る人よね』という方もいらっしゃいます。そういった方に応えるには、これくらい(4.3インチ)のサイズ感が必要になってきます」(内田氏)

 一方で、ソニーモバイルはXperia rayやSXのような3インチ台のニーズがあることも理解しており、3インチ台も検討した。「3インチ台のモデルも好評でしたが、『もう少し大きい方がいい』という声が(ユーザー調査で)あったのも事実です」と内田氏。4インチ台の中でさまざまなサイズのモックアップを作り、大小のバランスが最もちょうどよかったのが4.3インチだったという。LTEが普及し、大画面で写真や動画を見たり、ブラウジングをしたりする人が増えたことも、判断材料になったのだろう。「今のユースケースを考えると、ある程度の大きさがないと使い勝手が悪いだろうと考えました」(内田氏)

 他社は「4.5インチフルHD」のディスプレイを搭載するスマートフォンも投入しているが、「フィット感や持って違和感のないサイズは4.3インチがベストだと思いました」と内田氏は話す。解像度をフルHDにすべきかも検討したが、「このサイズでフルHDかHDかは、ユーザー体験にそれほど大きな影響は及ぼさない」(内田氏)と判断し、ディスプレイの消費電力を抑えることも考慮してHDとした。

 日本だけでなく、海外でも小型モデルに対するニーズは高く、特に欧州でその傾向が強いという。「ファブレットは(中国など)アジアでは受け入れられていますが、欧州ではまだこれからです」と内田氏は話す。ユーザー調査では、欧州の中でも、フランスやドイツに比べて、イギリスの方が小さいモデルが好まれたそうだ。

「ライム」を採用して「パープル」を見送った理由

 カラーバリエーションは、ブラックとホワイトという基本は押さえつつ、これまでのXperia Zシリーズにはなかったライムとピンクを加えた。特にライムはXperia自体でも珍しい色で、非常にインパクトがある。Xperia Z1 fのカラーはどのように決まったのか。

photophoto 「ライム」と「ピンク」
photophoto 「ブラック」と「ホワイト」

 カラー&マテリアル担当デザイナーのリンダ氏によると、Xperia Z1 fはXperia Z1と違い、全体としてどういうカラーバリエーションを提供できるかを考えたという。Z1とZ1 fは併売されているので、店頭で一緒に並んだときに、「変な組み合わせにならない」ことも考慮した。

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Xperia Z1と一緒に並べても違和感がないよう配慮した

 ライムとピンクを採用したのは、「より広いターゲットに届けたかった」(リンダ氏)ためだ。ライムを採用したのは「これまでやったことのない、新しい色にチャンレンジしたいと思ったため」(リンダ氏)。「インテリアのトレンドを参考にして“強いイエロー”を目指しました。遊びすぎているように見えるかもしれませんが、金属フレームによって、上品でゴールドに近い仕上げになりました」とリンダ氏は手応えを話す。

 こうした工夫が功を奏し、ライムは「予想以上に売れています」と内田氏は驚く。

 ピンクはXperiaシリーズでは定番色になりつつあるが、Xperia Z1 fでは「新しいタイプのピンクを探した」(リンダ氏)という。表現力豊かで強い印象を残しつつ、金属フレームによって、遊びすぎず、おもちゃっぽく見えないよう配慮した。

photophoto 背面とは打って変わって洗練された印象を受ける、ライムの側面(写真=左)。金属の側面は高級感を与えながら、背面の強すぎる色を抑える役割も持つ(写真=右)
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リンダ氏

 Xperia Zシリーズでは珍しく、パープルを採用しなかったのもターゲットを広げるためだ。パープルはソニーモバイルのスマートフォンでは戦略的な色なので、Xperia Z1 fでも採用するかは議論したそうだが、一方で「パープルはそれほど強い色というわけではありません」とリンダ氏。例えばライムのような目を引く色は、Xperia Z1のような大きな端末で採用することは難しいが、Xperia Z1 fほどの小さな端末なら、表現しやすいという。「今回はチャレンジすることを優先しました」(リンダ氏)

 ブラックの背面パネルはXperia Z1と同じ色だが、側面は処理を変えている。Xperia Z1では、側面の縁と4隅に「ダブルアルマイト加工」を施してマットな質感にした。側面のフラットなパネルは鏡面仕上げにし、マットとツヤのコントラストが強調されている。一方、Xperia Z1 fではダブルアルマイト加工は施さず、コントラストを抑えて落ち着いた印象にした。ホワイトも背面の色は同じだが、フレームはZ1よりはマットにしつつ、より明るく見えるよう処理した。

photophoto 上がXperia Z1 f、下がXperia Z1。Z1の方が質感と色のコントラストが目立っている

 Z1とZ1 fのブラック、ホワイトを並べて見比べると確かに違いが分かるが、いずれも「金属を最大限生かした」もので、「プラスチックだとここまでの表現はできません」とリンダ氏は胸を張る。

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