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「au WALLET」の新しさ/ソフトバンク決算会見で見えたもの/アプリや新規事業に賭けるDeNA石野純也のMobile Eye(2月3日〜14日)(3/3 ページ)

この2週間は新サービスの発表が相次いだ。今回はKDDIの新しい決済サービス「au WALLET」、ソフトバンクとDeNAの決算会見を振り返りたい。孫社長が言及した新しい料金プランについても、あらためて問題点を指摘したい。

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ブラウザゲームの苦境が鮮明に、アプリや新規事業に賭けるDeNA

 DeNAは2月5日、2013年度第3四半期の決算説明会を開催した。業績は売上417億円、営業利益114億円で、それぞれ前年同期比20%減、42%減。ブラウザ上で提供するソーシャルゲームの不調が、業績にもくっきり表れた格好だ。プラットフォーム「Mobage」内で流通する仮想通貨の「モバコイン」の流通量が、「内製ゲーム、サードパーティとも、ほぼ同じ額が落ちた」(代表取締役社長 守安功氏)とのことで、テコ入れが求められている。守安氏も「短期においてはMobage事業の立て直し、特に国内が最重要課題」と述べている。

photophoto 決算説明会でMobageの立て直しについて語る、代表取締役社長の守安功氏(写真=左)。売上、営業利益ともに下降トレンドが明確になった(写真=右)

 フィーチャーフォン時代はトップクラスの売上を誇ったMobage。市場がスマートフォンにシフトするなかでも、比較的業績は堅調だった。いち早く影響を受けたGREEとは異なり、2013年度第1四半期では、522億円の売上を確保。売上は前年同期比10%増と、業績も拡大していた。一方で、最近では「パズル&ドラゴンズ」を提供するガンホーや、「魔法使いと黒猫のウィズ」を提供するコロプラといった企業が好調なことからも分かるように、スマートフォン上でのコンテンツのトレンドが、アプリという形態に急激に移り変わりつつある。この影響が、2012年度第2四半期から徐々に表れ始めているというわけだ。

 打開策として、力を入れ始めているのがアプリだ。第2四半期には新規で60のタイトルを開発すると発表。この結果、「ようやくアプリマーケットにおいても戦える手ごたえをつかめた。有望と思えるタイトルが出てきて、アプリゲームの集客やノウハウをつかめてきた」(守安氏)という。実数は明かされなかったが、月間のアクティブユーザーは6月の3倍程度に拡大しているそうだ。ただし、60タイトルの投入については、「遅延が発生している」(同氏)といい、開発のプロセスも改めていく。

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アプリ開発に本腰を入れ、「三国志ロワイヤル」や「パズ億」といったタイトルでは手ごたえも見えてきたという

 「ゲーム事業は大黒柱であり続ける」(守安氏)としながらも、新規事業の創出にも力を入れ始めた。DeNAは、もともとイーコマース事業から始まり、オークションやSNS、ソーシャルゲームというふうに、時代に合わせて事業の柱を変えてきた会社だ。こうした実情を踏まえ、守安氏は「ゲームに次ぐ柱を作りたい」と言い、Mobageとは関連性のないサービスも2012年から本格的にリリースしてきた。新規事業についての方針は3つある。守安氏は、次のように語っている。

 「1つ目がこれまで得意としてきたインターネットサービス。ソーシャル×エンタメのように、モバイルインターネットで成長しそうなものを、内製でクイックに作っていく。2つ目が既存の事業領域にとらわれない中長期での事業。より大きな市場規模を狙える領域を見極め、きっちり張っていく。3つ目がベンチャー投資やマイナー出資を含めた投資で、成長しそうなタイミングで協業、あるいは買収することも今期から始めていく」

photophoto 新規事業の立ち上げも、本格化させている(写真=左)。「Showroom」や「マンガボックス」といった、Mobageとは関連性のない事業にも挑戦(写真=右)

 実際、2013年に創刊した無料の「マンガボックス」は、立ち上がりが好調だ。マンガボックスは毎日3〜5作品、1週間で全作品が更新されるWebマガジン。マンガ週刊誌をアプリ上に再現したサービスと考えれば分かりやすいだろう。12月4日にサービスを開始し、1月には累計200万ダウンロードを突破した。収益は単行本から得るほか、キャラクターなどをソーシャルゲームに活用することも目指しているといい、ビジネスモデルは、既存の出版社のマンガ雑誌に近い。

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マンガボックスは、1月に累計200万ダウンロードを突破した

 ただし、「現時点では収益化のめどが出ていない」そうで、広告の配信も始める。守安氏の挙げていた2つ目の中長期での成長を見込んだ事業といえるだろう。こうした新規事業は「今のDeNAの規模を考えると、3ケタ億円出さないと面白くない。そのくらいの規模を目指して事業を作っている。時間軸は3年から5年かかる」といい、DeNAの業績に貢献するにはもう少し時間がかかりそうだ。マンガボックスのほかには、バーチャルでアイドルなどのパフォーマンスを楽しめる「Showroom」や、教育事業の「アプリゼミ」などを開始している。

 一方で、新規事業には当たり外れもある。DeNAは過去にはコミュニケーションアプリの「comm」や、音楽サービスの「Groovy」などを立ち上げているが、どれも大ヒットには至っていない。手ごたえをつかめてきたゲームアプリとともに、新規事業がどこまで伸びるかが、DeNAの今後の行方を左右しそうだ。

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