ソフトバンク、「LTE-A TDD」で下り1Gbpsを達成 3.5GHz対応の試作スマホも披露:256QAMで高速化
ソフトバンクは、東京・銀座で実施中の3.5GHz帯を使ったLTE-Advanced TDD方式による実証実験を公開。下り最大1Gbpsの高速通信や試験用の試作スマホを使った速度測定などをデモした。
ソフトバンクモバイルは6月16日、3.5GHz帯を使ったLTE-Advanced TDD方式による実証試験(トライアル)を報道陣に公開した。
トライアルの概要は1月24日に公開したものと同様だが、最大1Gbps超の転送レートを達成したほか、3.5GHz帯に対応した試作スマートフォンによる速度測定も行うなど、商用化への準備が着々と進んでいる様子が見て取れた。
同社は現在、3.4−3.6GHz帯(バンド42)で割り当てられた実験局免許を使い、LTE-Advanced TDDのトライアルを東京の銀座と池袋エリアで行っている。このほか、3.3GHz帯を使ったトライアルもお台場地区で実施中だ。
銀座エリアでは、約500メートル四方に8カ所のマクロ基地局と1カ所のピコ基地局を設置してエリアを構築。基地局は既存の2.5GHz帯AXGP(Wireless City Plannningが運用中)と1.9GHz PHS(ウィルコム運用中)の基地局と共用しており、バックボーンは2本のダークファイバーを使ってNTT東日本の銀座局にGC接続(加入者交換局同士の相互接続)されている。
トライアルで使われている受信側の基地局(端末)は小型の冷蔵庫サイズで、電源やアンテナ、計測機器などとともにマイクロバスに搭載。無線アクセスには3.480から3.560GHzまでの80MHz幅を使い、4組のアンテナで同時通信する4×4MIMOと、20MHzずつを1キャリアに割り当てたキャリアアグリゲーションに加え、変調方式に「256QAM」を導入して高速化を図っている。
1月に公開された段階では変調方式に「64QAM」が使われており、停車時の最大通信速度は770.161Mbpsだった。今回はより高度な256QAMにすることで、「1日1回は1GHzが超えるようになった」(担当者)という。
ただし、バス(アンテナ)の停車位置や車体の角度、電波がビルに反射して起こす干渉が複雑に関係するため、コンスタントに1GHzが出るようになるまではまだ調整が必要とのこと。デモでは瞬間的に1Gbpsを超えたが、バスのなかでジャンプして車体を小刻みに揺らすなど「現場の知恵」を駆使する場面もあった。
また基地局の切り替え時(ハンドオーバー)に通信速度を落とさず接続を維持する「CoMP」(Coordinated Multi Point transmission:複数基地局間協調伝送技術)を使って、下り700Mbps台の通信速度をキープしつつ、3つの基地局間を移動するデモも行われた。
最後に、ソフトバンクが今回の実証実験用に開発した世界に10台しかない試作スマートフォンが披露され、LTEでの通信速度を測定することができた(LTE-Advanced TDDではない)。このスマホはあるメーカーのAndroid端末をベースにしたもので、3.5GHz帯の送受信のみをサポートしている。
弊誌でもおなじみの計測アプリ「RBB TODAY SPEED TEST」を使った計測では、下りの通信速度が約20Mbpsから約67Mbpsという結果になった。LTE-Advanced TDD対応ではないことに加え、上記の実証実験では端末台数が1台であるのに対し、試作スマホでは同時に接続する端末数が増えたこと、アンテナの位置もバスの屋根という見渡しの良い場所から車内に移っていることが影響している。
3.5GHz帯は周波数が高いため速度を出しやすいが、基地局との距離や角度が変わることで通信品質も大きく上下し、手や頭部など人体による減衰率も大きいという。スマホのように手に持って使う端末の場合、持つ位置やアンテナの向き、人体からの距離などで通信速度が今以上に変化するようだ。
ソフトバンクモバイルは今後も、基地局のパラメータ調整やソフトのバージョンアップなどを繰り返して通信の安定と速度の底上げを目指し、商用サービス開始時のエリア設計や構築に役立てたいとした。
なお、3.5GHz帯は同社のほか、NTTドコモとKDDI、イー・アクセスの3社も割り当てを希望している。ソフトバンクとイー・アクセスには資本関係があるが、「通信事業者としてはまったく別」(担当者)とのことで、今回の実証実験にイー・アクセスは関わっていないという。周波数の割り当ては2014年中に行われる想定で、その場合は各社ともTDD方式による2016年中の商用サービス開始を見込んでいる。
関連記事
- ソフトバンクモバイル、LTE-Advancedに向けた電波干渉低減の実証実験を開始
ソフトバンクモバイルが、LTE-Advancedの電波干渉を抑える技術の実証実験を東京都で開始する。新しいシステムでは、マクロセルと極小セル間、極小セル間の電波干渉を抑えることが狙いだ。 - ソフトバンクの屋外マクロセル評価技術が国際標準化を達成
ソフトバンクテレコムとソフトバンクモバイルの「時間・空間電波伝搬推定法」技術が、国際規格として標準化された。LTEやLTE-Advancedの屋外マクロセルのシステム評価に使われる。 - 4K動画も快適に:ソフトバンクモバイル、LTE-Advanced走行実証作業を銀座で公開
LTE-Advancedの実力を示す舞台として選んだのは、高いトラフィックと高いビルが細い道沿いに集中する“超都市部”と呼ぶ銀座だった。 - FDD×TDDは日本初:イー・アクセス、1.7GHz帯(FDD)と3.4−3.6GHz帯(TDD)を使った実証実験を5月に開始
イー・アクセスは、1.7GHz帯(FDD)と3.4−3.6GHz帯(TDD)を使ったLTE-Advancedの実証実験を実施する。異なる送受信方式による実験は日本で初めて。 - LTE-Advancedを見据えて:通信品質の“谷間”をなくせ――ソフトバンクが取り組む基地局間協調伝送技術を見る
ソフトバンクモバイルが、同社が検証を進めている基地局間協調伝送技術や指向性アンテナ技術のデモをお台場で開催。電波干渉による通信速度の低下を新技術で改善できることをアピールした。 - ソフトバンクモバイル、LTE-Advancedに向けた実験試験局の免許を取得
セル境界の通信品質を改善する「複数基地局間協調伝送方式」の実証実験を、IP網を使ったX2インタフェースを利用して行う。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.