「Apple Watch」の登場で変わる?――スマートウォッチが普及しない理由
各メーカーが続々と市場に投入するスマートウォッチ。その一歩で日本ではあまり見かけないのも確かだ。注目のApple Watchの発売を控えてはいるが、今後日本で普及する鍵はどこにあるのだろうか。
スマートフォン、タブレットの次はスマートウォッチの流れが来る――と世界的に言われている。CESなどの国際的な展示会でも、各メーカーのスマートウォッチに対する力の入れようは明らかだと、取材に行ったライターたちも一様に話す。
スペイン・バルセロナで開催されたWMC 2015でもスマートウォッチは存在感を放っていた。中国の大手メーカー、HuaweiもGoogleのウエアラブル端末向けOS「Android Wear」を採用した「Huawei Watch」を発表。LGエレクトロニクスもLTEを内蔵した「LG Watch Urbane LTE」を発表している。WMCのタイミングに合わせるように、人気のスマートウォッチ「Pebble(ペブル)」も新モデルの「Pebble Time」を発表し、注目を集めている。
Apple Watchも4月24日には発表される予定でもあり、各メーカーのスマートウォッチがこの春は百花繚乱(りょうらん)だ。
一方、ユーザー側の反応はどうだろう。調査会社のカナリスによると、Android Wearを搭載するスマートウォッチは、2014年に出荷された台数がわずか72万台にとどまっている(外部リンク参照)。これを多いとみるか、少ないとみるか、判断に迷うところだが、実際に日本国内での生活で、使用しているユーザーを見かけることは少ない気がする。「腕時計なので気がつかないだけでは?」と考えることもあるが、それにしてみても、そうそう愛用しているユーザーを見かけることは少ない。
メディアでも取り上げられることの多い注目のガジェットなのに、街中で見かけないのはなぜか? 今回はその理由を考えてみた。
一般ユーザーが必要性を感じていない
私もスマートウォッチ(GALAXY Gear)を愛用しているが、装着していることに周りが気付き、「それって何ができるんですか?」と聞かれることも多い。ひとつひとつ機能を説明すると「それってスマートフォンで確認すればいいことですよね?」と返されことも多い。スマートウォッチは、母艦でもあるスマートフォンに存在を否定されているデバイスともいえる。
これは冷静に考えると納得できる。電話やメールの着信確認をスマートウォッチでしなければ困るシーンも限られており、SNSの新着情報やマップなども、大画面のスマートフォンの方が明らかに見やすい。現状で「スマートウォッチでないと困る」という場面も、そうそうないだろう。もちろんスマートウォッチの機能は時間を確認するだけでないが、その多機能ぶりを知らないユーザーには「腕時計の一種」として見られているのも事実で、腕時計を必要としない層に無用と思われるのも致し方ない。
最近では単体でモバイルデータ通信が可能な“スマートウォッチフォン”も増えているが、現状の多くのスマートウォッチは、スマートフォンの機能を補完するアクセサリーの要素が強い。主従関係でいえば、主がスマートフォン、従がスマートウォッチとなってしまう。Bluetoothのヘッドセットやキーボードと同じカテゴリーだと考えると、スマホやタブレットの普及率と比べて利用者が少ないのは、当たり前のことなのかもしれない。
バッテリーの持ちが悪い
多機能ぶりで魅力的なスマートウォッチだが、その特徴上、バッテリーの消費は一般的な腕時計とは比べ物にならない。小型な液晶ディスプレイで電力消費は抑えられているものの、それでも1日1回は充電しなければならない製品がほとんどだ。E-Inkを搭載したロングランバッテリーのPebbleでも、持続時間は約4日であり、一般的な腕時計よりも充電をする頻度が高い。Apple Watchもバッテリーの持続時間は約18時間で、まともに使うと、1日1回の充電を強いられる。
「腕時計なのに毎日充電が必要とは……」と敬遠されるのは「ウォッチ(時計)」というネーミング上、仕方がないものかもしれない。
だが、この点に関してはPebbel以外のメーカーも手をこまねいているわけではない。バルセロナで開催されたMWC 2015でLGが発表した最新のスマートウォッチ「LG Watch Urbane LTE」は、ケータイ(フィーチャーフォン)に迫る700mAhのバッテリーを搭載している。今後登場するスマートウォッチの1つのキーポイントになるのが、このバッテリーの問題だろう。
OSの制約が普及の障壁に
日本国内ではiPhoneの普及率が高いのは明らかな事実であるだけに、現状でiPhoneに対応したスマートウォッチが少ないことも、普及しない理由の1つといえる。
Android WearはiOSでは使えず、Apple WatchはAndroidでは使えない。ソニー、LG、MotorolaなどのAndroid Wear搭載スマートウォッチ、Tizen OSのSamsungのGALAXY Gearシリーズ(初期はAndroid OSだった)など、自社のスマートフォンまたはAndroidにしか対応していないものが多い。iPhoneで利用できるスマートウォッチの筆頭がPebbelだが、「Apple Watch待ち」というiPhoneユーザーも多いと聞く。Apple Watch発売を契機に、日本国内でもスマートウォッチユーザーが増える可能性はありそうだ。
スマートウォッチは今後どんな進化を遂げるのか
携帯電話がスマートフォンへと進化していったように、時計がスマートウォッチに進化している過程が今だといえる。今後、メーカーは新しいイノベーションの1つとしてスマートウォッチを投入してくるだろう。
例えばApple Watchが示した方向性は、高級腕時計のように宝飾素材を使ったものだが、他方でカジュアルな製品が増えてもおかしくはない。また、スマートフォンがそうだったように、防水やテレビ視聴機能、FeliCaやNFCのようなおサイフ機能を搭載したものも考えられる。このような機能は国内メーカーが率先して投入してくるのではないだろうか。
そのほかにも、スポーツメーカーと提携してヘルス機能を強化したもの、ランニングシューズやスポーツ用具などとの連携機能を取り入れた商品が投入されてもおかしくはない。もう1歩踏み込んで考えれば、自動車や家電品と連携するスマートウォッチも出てくるだろう。
ITメーカーのみならず、Swatchといった時計メーカーも製品を開発している(関連記事)。市場での競争も活発になれば低価格化もより進み、2万〜4万円のスマートウォッチも手に入れやすい価格帯の商品となっていくだろう。またバリエーションが豊富になることで、購入者の層を広げることにも貢献するはずだ。
ここで挙げた問題が解消され、スマートウォッチが上記のような進化を遂げれば、多くの人の腕にスマートウォッチを付けている光景を街中で見かることになるだろう。
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