デザインを洗練させてカメラ機能を強化、熱対策も――Huaweiの“生き残り”戦略:SIMロックフリースマホメーカーに聞く(2/2 ページ)
HuaweiがSIMロックフリースマホを本格展開してから1年がたったが、同社は今の市場をどのように捉えているのか。同社の最新戦略を、日本で端末事業を統括するデバイス・プレジテントの呉波(ゴハ)氏に聞いた。
デザインや質感が向上した理由
―― そのMedia Padも含め、長くHuawei端末を見てきた中で、昨年(2014年)ぐらいから端末のデザインや質感が、グッと上がった印象を持っています。何か、Huaweiさんの中で変わったことがあったのでしょうか。
呉氏 まず、フランスのパリで、デザイン研究センターを設立しました。そこでは、欧州で最先端のデザインをする、優秀なデザイナーたちを雇用しています。また、日本においても、研究所を作っています。こちらの研究所の目的は、優れたデザインを実現する部材を調達することです。例えば、P8 maxもそういった材料を使わなければ、この質感は出せませんでした。スマートフォンのデザインは直感的に分かるものですが、品質は長い時間で体感するものです。この2つを評価していただければ、買い替えのときにHuaweiを選んでもらえると考えています。
デザインが変わったという点では、チーフデザイナーに新しい方を迎え入れたのも、大きな理由ですね。
対応バンドに穴はあるものの……
―― 最近では、HiSilicon製のチップセットを搭載した端末も増えていますが、やはりグループでチップセットまで開発しているのはメーカーとしての強みになっているのでしょうか。
呉氏 はい。チップセットというのは、端末にとって核となる技術ですからね。Huaweiは、ICT業界の中で、唯一チップセットから端末、ネットワークまでエンドツーエンドで提供している企業です。弊社のネットワーク事業は世界でも1位ですが、いくら最先端のネットワークを作っても、それと合わせたチップセットや端末がなければ意味がありません。下半期にも弊社の最新技術を集結させたものが出るので、ぜひご期待ください。
―― 今おっしゃっていたように、Huaweiといえばネットワークに強い企業というイメージがあるのですが、一方で端末の対応バンドが機種によっては少なすぎると思います。特にLTEのBand 19は、基本的にサポートした方がいいのではないでしょうか。
呉氏 おっしゃっていることは、まさにその通りです。ですが、実際に製品を出すときは、(コストとの兼ね合いも含めた)実用性を考えなければいけなません。体験されたことがあるかどうは分かりませんが、日本のスマートフォンを持って海外に行くと、国際ローミングの信号を受信できないこともあります(対応バンドが日本のものに特化しているため、海外で必要な周波数を利用できないケースのこと)。逆に(日本の場合は)山間部を除けば、honor6 Plusでも、障害はないと思っています。
―― ちなみに、残念ながら私の自宅(東京都心)も、ドコモのLTEはBand 19しか入りません。山ではないのですが……。気を取り直して、うかがいますが、最近のスマートフォンはカメラ機能にこだわったものが多いと思います。Huaweiさんも例外ではありません。なぜなのかと同時に、ほかに何か望まれている進化はないのかということを伺えればと思います。
呉氏 弊社もワイモバイルさんから出た「STREAM S」のときから、カメラ機能を売りにしてきます。他社もそうで、カメラにすごく力を入れているので、これが市場全体のトレンドになっています。弊社の取り組みとしては、さかのぼること2012年のCEATECでも、「STREAM X」という端末で撮影会をしていました。目標としては、日本市場でキャリア向けも含め、すべてのメーカーで一番カメラ機能が優れたメーカーになることです。
P8 maxはパーフェクトセルフィーなど、さまざま撮影モードを使用できますし、日本で出ているものの中で一番いいと自負しています。アウトカメラはセンサーもRGBWに対応したものを使っていますが、これも世界初(1300万画素のアウトカメラにおいて)です。
もちろん、おっしゃっていたように、スマートフォンにとってカメラは重要な機能ですが、それだけではありません。そろそろ夏になりますし、最近ではスマートフォンが熱いという問題も起きているようです。そこで、弊社の端末は3万円以下でオクタコアCPU搭載でも、発熱しないと宣伝しました。また、消費者の関心が高いのは、バッテリー寿命です。弊社はチップセットのデザインを通して省エネルギーな仕様にしているため、他社と同じような容量のバッテリーを搭載していても、30%以上長く使うことができます。
P8シリーズから「Ascend」が消えた理由
―― P8シリーズから、これまで使っていた「Ascend」というブランドがなくなりました。この理由を教えてください。
呉氏 Ascendのネーミングについてお聞きしたいのであれば、まさに私が適任です。あれを付けたとき、私が後ろで働きかけていましたからね。4年前まで、弊社の携帯電話はすべて「Huawei●●」という製品名でした。ただ、日本では企業以外の名前が付く端末も増えてきました。当時、本社から幹部が来たとき、自分で事情を説明してプッシュするようにして、Ascendという名前は徐々にグローバルに広がっていきました。
ちなみに、Ascendという言葉は、日本語で「上昇する」という意味になります。まさに、Huaweiのこれまでの実績を表しているものだと思います。
―― その名前がなくなるのはさみしいですね。
呉氏 違うステージに入ると、違う戦略が必要になるということです。今継続的に出しているのが、Mateシリーズ、Pシリーズ、Gシリーズで、あとはローエンドのYシリーズです。製品の範囲が広くなり、それをすべてAscendという1つの言葉でカバーするのは不可能ですからね。
―― なるほど。ラインごとのイメージを、より明快にするという意図があるわけですね。最後になりますが、日本での目標を改めてお聞かせください。
呉氏 サバイバル。生き残ることです。日本においては、他社を打ち負かしたり、1位になったりするというより、持続的かつ長期的にビジネス展開をしていきたい。過去を振り返ると、1位でも業績が後退したり、撤退してしまったりすることもありますからね。弊社が横浜に研究所を設立したのもそのためで、日本企業とともに、カメラ技術や材料を研究したりしています。こういった取り組みを通じて、最先端でかつコストパフォーマンスのいい端末を提供していきたいと思っています。
取材を終えて:ネットワークの対応を万全にしてほしい
SIMフリー市場を切り開いてきたHuaweiだが、1年経ってみて、同社が思っていたほどの成果はまだ出ていないことが分かった。MVNO市場の伸びが、そのまま端末の売れ行きに直結しない上に、ASUSやZTEといったライバルも増えているからだ。
一方で、同社の端末は、デザイン、質感ともに以前より大きく向上しており、それを評価する業界内の声も聞こえてくるようになった。機能面でも、honor6 Plusのダブルカメラなど、独自性の高さを打ち出している。グローバルと並ぶかどうかは別にしても、Huaweiブランドの認知が進めば、徐々に結果が伴ってくるだろう。
ただし、その上で欠かせないのは、やはり周波数対応だ。特にBand 19のLTEに非対応な端末がまだ残っているのは、少々気になるところ。地方だけでなく、都心でも住んでいる場所、行く場所によってはLTEが利用できず、トラブルの元になりかねない。こうした点を気にして、導入に二の足を踏むMVNOも中にはいるだろう。通信技術に強い企業だけに、対応周波数が完ぺきでないことには、ちぐはぐな印象も受ける。
とはいえ、端末自体の魅力は確実に以前より増しており、何より選択肢が豊富なのはユーザーとしてもうれしいポイントだ。その点でHuaweiは、SIMフリー端末を選ぶ上で、外せないメーカーになりつつある。今後の展開にも、注目しておきたい1社だ。
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