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インタビュー

WQHD液晶は時期尚早?/オムニバランスデザインは終わらない?――Xperiaの今後を聞く開発陣に聞く「Xperia Z4」(後編)

ソニーモバイルのスマートフォン「Xperia Z4」の開発者インタビューの後編では、ディスプレイや今後のXperiaについて聞く。Xperia Zシリーズの象徴ともいえる「オムニバランスデザイン」は、今後も続くのだろうか?

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 ソニーモバイルのスマートフォン「Xperia Z4」の開発者インタビュー前編では、デザインや機構設計を中心に聞いた。後編では、ディスプレイで進化したポイントや、今後のXperiaについて聞く。また、米国ではZ4よりスペックの高い「Xperia Z4 v」が発表されたが、同モデルについても聞いた。

photophoto 「Xperia Z4」
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左からデザイン担当の鈴木氏、機構設計担当の金田氏、ディスプレイ担当の齋藤氏

バックライトの輝度はZ4>Z3

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ディスプレイ担当の齋藤氏

 Xperia Z4は、5.2型のフルHD(1080×1920ピクセル)のトリルミナスディスプレイ for mobileを採用しており、ディスプレイのスペックはXperia Z3と変わらない。しかしディスプレイ担当の齋藤氏によると、Xperia Z4ではZ3と比べてバックライトの輝度が高くなっているという。これは屋外での視認性を向上させるため。もちろん、屋外で(明るさ設定を「自動」にした際に)画質を自動で最適化する仕様はZ3から継承している。加えて、「同じ明るさであれば、Z4の方が消費電力を抑えられる」(齋藤氏)ので、Z3よりもちょっと明るい設定にしても、消費電力が大幅に増えるということはない。

 水滴が付いた状態でもタッチパネルを操作可能になったことも、ディスプレイの進化点だ。これは「水の容量を検知したうえで、指の容量も拾うというアルゴリズム」(齋藤氏)で実現しているという。水滴はいくつ付いていても問題ない。これまでも水滴が付いて誤動作することはなかったが、うまく操作するまでには至らなかった。Xperia Z4で水滴対応となったことで、台所や入浴中などで、より快適に使えるようになった。

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このように、画面に水滴が付いた状態でも自在にタッチパネルを操作できる。写真は「スケッチ」アプリで線を描いたもの

 一方、今回はあくまで「水滴」に対応したのみで、例えば水道から画面に水を流している状態や、水中ではタッチパネルは操作できない。「水中でタッチ撮影できるということを最終ゴールにしていますが、まだ道半ばです。防水をうたっている以上、どんな状況でもタッチパネルを使えることを目指したいですね」(齋藤氏)

ディスプレイの高解像度化は前向きに検討

 ディスプレイの解像度は1080×1920ピクセルをキープしているが、他社からはワイドクアッドHD(WQHD、1440×2560ピクセル)という、さらに高精細なディスプレイを搭載したスマートフォンも登場している。Xperia Z4でワイドクアッドHDまで解像度を上げるのは難しかったのだろうか。

 齋藤氏は「両方(フルHDかワイドクアッドHDか)議論をしています。高解像度にすると非常に細かく表現でき、絵はキレイに見えますが、副作用もあります。画素が多くなるほど(バックライトの)透過率が下がる(=これまでと同じ明るさを出すには電力を上げないといけない)ので、消費電力の面では不利になります」と話す。

 それでも「いちディスプレイ担当としては、高解像度を出したい。やっぱり解像度が高い方がキレイですから」というのが齋藤氏の本音だ。「技術の革新は続いているので、高解像度でも輝度が高いものも開発していますし、消費電力もICの改善やソフトウェアで抑えられます。これ(フルHD)以上の解像度は考えているところです」というので期待したい。

Xperia Z4 vはうらやましいけど……

 ちなみに、米Verizon Wireless向けには、ワイドクアッドHD液晶を搭載した「Xperia Z4 v」というモデルを開発している(→「Xperia Z4v」、日本のZ4より高スペックで米Verizonが発売へ)。Xperia Z4発売後の発表ということもあり、まさかの後出しじゃんけん(?)に「えー?」と思った人も多いだろう。

 スペックだけを見るとXperia Z4 vの方が先を進んでいるが、「消費電力を取るのかいい絵を出したいのか、という選択の中で(開発することを)決めました。Xperia Z4 vのスタミナも、抑えるだけ抑えていますが、液晶のモジュールだけを比較すると、若干は(消費電力が)高いです」と齋藤氏が話すとおり、Z4 vは消費電力をある程度犠牲にしていることが分かる。Xperia Z4 vというVerizon専用の製品名からも分かるように、同モデルはVerizon側の要望が大きく影響しているとみられる。

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米Verizonから発売予定の「Xperia Z4v」。Xperia Z4よりも厚くて重い

 またXperia Z4 vが新たに対応したワイヤレス充電も、(対応するバッテリーを搭載することで)サイズが大きくなるため、「デザイン的なロスがあります」と金田氏はデメリットを話す。ワイヤレス充電のパフォーマンスも、まだ改善の余地があり、実際はケーブルで充電をする方がスピーディだ。

 実際、Xperia Z4 vはまだ米国で発売されておらず(ソニーモバイルによると、発売日は近日中に案内できるとのこと)、パフォーマンスの確保に苦労していることがうかがえる。デザインとパフォーマンスを両立させたXperia Z4(海外ではXperia Z3+)こそが、現時点における真のXperiaといえるのではないか、と個人的には思う。

オムニバランスデザインは終わらない?

 毎年新型のXperiaが発表されるドイツ・ベルリンでの展示会「IFA」の開催が9月4日に迫っており、早くも後継機の足音が聞こえてきそうな雰囲気だ。次期Xperiaはどうなるのか。Xperia Z4を完成形とうたっているということは、これまで5機種にわたって続いてきたオムニバランスデザインは、Z4で終了を迎えたということなのか?

 「オムニバランスデザインが1つのアイデンティティなので、そこの部分は崩さないようにしたいと思っていますが、Z2からZ3で表現を変えたように、そこでの最適な形は考えていきたいです。オムニバランスデザインは、終わりではありません」と鈴木氏は話す。

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Xperia Zから継承している「オムニバランスデザイン」

 ということは、次もデザインの基本コンセプトは変わらないのか……? と思いきや「完成したものをさらに熟成させていくのか、違う方向に梶を切るのかは、いろいろ検討しているところです」(鈴木氏)ということで、次にどういう方向へ行くのかは、まだ何とも言えないが、「こうご期待」(鈴木氏)とのこと。次が「Xperia Z5」になるのか、全く新しいシリーズ名になるのか……その答が分かるまでには、もう少し時間がかかりそうだ。

 機構面での課題を聞くと、「新しい材料や素材感はもう少し突き詰めるべきだと思うし、新しい色の付け方、その辺をもっとやってもいいと思っています」と金田氏は力を込める。「既存の技術だけを組み合わせても面白いものができるとは思っていないので、パッと見て『おっ』というところは突き詰めたいですね。他社さんが見て『マネしたいんだけど、どう作ったらいいか分からない』と思わせたい。そこが醍醐味(だいごみ)だと思っています」

 「完成形」とまで言われたXperiaが今後、どのように進化していくのか。オムニバランスはさらに成熟させる余地があるのか? 新しい素材やカラーの展開は? Xperia Z4を使いながら期待したい。

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