ミッドレンジが主役のau春モデル/学割は値引きよりも“データ増量”を重視:石野純也のMobile Eye(1月4日〜15日)(2/2 ページ)
auは春商戦を「ミッドレンジのスマートフォン」と「学割」で戦う。特に学割は、最大で780GBものデータ増量を得られるという大盤振る舞いの内容だ。端末と学割、2つの側面から、auの発表を振り返っていきたい。
学割は単純な値引きからデータ増量へ、高まる若年層のデータ需要
auの発表会で、新端末以上に時間を割かれたのが、学割だった。学割といっても、対象は25歳以下のユーザーと広く、学校に通っている必要は特にない。キャッチ―な名前のため、学割と呼ばれているが、実際には新社会人までを対象にした、「若者割引」といったところだろう。
しかもその内容は、“割引”よりも“データ容量の増量”に重きが置かれている。ユーザーにプレゼントされるのは、毎月5GB。カケホとデジラを利用し、5GB以上のデータ定額を契約しているという条件はあるものの、25歳までであれば、毎月5GBが追加でもらえるという大盤振る舞いのキャンペーンだ。中学1年生が25歳まで毎月受け取ったとすると、780GBに相当する。これに加えて、毎月1000円の割引も適用される。
KDDIより先に、ソフトバンクは3GBを36カ月間付与する「ギガ学割」を発表していたが、同日auに即座に追随。36カ月という期間はそのままだが、増量するデータ量を6GBに増やしている。対するドコモも、他社に条件を合わせる形で、36カ月間、家族で分け合える5GBのデータ量がもらえる「ドコモの学割」を発表した。「U25応援割」でもらえる1GBと合わせると6GBになり、データ量ではソフトバンクと並んだ。5GBながら適用年数が長いauと、6GBで36カ月間のドコモ、ソフトバンクという構図ができたことになる。
一気に3社が並び、2016年の学割はデータの増量が主流になった。背景には、若年層のデータ通信に対する需要の大きさがある。KDDIの田中氏によると、「今の学生さんは、お金がないのではなく、データがほしい」という。その根拠となる、KDDI調べの年代別平均利用データ量を見ると、確かに10代、20代が平均を大きく押し上げていることが分かる。10代では5.19GB、20代では4.96GBと、全体の3.59GBを大きく上回っている。
ソフトバンクの代表取締役兼CEO 宮内謙氏も「リサーチによると、学生の4割以上が、ホワイトプランの7GBや、スマホ放題の5GBを超えている」と話しており、この需要の大きさはキャリアを問わず、若年層に一般的な傾向であることが分かる。2016年の学割は、こうしたニーズに応えたものだというわけだ。
総務省のタスクフォースで出た取りまとめを受け、ソフトバンクは1GBのデータ定額プランを発表。auも「カミングスーン」(田中氏)と、低容量の新プランを準備しているが、こうしたプランは、主に50代、60代のシニア向け。スマートフォンの購入意欲も、あまり高くない層だ。その意味で、春商戦の競争を左右するのは、低容量のプランより学割キャンペーンだといえるのかもしれない。
ただ、KDDIが公開したデータ通信の利用意向を見ると、50代でも5GB以上使いたいユーザーが半数を超えていることが分かる。その意味では、低容量のプランより、学割のような施策を全年齢向けに広げた方がインパクトは大きくなるのかもしれない。また、比較的データ通信の需要が高い、20代後半から30代、40代のニーズには応えられておらず、中には不公平だと感じるユーザーもいるだろう。キャリアは電気通信事業法によって、公平にサービスを提供することが義務付けられている。25歳以下のユーザーにだけ、キャンペーンという形でデータ通信量を増やす施策には、この観点での疑問も残る。
田中氏は、「その他の世代についても、その都度考え、2016年のauは『なんか違うよね』と言われるようにやっていきたい」と述べていたが、25歳より上のユーザーに向けた施策にも期待したいところだ。LTEのインフラも徐々に進化しており、キャパシティは上がっている。過去の基準で導き出された料金プランの容量を、ずっと据え置きにしておく必要もないはずだ。ユーザーのニーズに応えるのであれば、学割をテストケースとして、料金プランそのもののデータ量を上げていくことも、ぜひ検討してほしい。
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