「安くても大手キャリアに負けない」――大攻勢をかける「楽天モバイル」の現在地:MVNOに聞く(2/3 ページ)
MVNOサービス「楽天モバイル」が勢いを加速させている。端末と通信料が一体となった「コミコミプラン」も発表し、Huaweiや富士通の新機種も投入する。そんな楽天モバイルの最新戦略を聞いた。
P9/P9 liteは想定以上に売れている
―― その端末ラインアップが豊富なのは楽天モバイルの強みだと思いますが、どういったポリシーでそろえているのでしょうか。
黒住氏 事業開始当初から、できるだけたくさんのニーズにお応えするというものはありました。とにかく安くなるよう、グローバル端末を安く調達して売るというわけではなく、国産も含め、バランスよくニーズに応えるラインアップを組みましょうという方針です。夏に関しても、MVNOの中では、他社に負けないような選択肢をそろえました。
比較対象は、MVNOだけではありません。MNOに対しても、商品の質で負けないようにしようというのがあります。ただ、それだけになってしまうと、どうしてもお客さまが求めているコストやニーズに応えられません。国産端末には国産端末が得意とする領域があり、グローバル端末にはグローバル端末の得意な領域があります。
1つの方向性は、やはりコストパフォーマンス重視で、たまたまなのか、意図的なのかは分かりませんが、海外メーカーはそのカテゴリーに入っています。逆に、日本市場に独特な防水やワンセグ、おサイフケータイがしっかり入っているものは、国内メーカーです。ZTEのBlade E01は、前者の延長線上にある商品ですね。
―― 昨年(2015年)出た「P8 lite」は売れ行きもよかったと聞きますが、P9 liteはいかがでしょうか。
黒住氏 実際触ってみると分かりますが、やっぱりバランスがいいですね。僕も端末を作っていたので分かりますが(※黒住氏はソニー・エリクソン在籍時にXperiaブランドを立ち上げ、Xperia Z3発表直前にソフトバンクに移籍、その後楽天に入社する)、このクオリティーでよくこの価格が出せるなと思います。もともと、日本市場は高い端末がほとんどで、後はとにかく安いものしかありませんでした。そのちょうど中間の領域、いいデザインで、いい機能が入っていても安いというものが、この1年から半年ぐらいできちんとそろい始めています。
―― 一方で、P9のようなハイエンド端末も入れているのは、楽天モバイルならではです。
黒住氏 ハイクオリティーでプレミアム感のある商品を求められているお客さまもいます。楽天はイノベーティブな会社でありたいし、しっかりそういうものを提供したい。デュアルカメラは他社もやっていますが、正直ここまで作りこめているのは、Huaweiさんならではです。仕組みも勉強しましたが、よく考えられていますね。
―― 反応はいかがですか。
大尾嘉氏 いいですね。P9 liteとP9で当然価格に差はありますが、僕らが想定していた以上に売れています。僕らのビジョンとして、「ちょっといいモバイル、もっと楽しい毎日」という言い方をしていますが、ボリュームゾーンだから売る、そうじゃないから売らないではなく、全てのお客さまに楽しく過ごしてほしい。もちろん、ある程度数も追わなければいけないのは事実ですが、同時に、少しでも違ったものを提供したい。例えばP9であれば面白い写真やプロ並みの写真を撮ることができますし、そういった楽しさは提供していきたいですね。
当初より女性ユーザーが増えている
―― 傾向として、今までより高い端末が売れるようになってきたということはあるのでしょうか。
黒住氏 これから変わるかもしれません。高い方の端末が売れるようになるには、やはり時間がかかります。いくら日本の市場がハイセグメントに集中しているとはいっても、そこにわれわれが同じような価格帯の商品を用意するだけでは通用しません。これまで日本に流通していなかったブランドなり商品なりを認知してもらうためにも、時間が必要です。
ただ、兆しとして、当初より女性のユーザーが増えてきて、年齢層が40歳前後だったところから若い方、高い方にも徐々に広がっています。今後、そういったユーザーが(SIMフリー端末を)認知したとき、より大きくなってくるのだと思います。
―― そのときに、コミコミプランが威力を発揮しそうですね。
黒住氏 効いてくると思います。
―― まだ始まって数日ですが、利用状況はいかがですか。
大尾嘉氏 期待していた通りですね。
黒住氏 コミコミの方とそうじゃない方がいるという前提で作ったもので、やはりそういう形になっています。一極集中にはなっていませんね。
大尾嘉氏 ですが、これから徐々に上がっていくと見ています。今回は新しい端末との組み合わせにしていますが、ニーズのあるところでやっていこうと考えています。
arrows M03はXperiaと似ている?
―― 黒住さんがarrows M03を持っているのが、今までの経緯を考えると驚きというか、複雑というか、面白いというか……(笑)。ぶっちゃけ、Xperiaに似ていませんか?
黒住氏 僕も富士通さんには行きましたが、最初はどういう説明をするのか、楽しみにしていました(笑)。ただ、モチーフはどうされたのかを聞いたところ、答えとしては彫刻的なアプローチを取っていて、四隅に削りも入っています。ここは、一番の差別化です。ガラスの1枚板の商品の表情を作るのは、こういうところですからね。
しかも、テレビ用のアンテナまでちゃんと入っているのは、素直にすごい。このコストで、ここまでやれるのかと感心しました。背面はガラスではありませんが、MIL規格まで通してしまっている。ここまでやって大丈夫なのと聞きましたが、彼らは日本市場のことをよく分かっていて、「ここまでやらないと満足してもらえない」と言っていました。ミッドレンジだと手を抜いてしまうところがある中で、一切手を抜いていないのはすごいと思いました。
―― 今回であれば、Blade E01は他のMVNOにない端末ですが、こういった点での差別化も意識しているのでしょうか。
黒住氏 FREETELさんがやられているような自社開発という道もありますが、楽天には、マーチャントさんがいて、彼らが作ったものをしっかり流通させるというカルチャーがあります。honor6 Plusは独占でしたが、あれもHuaweiさんにああいった商品があって、それを独占的に提供した形です。honor6 Plusに関しては、ダブルレンズであの価格帯のものはなかったので、そこに踏み込んでいきましたが、そういうことは、今後もやっていきたいですね。特徴のある商品やブランドを、一緒にやっていくことで、目玉は作っていけると思います。
関連キーワード
楽天 | 楽天モバイル | MVNO | arrows M03 | Xperia | Huawei P9 lite | 楽天スーパーポイント | UQ mobile | BLADE E01 | Honor 6 Plus | MM総研 | Huawei P8lite | MVNOに聞く | ソニーモバイルコミュニケーションズ
関連記事
- “格安”でも“過剰”でもない――「新しい立ち位置」を目指してサービス拡充を図る楽天モバイル
楽天モバイルが新サービスを発表した。“格安”でも“過剰”でもない、従来のMVNOとは違う立ち位置の確立を目指す。 - 楽天モバイル、月額料金の「楽天スーパーポイント」払いに対応
8月請求分(7月利用分)から月額料金のポイント充当が可能に。 - 楽天モバイル、5分かけ放題でスマホ込み1880円〜の「コミコミプラン」を7月開始
「ZTE BLADE E01」「HUAWEI P9 lite」「arrows M03」の3機種限定。2GBまたは4GBのデータ通信に音声通話の5分かけ放題、そしてスマホの本体価格をセット。1年目の料金は1880円〜2980円から。 - 防水・おサイフ対応、アルミフレームを採用した「arrows M03」、7月下旬に発売
富士通の最新SIMフリースマホ「arrows M03」が7月下旬に発売される。アルミフレームや功績をイメージした素材を背面に採用して高級感がアップ。カメラはM02よりも画素数が向上。おサイフケータイやワンセグも利用できる。 - 1000万契約は「簡単な道のりではないが、ワクワク感もある」――平井副社長に聞く「楽天モバイル」
2014年に「楽天モバイル」の提供を開始した楽天とフュージョン・コミュニケーションズが、「1000万契約」を目標に掲げて話題を集めている。端末も幅広くそろえ、契約数も好調に伸びている同サービスの戦略を、楽天の平井康文副社長に聞いた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.