総務省のガイドラインもクリア 半永続割り引き「docomo with」の狙いを読み解く:石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)
ドコモが2017年夏商戦向けモデルを発表した。端末以上に話題を呼んだのが、割り引き込みの料金プラン「docomo with」だ。docomo withにはどのような狙いがあるのだろうか。
docomo withを投入した、3つの狙い
ドコモが、docomo withを導入した狙いは、主に3つありそうだ。
1つ目が、長期利用ユーザーの満足度を上げること。これは、結果として、ポートアウトの抑止や解約率の低下につながる。先に述べたように、月々サポートは基本的に24回で終わってしまうため、1台の端末を長く使い続けるユーザーからは「不公平」だと不満の声が挙がっていたという。吉澤氏は次のように語る。
「どちらかというと、今いるユーザー、長くドコモを使っているユーザーに、この機種を使っていただき、ずっと長くドコモにいてもらうということが基本の考えになる」
現状では、ガイドラインによって過度なMNPの優遇が禁止されており、大手キャリア間の流動性は以前より低くなっている。残った流出先が、MVNOや、UQ mobile・Y!mobileといったサブブランドだ。そのMVNOはほとんどがドコモ回線を利用しており、auやソフトバンクからユーザーを獲得すれば、ドコモにとってはプラスになる。つまり、他社のサブブランドへの流出を抑えれば、ドコモは契約者数も増え、ARPUも維持できるというわけだ。
吉澤氏はそれが主目的ではないと否定しつつも、「Y!mobileやUQ mobileにポートアウトしている数は当然ある。(そこへの)ポートアウトを防ぐ意味にもつながる」と語る。自身でサブブランドを導入するのではなく、フィーチャーフォンからの乗り換えキャンペーンやシンプルプランの導入によって、他社のサブブランドへの流出を減らしていくというのが、ドコモの基本的な戦略。docomo withも、この流れの中にある料金プランと見てよさそうだ。
2つ目の狙いが、総務省の思惑に応えるというもの。同じ端末を長く使うユーザーへの優遇は、総務省のタスクフォースが望んでいたことでもある。実際、ガイドラインを策定するためのタスクフォースでは、「頻繁に端末を買い替えるユーザーだけが得をするのは、おかしいのではないか」という声が挙がっていた。ドコモは、このころから、docomo withのような形の料金プランの検討を、水面下で進めていたようだ。
また、会見では直接的には語られなかったが、ミッドレンジモデルの販売促進という3つ目の狙いもありそうだ。吉澤氏は、以前筆者のインタビューに答える形で、「ミッドレンジモデルには、もう少し力を入れていきたい」と語っていた。docomo withが、こうした意思を体現した料金プランであることは、間違いないだろう。これがMONOのような端末購入サポートだと、割り引きが一括で適用され、財務的な負担が重くなる。docomo withのように継続して割り引きをすれば、割り引きのコストは数年に渡って分散できる。
ミッドレンジであれば、ハイエンドモデルに比べ、割り引きが少なくて済むのも、ドコモにとってのメリットといえるだろう。実際、夏モデルの実質価格を見ると、Galaxy S8+やXperia XZ Premiumといったプレミアムモデルは、一括価格が9〜11万円台と高い半面、実質価格は前者が6万円台半ば、後者が4万円台半ばに抑えられている。裏を返せば、ドコモが2年間5万円程度、販促のためにコストを使っていることになる。
そのぶん、端末の販売で利益を出せればいいが、キャリアは仕入れ値に大きな利益を乗せていない。特にiPhoneは、総務省のフォローアップ会合で示されたように、調達価格が7万円程度と薄利で販売している。売れば売るほど、割り引きのためのコストが重くのしかかる構造になっているのだ。
こうした事情を考えると、docomo withの延長線上に、端末と料金を完全に分離したプランがあっても不思議ではない。端末で大きな利益が出ないのであれば、ユーザーが持ち込んだ端末で契約した際に割り引きを行っても財務的なダメージは小さい。むしろ、割り引きが1500円程度で済めば、キャリアにとってはコストの削減にもつながる。
今後の行方はGalaxy Feelやarrows Beの売れ行きにも左右されそうだが、少なくとも、ドコモが、docomo withで分離プランへの第一歩を踏み出したことは確かだ。
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