docomo withの反響から、AIの取り組み、5Gの料金まで――ドコモ吉澤和弘社長に聞く(3/4 ページ)
ドコモの吉澤氏が社長に就任してから1年がたった。2016年〜2017年は端末購入のルールが変わり、MVNOも勢力を伸ばしている。この1年と直近の状況について、吉澤氏に話を聞いた。
コールセンターへのAI導入も検討
―― 28日に総務省から、店頭での説明が不十分だとして、指導措置が入りました。この件についてはどのように受け止めていますか。
吉澤氏 真摯(しんし)に受け止めています。(8日以内に無料で契約解除できる確認措置について)説明ができていなかったのが7〜8割と聞いてショックを受けました。契約に至っても、エリアの関係や、完全に説明しきれていないことがあるので、その場合は8日以内に申し出てくださいと。契約の最後というよりは最初に言う、あるいは紙でお渡しする、映像で簡単に分かるようにするなどですね。
あとは、申し出があって解約の処理をするときに、端末を返されるわけですが、当然、新品としては使えなくなります。正直に申し上げると、返品コストをこれまでは代理店さんに負担いただいていましたけど、今後はドコモが全て負担をして、引き取ることにします。
―― キャリアには説明責任があるとはいえ、全ユーザーに全てを話すのは難しいですよね。
吉澤氏 それは無理です。書面にあることを全部説明できませんから、大切なところにマーカーを引いたりしていますけど、リテラシーの問題もあると思うんですよね。分かっている方に全て説明する必要はないと思うので。
―― 説明不要の専用レーンがあってもいいかもしれません。
吉澤氏 そうですね。自分で処理ができる簡易な端末を、今後ショップに置こうと思っています。あとはネット(オンラインストア)です。オンライン比率も高めようと思っているのですが、なかなか……。
―― オンラインストアとリアル店舗の比率はどれぐらいですか。
吉澤氏 目標はある程度作っているのですが、まだ低いですね。端末や付属品の購入比率は高いのですが。コールセンター(の応対時間)も長くかかるので、チャットセンターを付けています。コールセンターにAIを採用することも考えています。
―― AIを使ったBOTのようなものですか? LINEモバイルでも導入していますが。
吉澤氏 おっしゃる通りです。ちなみに「あんしん遠隔サポート」ではLINEでのサポートを提供しています。北海道にチャットセンター(あんしん遠隔サポートLINE受付センター)を構えていますので、チャットでのサポートも拡充していきます。LINEだと、1人(のオペレーター)が数人に対応できますからね。
スピーカーデバイスには固執しない
―― 今、お話が出たAIについては、「AIエージェントAPI」も開放し、「ペトコ」のようなホームデバイスも出しました。この分野にはどう取り組んでいきますか。
吉澤氏 ペトコはデバイスが注目されていますけど、AIエージェントではデバイスの接続とサービス、銀行やタクシーなどでトランザクションが発生するものが必要になります。そういったところと、いかに多く連携できるかだと思います。AIエージェントの「オープンパートナーイニシアチブ」という構想で、2018年度早期までに(APIの)開発を終わらせます。
マイクデバイスやスピーカーのあるデバイスに、ドコモとして固執するつもりはありません。ペトコや「オハナス」でもいいので、いろいろな方が出していただければ。スマートフォンやタブレットに話しかければ、全て答えが返ってくるというものや、それに対する補助的なものは考えるかもしれませんが。立派なデバイスをぽーんと出すことは考えていません。
当然、「しゃべってコンシェル」で培ってきたノウハウや基盤も使います。一方で、dマーケットでもトランザクションが発生しているのですが、実はシステムの基盤が違います。そういったものとの統合も含めて、システムを開発しています。
―― 例えばオススメのコンテンツを提案してくれることも……。
吉澤氏 そういったものも出てくるでしょうね。今も「メッセージR」を出していますが、こうした部分的にやっているものを、統合しないといけないと思っています。
―― AIのデータやノウハウは、Apple、Google、LINEなども蓄えていますが、ドコモがAIに関わる強みはどこにあるのでしょうか。
吉澤氏 今言ったようなdマーケットのコンテンツ、あるいは企業とのつながり、dポイント、課金できるプラットフォーム、そういったものがエージェントの中でできます。
例えば、取引が発生するようなものですね。「○○を取り寄せて」と言えば、携帯料金と一緒に支払える。あとは位置情報を持っていることも重要です。「タクシーを呼んで」と言うと、東京にいると東京無線につながるとか。宅配が14時に来るけど、14時に帰宅できないときに「宅配に間に合いませんから時間を遅らせましょう」と言ってくれるとか。そういうことができるわけです。やはり、家の中だけでなく、外でできないと意味がないですから。
―― AIといえばIoTとも関連します。KDDIが個人向けIoTサービス「au HOME」を提供しますが、ドコモとしてこの分野にはどう取り組んでいきますか。
吉澤氏 家庭内という意味で、見守りは「dリビング」をやっていて、家電連携はまだできていませんが、標準化が重要です。独自にやって、いちいち冷蔵庫や洗濯機にセンサーを付けるのは大変ですよね。標準化に向けて、われわれももっと働きかけをしていきたいですし、IoTについては、いろいろと考えています。
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