「18:9ディスプレイ」「デュアルカメラ」「AI対応チップ」 IFA 2017で見えたトレンド:石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)
IFAは年末商戦から春商戦までを占ううえで、欠かせない展示会だ。このIFAで見えてきた、スマートフォンの最新トレンドをまとめた。日本市場への影響も合わせて考察していこう。
HuaweiはAI対応チップをアピール、Mate 10も発表予定
IFAでは新製品の発表がなかったHuaweiだが、同社のコンシューマー・ビジネス・グループCEO、リチャード・ユー氏が基調講演に登壇。「スマートフォンはもっとインテリジェントになる必要がある」と語り、AIの処理に特化したNPU(Neural-network Processing Unite)を搭載した、「Kirin 970」を発表した。AIや機械学習は、IT業界全体でトレンドになっている技術。Kirin 970は、これをクラウド側ではなく、端末側で高速に処理できるのが特徴だ。
ユー氏によると、そのメリットは「高速化」「低消費電力化」「高セキュリティ」の3つにあるという。ネットワークを介さず端末内で処理を行うことで、結果を迅速に得られることに加え、消費電力も抑えられ、しかもデータをクラウド側に送る必要がないため、プライバシーの観点からも安心できるというわけだ。
基調講演では、CPUとNPUで画像認識を行った際のスピードの違いや、消費電力量の差をユー氏がアピール。AIを用いた結果、カメラが自動でシーンを認識する速度や精度も上がるといい、撮影性能の向上にも期待ができる。
Kirin 970は統合チップで、CPU、GPU、NPUのほかに、LTEモデムも内蔵されている。このモデムは、カテゴリー18のLTEに対応。LTE Advanced Proとして、下り最大1.2Gbpsの速度を実現する。1.2Gbpsは、4×4 MIMO、256QAM、3波のキャリアアグリゲーションを組み合わせることで達成される。基調講演では、このプロセッサを搭載したMate 10が、10月16日(現地時間)に独ミュンヘンで発表されることも明かされた。
Huaweiが先駆けて発表したAI対応をうたうプロセッサだが、業界全体を見ると、これに取り組んでいるのは同社だけはないことが分かる。QualcommもSnapdragon 835発表時に、DSP(Digital Signal Processor)が(ディープラーニングのフレームワーク)「Caffe」や「TensorFlow」の処理に対応していることを明かしており、同プロセッサのキックオフイベントでは、実際に画像処理を行うデモを公開している。
Appleが、AI処理に優れたチップを開発しているというウワサも絶えない。iPhoneでは、画像の人物認識などを端末内で行っており、次期iPhoneで、この機能が強化される可能性もある。うがった見方をすると、Mate 10の発表がIFAや次期iPhoneの登場に間に合わないため、Appleへの対抗策として、先にプロセッサだけを披露してしまったと受け取ることもできる。
いずれにせよ、スマートフォンの端末側でAIをいかに素早く、効率的に処理するかは、スマートフォン全体のトレンドになりつつある。Bixbyを搭載するGalaxy Note8や、ユーザーの利用動向を学習するXperia XZ1、XZ1 Compactなど一部を除けば、IFAではこの機能に焦点を当てたスマートフォンは少なかったが、Huaweiの基調講演で業界全体の方向性を示せた格好だ。ユー氏が「スマートフォンのスマートさはまだ十分ではない」と語っていた通り、スマートフォンは成熟期を迎えつつあるといわれる一方で、進化の余地は、まだ大きく残されているようにも感じた。
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