SIMフリー市場にも“復活”のFCNT arrows We2/We2 Plusの反響、ハイエンド機やらくらくスマートフォンの今後を聞く(3/3 ページ)
FCNTがレノボ傘下の新体制の元で送り出す第1弾のスマホが、「arrows We2」「arrows We2 Plus」の2機種だ。同時に、オープンマーケット(SIMフリーマーケット)にも再参入を果たした。復活したばかりの同社が、なぜこの市場の開拓に取り組んでいくのかを聞いた。
AIのようなイノベーションを提供するのにハイエンドモデルが必要に
―― 今は比較的スペックの高いモデルが中心ですが、スマホに生成AIを取り入れる流れが加速しています。arrowsシリーズをAI対応させるとき、この部分もレノボとのシナジー効果を出していくのでしょうか。
外谷氏 AIにはレノボグループとしてかなり投資をしていて、グローバルではモトローラが「moto ai」を発表しています。FCNTは、そこと共有してAIを活用していく方針です。ただし、われわれのお客さまは日本がメインです。レノボが開発し、モトローラが搭載しているものをそのまま載せればいいかというと、そうではありません。日本語や日本の文化への対応も必要で、ローカライズはしっかり見ていく必要があります。その辺の議論は、ちょうど今しているところです。
AIはキーワードになっていますが、あくまでいろいろな価値を届けるための手段の1つです。AIを載せることが目的になってしまうと、弊害もあります。そういったマイナスが出ないよう、うまくバランスを取りながら付き合っていきたいと考えています。
―― その意味だと、arrowsのハイエンドモデルに期待する向きもありそうです。ミドルレンジにステップアップした後、そのような端末を投入するお考えはありますか。
外谷氏 何か決まった話があるわけではないことが前提ですが、今お話ししたAIのようなイノベーションを提供するときのハブとして、ハイエンドモデルが必要になってくると考えています。われわれの考えるハイエンドモデルを提供したいという思いはあり、実際、いろいろなところで「arrows NX」の後継機を出してほしいという声もいただいています。どちらかというと、エンドユーザーからそういう声が多いので、それに応えたい気持ちはあります。近い将来、われわれならではの答えをお示しできるといいなと思っています。
ただ、1つ課題だと思っていることもあります。世の中ではハイエンドモデルの需要が減っているといわれていますが、それは価格に見合った体験価値が提供できていないこともあります。どこまでの価格なら許容でき、そこにどういった価値を乗せていけばいいのかは今探っているところです。いずれにしても、ハイエンドモデルを手に取れなくなることで、日本のお客さまがイノベーションを取り入れられないのはよくないと思っています。そういったことも含め、最適なところを検討していきたいですね。
らくらくスマートフォン投入には販売チャネルやサポートの整備が必須
―― 発表会では、らくらくスマートフォンの投入も予告されました。いろいろ調べてみたところ、端末の商標はFCNTが持っているようですが、こちらもオープンマーケットに広げていくのでしょうか。
外谷氏 らくらくスマートフォンに関しては、端末だけが優れていても受け入れられるものではありません。端末以上に、販売チャネルだったり、購入後のサポートだったりを含めたインフラがしっかり整備され、初めて成功した過去があります。らくらくスマートフォンを広げるには、arrows以上に条件を突き詰める必要があるので、そこはいろいろな議論を重ねているところです。
―― 一方で、ITに詳しい人も徐々にシニアになっています。IT系の著名なライターでも還暦を迎えていますが、らくらくスマートフォンの需要は今後も残っていくのでしょうか。
外谷氏 議論をしているところですが、この瞬間の話でいうと、らくらくスマートフォンは、一定数いる、らくらくスマートフォンしか使えない方のためのものです。確かに、シニアが他のスマホに流れていったり、らくらくスマートフォンが他のスマホと違いすぎて教えにくいという声もいただいたりしていますが、それ以上にらくらくスマートフォンを使い続けたいという方が95%ぐらいの割合でいます。その方々に、らくらくスマートフォンを継続して提供していかなければいけない。
変えてしまうことは簡単にできますが、らくらくスマートフォンには数多くのレガシーが詰まっています。古くなってきたから変えようという話も聞きますが、それをお客さまが望んでいるかというと違うのではないか。あれを継続すること自体に、ものすごく価値があると捉え直しています。そういったことを、この半年間一生懸命やっています。アプローチは変わるかもしれませんが、根底のところは維持していきたいですね。
また、ITに詳しいシニアの方でも、年齢を重ねていくと目が見えづらくなったり、耳が聞こえにくくなったりという加齢による衰えは必ずあります。こういったところに、らくらくスマートフォンで培った技術を転用できる部分はあります。それがらくらくスマートフォンでなければいけないのかというと、必ずしもそうではありません。われわれはこれを「やさしいテクノロジー」と呼んでいますが、そういった機能をさり気なく搭載していけるといいなと思っています。
スマートフォン以外の分野に広げていきたい考えはある
―― 先ほどハイエンドモデルのお話はありましたが、スマホ以外の製品を展開していく計画はあるのでしょうか。イヤフォンやスマートウォッチ、タブレットなど、派生商品でエコシステムを作っているメーカーも多いと思います。
外谷氏 まだ明確に決まった話があるわけではありませんが、スマートフォン以外の分野に広げていきたい考えはあります。例えば、arrows We2 Plusに搭載した健康系機能のようなものは、ウェアラブルと非常に相性がいい。そういったところの価値提供ができるのであれば、ぜひやらせていただきたいと考えています。
また、エコシステムも時代とともに変化していて、例えば3.5mmのイヤフォンジャックも今の端末には搭載していますが、先々淘汰(とうた)されてしまう可能性はあります。同じブランドでワイヤレスイヤフォンを提供することで、ユーザーに対していい体験が提供できるのであれば、ぜひやっていきたい。まずは今のarrows We2、We2 Plusとらくらくスマートフォンですが、次の展開に向けてそういったこともやっていきたいですね。特にヘルスケアに関しては、今あるスマートウォッチやイヤフォンに限らず、今までに見たことがないものも提供できればと考えています。
タブレットに関しては、先ほどお話ししたarrows NXと同じぐらい、要望をいただいています。実際、市場を見るとお風呂で安心して使えるタブレットがない。他社はハイエンドタブレットを出していますが、それではダメなようなので提供の仕方を考えていきます。
―― レノボグループという意味だと、フォルダブルにも期待してしまいます。今はミドルレンジ以上のスマホが多いですが、あの形状はらくらくスマートフォンとも相性がよさそうですよね。
外谷氏 今のマーケットの需要がどこにあるのかを突き詰めていくと難しい部分はありますが、折りたたみスマホはらくらくスマートフォンのお客さまからの反応もすごくいい。明確な検討をしているわけではありませんが、らくらくスマートフォンやガラケー(フィーチャーフォン)をお使いの方が、同じような体験をより大きな画面でできることの価値は1つあると思っています。現時点ではarrowsとして出すのが本筋なのかもしれませんが、個人的には、価格も含めてうまくハマればらくらくスマートフォンの方に可能性があると思っています。
取材を終えて:キャリアの販路を以前と同様に拡大できるか
オープンマーケットへの再参入は、arrowsとしてのブランドをきちんと広げていきたい意思表示だった。レノボグループの調達力を生かせるようになったことで、無理なくコストも削減できているようだ。初代arrows Weのときには、この部分で無理が生じてしまった側面もあるため、体制が構築できたことは心強い。もともと、arrows Weは販売も好調だっただけに、その後継機のarrows We2や上位モデルのarrows We2 Plusにも期待ができる。
とはいえ、オープンマーケットへの挑戦は始まったばかり。今後、タイムリーかつ継続的に新モデルを投入していけるかは、注目しておきたいポイントだ。また、arrows Weは3キャリアから販売されていたが、arrows We2、We2 Plusではソフトバンクが現時点で取り扱いを表明していない。オープンマーケットの拡大と同時に、キャリアでの販売を以前の水準まで戻せるかは今後の課題といえそうだ。
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