麻倉怜士のデジタル閻魔帳
ハイビジョンビデオカメラ、今年の傾向(3/5 ページ)
AVCHDは原理上ノイズに強く、ワンセグ放送(AVCHDの映像圧縮に用いられているMPEG-4 AVC/H.264はワンセグ放送にも利用されている)でも分かるようにS/Nをキレイにして見せるのが得意ですが、ハイビジョンの映像においては色のグラデーションや明るさの表現などに情報量を必要とします。AVCHDを採用している製品の映像を見ていると、まだまだ情報量が足りない感じを受けますね。
業務レベルでは既にAVCHDのエンコーダも開発されていますが、その映像もまだまだやさしいというかヤワな印象を抱かざるを得ません。ただ、メーカーとしても手をこまねいているわけではなく、AVCHDのデブロックフィルタ(強く効かせるとノイズは減るが解像感も低くなる)を調整するなど画質向上のための打開策を研究しています。
メーカー側ではAVCHDについて、MPEG-2の半分の情報量で同じだけの画質を実現すると言います。確かにデータ量は減らすことが可能で、ブロック/モスキートノイズも少なくなりますが、画面が少々暗くなり、色乗りも浅くなる傾向もあります。
この辺りについても原因はハッキリしているので、エンコーダの段階であまりノイズを除去しないなど、今後の製品は画質面を追求した対策が施されるはずです。ですが、根本的には次世代のコーデックICで改善されることになるはずで、AVCHDが飛躍するのはそのタイミングになるでしょう。
――それでは、市場へ登場している代表的なHDビデオカメラについてメーカーごとにコメントをお願いします。まずは「HDR-HC1」で家庭用ビデオカメラに「HD録画」という新機軸を持ち込んだソニーの「HDR-UX7」(DVDタイプ/AVCHD)と「HDR-HC7」(DVテープタイプ/HDV)です。
麻倉氏: まずは「HDR-UX7」です。初のAVCHD対応モデルの「HDR-UX1」は確かにハイビジョンらしい画角感はありましたが精細感に欠けましたし、ボディも大柄でした。今回はボディもきちんとシェイプされていますし、映像のやや柔らかさは指摘せざるを得ませんが、ディテールは初代よりしっかり出ています。色乗りも良いです。
画素数が違う(UX1は210万画素、UX7は320万画素)というのもありますが、なによりもノウハウの蓄積が画質を向上させていると見るのが妥当でしょう。ソニーはビデオカメラのようにフォーマットが密接に関係する製品について、フォーマットと製品を同時開発できますが、それはフォーマットの方向性が完全に固まらないままに製品化をせざるを得ないとも言えます。
つまり「初対応モデル」の場合には、フォーマットのキャパシティぎりぎりを狙った製品作りが難しく、どうしてもマージンを残さざるを得ません。ビデオカメラの場合はS/Nが優先されます。ですが、ソニーのすごいところは、2台目にはきちんとした製品を出してくることです。その典型的な例がこのHDR-UX7でしょう。
操作性で素晴らしいと感じたのがタッチパネル。ノンリニアメディアは瞬間的に頭出しをできるのが大きなメリットですから、それをいかすには映像をサムネイルで管理して直感的な操作を可能にすることが大切です。ソニー的なインタフェースのよさが感じられるモデルですね。
ちなみに、DVテープを利用するHDR-HC7とDVDモデルのHDR-UX7は同じCMOSを採用します(記録方式はHDR-HC7がHDV、HDR-UX7がAVCHD)。HDR-UX7は確かに前機種に比べよくなりましたが、AVCHDにてまだどこまで細部を出すのか、ダイナミックレンジを表現するのかつかみ切れていないような印象は否めません。ところがHDR-HC7ではそのような印象をまったく与えません。
特に夜景の表現は非常にすばらしく、階調感もあります。両モデルの違いを端的に言えばフォーマットの違いですが、HDR-HC7にはソニーの担当者すら驚くほどのクオリティを持つまでに至っています。
ノンリニアの流れからすればDVテープを使うHDR-HC7は本流の製品とは言えませんが、テープを交換しながら撮影し、帰宅時にDVDレコーダーやPCのHDDへ映像を映せます。撮影時からノンリニアにする必要があるかどうかを考える必要はありますが、絵のよさならばHDR-HC7でしょう。
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