手術服も長ズボンも「裸より涼しく」 「空調服」に今年も新作
長袖なのに裸より涼しい「空調服」のバリエーションが拡大している。従来のブルゾンタイプやワイシャツタイプに加え、ニーズの大きかったズボンタイプも発売。空調服で上下そろえられるようになった。応用範囲はレインコートや手術服にまで広がっており、ホンダのバイクウエアにも採用された。
製品ラインアップは増えても狙いは1つ。夏もエアコンなしで快適に過ごせるようにしてエネルギー消費を減らし、地球温暖化を防ぐことだ。環境NPOと共同プロジェクト立ち上げも計画しており、温暖化防止への取り組みを進めていく。
空調服はなぜ涼しい
空調服はなぜ涼しいのか――仕組みをおさらいしておこう。空調服は、腰や袖の部分がきゅっと締まった密閉性の高い服に2基のファンを付けたもの。ファンが服の中に風を送って汗を気化させ、その時の気化熱で体が冷える。風呂上がりの濡れた体に扇風機が心地よいのと同じ原理で、同社はこれを「生理クーラー」と呼んでいる。服も体に張り付かないし、汗がすぐに蒸発するため不快感や汗くささもない(関連記事参照)。
ファンのオンオフを自分で調節できるので冷えすぎないし、消費電力は2.5ワット程度とエアコン(100~1000ワット程度)を使った場合よりずっと小さい。
新製品・空調ズボン(1万4700円)は、作業着のポケット部分に1基ずつファンを取り付け、足とズボンの間に空気が通るようにした。「上半身だけでなく、下半身も涼しくしたいというニーズに応えた」と同社の市ヶ谷弘司社長は言う。
ホンダのバイクウエアにも、空調服の技術を提供した。ブルゾンの背中部分に2基のファンを付け、目立たないようファンの上を黒いカバーで覆ってある「エアクールシステムブルゾン」だ。バイクウエアは長袖で蒸れるが、ファンから空気を送れば夏でも快適に着られるという。
手術服にも
「この服を空調服にできないか」――同社にはさまざまな分野から「空調服化」の声がかいかるという。その1つが医療分野。医師から「空調服を手術服にしたい」という相談を受けた。
手術中、医師は密閉性の高い手術服を着用しなくてはならないが、患者は裸で寝ているため室温を下げるわけにはいかない。室温を下げず、医師の体だけを冷やす仕組みが必要とされていた。
「世界中で人の命を救うのに貢献できるのでは」と考えて開発を引き受けたが「あんまり考えると作れなくなってしまうから」簡易な仕組み――通常の空調服の上に手術服を重ねるだけ――にした。ファンの部分と手術服の間に空気が通るよう、スペースを空ける専用スペーサーを新開発。武蔵小杉病院(神奈川県川崎市)で実際に利用してもらい、好評という。「学会でも発表すると聞いています」
同様に、スペーサーを付けた空調服の上にレインコートを着れば“簡易空調レインコート”ができあがるなど、応用次第でさまざまな上着と空調服を組み合わせることができる。
温暖化防止に「空調服社会実現へ」
株式会社空調服の昨年の年商は約2億円。利益はほとんど出ていない。今年の年商は3億5000万円を想定しており、やっと利益も出そうという。
空調服のデザインラインアップは毎年増やしており、さまざまな分野から「専用空調服を作ってくれないか」という相談も受ける。ただ、従業員10人の小さな同社ではすべてのニーズに対応することは難しいため、手術用など社会貢献につながるものを除けば、断ることも少なくない。
今後も工場への納入をメイン事業にし、個人向けには楽天市場で販売していくが、自前でのラインアップ拡大は積極的には行わない。代わりに、制服などを作っている他社への技術提供を積極的に行っていく。「空調ベッド」などに利用している、風を通すための「スーパースペーサー」の他社への拡販も積極展開する計画だ(関連記事参照)。
「“生理クーラー”を使うことでエアコンなしで快適に過ごせるようにし、地球温暖化防止に貢献したい」――空調服の目的は、開発当初から変わらない。環境関連のNPOと協力し、環境対策として空調服利用を産官学で推進していくプロジェクトを秋に立ち上げるべく準備中だ。
市ヶ谷社長は、地球温暖化を防ぐ仕組みを常に考えているという。例えば、屋根などを白くすることで地球表面の太陽光の反射率を少しでも上げ、光を宇宙に放出し、地球の温度を下げる――などだ。温暖化防止に向けた「空調服社会の実現」へ。株式会社空調服は、全社を挙げて環境問題に取り組んでいく。
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