小寺信良の現象試考
情報教育は実際どうなっているのか(2/3 ページ)
的確な対応が求められる先生
現在中学校の学習指導要領では、技術の教科に「情報とコンピュータ」という項目があり、情報リテラシーについて教える単元が入っている。しかし現場でそれをどういう形でやるかというのは、技術担当教師の裁量に任されている。
この点では、問題点が2つある。まず1つは、すでに子供の情報の中心は携帯電話であるのに、教える主体が「パソコン」であることだ。これはもちろん、教科書ではネットワーク情報機器として携帯電話を想定していないということも原因だが、何よりも先生がパソコンのほうが分かるので、そっちを教えたがる傾向があるという点は、今後の課題となるだろう。
もう1つの問題は、学校には技術や情報の先生がたいてい1人しかおらず、複数の先生間で授業ノウハウや学習教材といった情報交換ができず、孤立しているという点だ。情報教育の責任ばかりが年々大きくなる割には、授業の単元数は増えないので、先生も増えない。
また技術や情報専門の先生を置けない学校も多く、地方に行くほど、他の教科と兼任しなければならなくなるという事情がある。これもまた、情報教育に関しての教材作成などの時間が限られていくため、ますます手薄になるというスパイラルを産んでいる。
その一方で、高校の情報の教科書にもいろいろ問題があることが分かってきた。一番の問題は、検定から使用開始までのタイムラグである。今手元にある高校の「情報A」の教科書は今年から使用するものであるが、検定を受けたのが4年前である。別の出版社の少し新しめのものでも、2年前だ。制作時期から逆算すれば、今年使う教科書は、最悪の場合5~6年前の事情で書かれたもの、ということになる。
数学や国語などは、年々新しく事情が変わっていくようなものではないため、それぐらいのタイムラグは関係ないかもしれないが、こと情報に関しては到底現状に追いつくことはできない。教科書は、モラルという部分での方向性は示すことはできるかもしれないが、「今の現状」を期待するのは無理だ。
さらに情報の教科書は、実は調べていくとかなり根の深い問題があることが分かった。最初に「情報」の授業が始まったのが平成15年だが、当時商業高校や商業科が減少していくなかで、ワープロ検定やパソコン検定対策がこの「情報」に盛り込まれた。したがって初期に情報の教員となったのは、商業科の先生が多かった。
しかし平成19年には教科としての「情報」の内容が大きく変わり、現在のようなネットワークやマルチメディア活用といった方向になった。この新しい教科書が、「新版 情報」という名前で出ている。しかしもともと商業科の先生では、この「新版 情報」を教えるのは難しい。しかも現在はまだ、旧版の「情報」の教科書も使われており、学年によって新版旧版両方の対応が求められているところもある。ちゃんと「情報リテラシー」を教えられる先生も時間も、実はそれほど多くないという実情が浮かび上がってくる。
さらにこの問題は、4年後に中学校に降りてくる。平成24年度から中学で施行される学習指導要領では、これまで高校の情報の授業で行なってきた情報モラルを、中学の「技術・家庭」に降ろすことが決まっているのだ。高校では、情報モラルに関しては中学で履修済みとして、復習程度の軽い扱いになるか、場合によっては扱わなくなるだろう。
技術・家庭は、ただでさえ扱う分野が相当に広い。衣食住の問題に加えて、材料加工やエネルギー問題、そして情報モラルやデジタル化の基本概念、さらに知財保護まで教えなければならない。1人の先生が教えられる限界を超えているのではないかとすら思う。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
メルカリ、梨の転売疑惑に「盗品の出品は確認されず」 誹謗中傷には利用制限も
-
2
Anthropic、「Claude Opus 5」公開 Fable 5に迫る性能を半額で――サイバー安全策は緩和、拒否時は自動フォールバックも
-
3
検索結果に「詐欺ではありません」と表示させる詐欺手口、警視庁が注意喚起 AI要約も餌食に
-
4
「iPhone高騰」はこれからも続く? 中国CXMTに近づくApple、メモリ競合へのけん制が不発に終わりそうなワケ【後編】
-
5
「ニューロマンサー」実写ドラマ、Apple TV+で2027年1月配信開始へ
-
6
「こんなのに追われたら……」急斜面もやすやす爆走、中国製の車輪付き四足ロボのデモ動画が話題 最高時速20km超
-
7
海外の新作バカゲー「電車アタック」にマンガ家が感心した理由 ブッ飛んだ内容と完成度の高さ、そして“日本”
-
8
「めっちゃカメレオン」公式Discord乗っ取り 担当者PCがマルウェア感染、管理者が全員BANに 現在は復旧
-
9
暑さ対策が熱い! 「猛暑対策展」で感じた、転んでもただでは起き上がらない日本人のエネルギー
-
10
スーパーに並んだ「ごちゃごちゃ生成AIポップ」が物議 “看板王”こと、きぬた歯科院長「これはアリ」
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR