「お前らの作品は所詮コピーだ」――富野由悠季さん、プロ論を語る(5/5 ページ)
なぜか。中学ぐらいではっきり分かったんです。SF好きのヤツは物語を作ることを知らない。演劇というものに興味を持ってないだけに、人を動かして劇を作っていくという一番根本的な作業を知らないのではないかな、ということに気がついたんです。
高1ぐらいで見た「禁断の惑星」という映画も、タイトルで「ぞくぞくっとしたものを見られるのかな」と期待したのに何が禁断なのか全然分からないことにまず愕然(がくぜん)とした。
もっと愕然としたのは、SFってもっと画面が広くないといけないのに「セットで撮影しています」というカメラワーク。死ぬほどつまらなかった。でもお金を払ったので我慢して最後まで見たんです。
高1にもなっていると別の見方ができるようになっていて、「この役者は演出家の指示に従ってなくて、自分で芝居してるな」というのを見つけることができたんです。「役者ってこういうことをやるんだ」とか「映画って注意深く見るとそういう目線がある」と分かって。
ロケットや宇宙人、ロボットが出てくればいいというだけじゃないという見方が分かってきた時、「SF映画が好きだって言うヤツの映画は絶対見ない」と確定したわけ。だってここ50、60年で作られたSF映画の名作は「2001年宇宙の旅」でしょう。あれはSFマニアの監督が作ったものではないんです。それを悔しいと思え! というわけです。
単一色で攻めた時はマニアに好かれるものは作れるかもしれないが、ジブリがやっているように、異能の組み合わせが当然大事なこと。ハーフのほうが美人じゃん、と。全部が全部そうじゃないですよ。
そういうところにクリエイティブな作業があるんじゃないかというときに、単一思考が一番危険なんじゃないかと思います。ここにいるみなさん方の立場は単一なんです。そこに違うものを入れていくということを、かなり恣意的にやらないといけない。
志は高く持て
僕の場合はテレビアニメは嫌で嫌で仕方なかったんです。だって動かないんだもん。それで映画を作れったって無理だよね。
それでも、止め絵のカットを並べていくことで、映画の論理もあるということが分かったんです。映画論で言うモンタージュというものの意味が分かりました。この止めの絵が何秒あったら映画的にいいか悪いか本当に分かるようになったんです。
そういうことを理解するために、高みも知る必要もあるんだけれど、一番最低限の技術論を知る必要がある。異能のもう1つの別の言い方は、志を高く持てと。自分は今ここにしかいない。残りのリーチをなんとしてもはい上ってみせるという覚悟が必要。覚悟というのは気合いではなく、毎日毎日階段を上っていくという作業でしかない。これが原理原則です。
コミュニケーションと原理原則
僕は自分流の言葉づかいしかできなくて本当に申しわけないと思っています。
まとめます。第1がコミュニケーション、第2が原理原則で考える。原理原則というのは、技術論もそうですし、自分自身の悟性や趣味のあり方、根はどこにあったのかを原理原則的に考えるということ。子どもの時の自分がどうだったかを反芻(はんすう)するということも含んでいます。
その上で重要なのは、オーガナイザー、スタジオワークです。経営者、出資者の問題や、その人たちがアーティスティックな作業にどう対応するかということにもお気をつけいただきたいなということです。今回の金融危機でも分かる通り、必ずしも流行のものが正義ではないということです。
スタジオワークを嫌わずに、スタジオで仕事することをおっくうがらずに進めていただきたいというふうに思います。
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