麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」
日本型スマートテレビ“Hybridcast”が実現すること、しないこと(3/3 ページ)
麻倉氏:スーパーハイビジョンに関しては、これまで“没入感”や“臨場感”など、大画面近接視聴がメインに提案されていましたが、Hybridcastとの組み合わせは高精細画面の活用として面白いですね。例えば、従来のハイビジョンテレビでネットワーク機能を実行すると、テレビ視聴画面が小さくなったり、画面の一部が隠されて視聴しにくい状態になったりします。しかし、フルHDの16倍という解像度を持つ8Kなら、1/16サイズの子画面を表示してもフルHD並みにキレイ……というか“フルHDそのもの”ですから、画質や情報量で不足することはありません。
麻倉氏:展示では、琵琶湖マラソンの実況中継を例に、マラソンルートの地図情報や別アングルのカメラ映像を複数流すといった使い方を提案しました。別アングルの映像は、IP通信で取得したもの。前編でHEVCのフルHDへの応用について触れましたが、テレビにHEVCデコーダーが標準的に搭載されたら、AVCの半分の伝送容量でフルHD映像を持ってこられるため(IP通信)、複数のアングル映像を同時に映すといったことも現実的になると思います。
臨場感のある映像を楽しむのも魅力ですが、多彩な情報を同時に得ることが可能です。Hybridcastは、スーパーハイビジョンの新しい使い方を提案する良いアイデアになると思います。
――そのほかに注目の展示があれば教えてください
麻倉氏:スーパーハイビジョン、Hybridcastに続く3つめのトレンドとして、番組の映像に新しい表現が出てくることを挙げたいと思います。例えば多視点ロボットカメラシステムは、9台のロボットカメラが1つの被写体に向かうように強調操作を行い、スポーツのゴールシーンなど決定的瞬間を“時間と止めた状態で視点が被写体の周囲を回り込む”映像表現が行えます。映画「マトリックス」で主人公が弾丸を避けるシーンを思い浮かべると分かりやすいですね。NHKでは「ぐるっとビジョン」と名付けています。
麻倉氏:マトリックスでは、一眼レフカメラを俳優の周囲360度に配置して連続した静止画を撮影しました。かなり大がかりな仕掛けですが、それがいよいよ番組制作にも入ってきます。これは将来が楽しみです。
麻倉氏:そのほか、リニアPCMを送信することで遅延を抑えるデジタルマイクなど、新しい切り口の番組制作ツールがいくつも展示されていました。4Kや8Kで単に解像度や画質が向上するだけでなく、番組の中身も興味深い方向へ進化していきます。価値のある映像を放送していく方向に向かっていくのではないでしょうか。
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