2014 International CES
規格を超える4K画質へ、新生「ドルビービジョン」とは?
米Dolby Laboratoriesは1月8日、米ラスベガスで開催中の「2014 International CES」で新技術「DolbyVision」(ドルビービジョン)を発表した。「放送や動画配信における映像の輝度とコントラスト比を向上させ、色の表現力をも高める」というが、どのような仕組みなのか。
ドルビービジョンといえば、2007年に登場した同名のLEDバックライト制御技術(→関連記事)が思い浮かぶが、今回は全くの別物だ。同社によると、HD/Ultra HD(4K)の映像信号を対象とし、従来とは異なる2つのアプローチで画質向上を図ったという。
1つめは輝度情報。一般に、撮影用のカメラは被写体が本来持つ色彩や輝度を保持して録画できるが、テレビ側の白トビ(白ツブレ)を防ぐためにハイライト領域を80%以上も圧縮した映像信号を送出しているのが実情だ。また編集や符号化なども経て、カメラで撮影した情報の多くが、視聴者に届くまでに失われてしまう。ドルビーでは、「現在のテレビや映画のカラーグレーディング基準が旧式の技術に基づいているため」と指摘する。
一方、近年はLEDバックライトの性能アップを背景に、液晶テレビでも従来より高い輝度を画面上で再現しようとする動きが出てきた。ピーク輝度が高くなれば、例えば“金属の光沢感”などハイライト部分の階調を正確に再現し、制作者の意図もより忠実に再現できるようになる。
ドルビービジョンでは、映像信号に最大輝度などを示すメタデータを付加し、対応テレビが参照することでピーク輝度とコントラストに優れた映像を表示できるという。また、テレビによって再現できる明るさには差が生じるため、「テレビに合わせて最高輝度を落とすギミック」も盛り込んだ。
もう1つの注目は、動画コーデックの部分だ。ドルビービジョンが提案するのは、H.264(AVC)およびH.265(HEVC)の符号化はそのままで、前述のメタデータなど情報を付加する方式だ。このためストリーム自体は後方互換性を確保でき、ドルビービジョンに対応していないテレビでも普通に表示できる。もちろんストリームの容量は増えてしまうが、ベースに対して2~3割のアップに抑えられる見通しだという。
その映像は、スペック的にも既存の規格を凌駕する。例えば映像のビット深度は12bitを想定しており、UltraHD(4K/8K)の国際規格「BT.2020」の上限と同じ。輝度/色差信号は4:2:2となり、例えばNexTV-Fが検討している国内の次世代4K/8K放送サービスやH.265(HEVC)のメインプロファイルを上回る(いずれも4:2:0)。色域に関しては、それ自体はBT.2020と同じでも「カラーボリュームが異なるために見た目の印象は大きく変わる」(同社)という。
「例えば“明るい青空”を表現したいとき、従来は輝度不足を補うために青を白に寄せて(=水色のようにして)表現することがあった。しかしドルビービジョンであれば、青を青のまま、“明るい青”を表現できる」。
制作現場から変える
もちろん、こうした画質向上を実現するにはエンド・ツー・エンドの対応が求められる。対応するテレビの開発に加え、制作側、配信側が対応しなければならない。例えばコンテンツ制作者は、ドルビービジョン専用のマスタリングおよびカラーグレーディングの作業が必要となり、マスタリングルームには対応するモニターなどの機材もそろえなければならず、ハードルはかなり高い。
しかしドルビーは、「映像の制作環境から変えていく」と意気込む。「2014 International CES」での発表時には、すでにハリウッドの著名ディレクターや主要スタジオの上層部から支持を表明。米Dolbyの放送イメージング担当シニアディレクター、ローランド・ヴライク氏によると、「制作者のコミュニティーは、色彩パレットとコントラストが拡張されたことで、視聴者に今まで気づかれなかったような細部まで見てもらえることに期待を膨らませている」という。
またMicrosoftの「Xbox Video」や「Amazonインスタント・ビデオ」「Netflix」「VUDU」といった配信事業者も支持を表明。放送の規格や仕様を変更することは難しいが、オンライン動画配信サービスなら対応テレビやSTBとともに一般の家庭にも届けやすい。今後拡大が予想される4K対応のプレミアム動画配信にも有望だ。
テレビメーカーも動き出した。CESの展示会場では、シャープとTCLがドルビービジョン対応のテレビ試作機を展示中。「ドルビービジョンは、飛躍的な画質向上と高精細画面との素晴らしい組み合わせにより、UHD(4K)の普及に貢献するだろう」とTCLの副社長兼TCLマルチメディアCEOのハオ・E氏はコメントしている。なお、米国では2014年の後半にもドルビービジョン対応のテレビが店頭で購入可能になる見通しだ。
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