滝田勝紀の「白物家電、スゴイ技術」
BRAUNが「家電デザインのルーツ」といわれる理由(2/4 ページ)
理由02――革新性
家電デザインのルーツと呼ばれる2つ目の理由として重要なのが、その後の歴史から数多く垣間見える革新性、つまりイノベーションの数々だ。ブラウンはその時代、その時代で新しい技術が得られると、すぐにその技術を活用して新製品を作っていった。
例えば、前述の「SK4」は、当時珍しい素材だったアクリル素材を初めて使い、天面から内側の機構を見せるという点が斬新だった。
また、「SK4」と並ぶディーター・ラムスのデザインチームが生み出したHi-Fiオーディオは、電源ボタンなど重要なボタンだけ緑色にするなど他のボタンと差別化していた。説明書を読まなくても、それが重要なボタンであることが分かり、さらにボタンを押す順番なども自然とガイドしてくれる配置になっている。こうしたシステムを考案したこともブラウンのイノベーションだ。
さらに1960年代以降の彼らの製品から、そんなイノベーションの例をいくつか挙げてみよう。
1972年に出されたコーヒーマシーンの「KF 20」は、その斬新な塗装自体がイノベーションだった。それまでの塗装技術が未熟で、上記のHi-Fiオーディオで使われていた緑色などはややくすんでいる。しかし、徐々に技術が進むと、ブラウンはいち早く目をつけ、赤、オレンジ、黄色、緑、白といった斬新なカラーリングのコーヒーマシーンを生み出す。
同じ1972年にはシンプルでミニマムデザインのスクイーザー「MPZ-2」を発表した。実は現在でも市場にあるロングセラー製品で、スクイーザーでしぼると、そのまま下の口からレモンなどの汁が注がれる。通常は絞ったうえに、それを別の容器などに自分で注がないといけないが、これは絞るだけで、そのまま自然と注がれる。さらに下の口の先端をちょっと上げるだけで汁がたれてこない。こうした細かい配慮もイノベーションの1つといえるだろう。
今となってはシンプルすぎる1978年発表のドライヤー「PGC 1000」。当時ドライヤーというものは美容室で使われるもので、まだ一般家庭には普及していなかったが、ブラウンが家庭向けドライヤーを開発したことで状況は変わる。通常、美容師が人の頭を乾かす場合、ドライヤーの“取って”は本体よりも後方に傾いているものを使っていたが、家庭で自分に風をあてる場合には非常に使いにくい。というわけで、ドライヤーの取手の角度を前方に傾けたことがイノベーションとなった。これによってドライヤーが家庭に普及したといっても過言ではない。
1962年発表のシェーバーは、外観の素材の組み合わせがイノベーション。ブラックのプラスチックと光沢のあるメタリック仕上げという、新たなブラウンデザインの始まりとなった。この配色自体が革新的で、後にブラウンの代名詞に。
これらイノベーションを巻き起こすアイテムは、ディーター・ラムスの口癖である「レス・バット・ベター(より少なく、しかしより良く)」を表している好例である。それらは無駄や華飾のないミニマルで機能的なデザインで、問題の本質を凝視し、かつ解決策を実践している思想が具現化されたアイテムたちであり、その思想自体がイノベーションの礎と呼んでも過言ではない。しかもそれらはすべて普遍的、つまり時を感じさせないタイムレスなデザイン思想とも重なっていることに気づくはずだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
滝田勝紀の「白物家電、スゴイ技術」
モノ雑誌で白物家電を約10年担当し、メーカーからの信頼も厚いフリーランスライター、滝田勝紀(たきたまさき)氏が最新家電のスゴイ技術を紹介するインタビュー連載。
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
なぜ酒蔵の許諾なしに? 「VTuberコラボ日本酒」騒動、主催者が経緯説明 仲介者による調整で「準備進んでいると認識」
-
2
「食事量は1日1200kcal以下、でも肥満」な人を14日間追跡調査 痩せない理由は……米コロンビア大などの研究
-
3
かっぱ寿司「配布前のコラボグッズ、フリマで買わないで」 プリキュアコラボ発表日に注意喚起
-
4
本物そっくり“AI生成レシート“が経費精算の脅威に マネフォ「自力で見破るのは難しい」 企業はどう備える?
-
5
「ペンギンを返して」→「3匹全部採用して」 批判殺到のSuica新キャラ、ファンアートが空気を変えた? SNSの声
-
6
「菜の花がおかしい」――イラストレーター制作うたうマラソン大会ポスターに指摘相次ぐ 事務局がAI使用明かす【訂正あり】
-
7
早すぎる 「めっちゃカメレオン」Switch 2版、即日10万本突破
-
8
農水省の“クソダサ”ポスター話題 「AIよりよっぽど良い」の声も 担当者に狙いを聞いた
-
9
幻の「ちいかわ」コラボ第3弾皿、捨てちゃうの? くら寿司に聞いてみた
-
10
「ランジェリーパープルじゃない」「買おうと思ってたのに」 iPhone 18 Pro/Pro Maxの色に落胆の声
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR