なぜ今、「転売NO」と訴えたのか――チケット高額転売問題、音楽業界の“本音”(3/5 ページ)
需給に基づいた相場観から見れば確かに、チケット価格は著しく安いかもしれない。ただ、値付けもアーティストからのメッセージであり、一般の経済原理と違う。中高生でも頑張ってお小遣いを貯めれば行ける価格に設定しており、「価格を上げたら、お金持ちでない人が見られなくなってしまう」という思いをアーティストは持っているし、最前列から最後列まで、どの席でも等しく楽しんでもらえるよう努力している。
前方の席のチケットを高額するなど価格差をつけると、お金がない学生などからは、前方の席で見られたかもしれないチャンスを奪うことになるし、「金もうけに走るのか」とアーティストのイメージが傷つく恐れもある。前方と後方の席だけ売れ、中間の席が余るなど、席による売れ行きのばらつきが出るリスクを恐れる関係者も一部にいることも確かだ。
米国ではチケット価格に差 日本ではなぜ一律?
――米国のアーティストのライブは、前方と後方の席で価格差が5~10倍あることはざらだ。チケット販売サイト「Ticketmaster」では、チケットの1次購入者が、利益を上乗せしてほかのユーザーにチケットを転売できる仕組みも導入されている。米国でできることがなぜ、日本ではできないのか。
米国とは業界構造が違う。米国の市場はLive Nation(マドンナも契約する世界最大のイベントプロモーション会社)と、その傘下のTicketmasterのほぼ寡占状態。そもそもLive Nation自体が大資本だ。潤沢な資本を投下して大規模で高度なシステムを開発し、利益を最大化しようとしている。
日本の音楽業界は、米国と比べると資本力が小さい。CD販売とライブを両方行っているエイベックスやソニーグループは好調だが、多くのレコード会社は経営が厳しい。アーティストは個人事務所に所属していることが多く、マネジメントからライブ、CD販売、チケット販売まですべて手がける企業はない。
――米国の音楽業界は大企業が支配し、市場原理がアーティストにまで浸透しているが、日本音楽業界はそうではなく、アーティストの「誰もが平等にライブを楽しんでほしい」という“思い”も強い。アーティストの思いを尊重すると、市場原理のままにチケット価格を上げることは難しいということか。
そういう面はある。
――とはいえ現実問題として、人気のライブチケットを手に入れるのは困難で、どうしても行きたければ、転売サイトに頼らざるを得ない。アーティストは、一般の人がチケット入手にどれほど苦労しているか実感がないため、チケット価格弾力化の必要性も理解しづらいのでは。
頭では理解していても、昔からのやり方から離れられないアーティストも多いと感じる。
――人気のアーティストは、ライブに行きたい人の数に対して売り出されるチケットが少なすぎるため、需給がひっ迫して価格が高騰する。公演数を増やすことで、需要と供給のバランスが取れないか。
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