名刺管理のSansan、「ほぼ手作業」だったデータ入力はどう進化した? CTOが語った軌跡(2/2 ページ)
機能を改善も、手作業による処理が限界に
こうして07年にリリースしたSansanは軌道に乗り、09年には使い勝手をさらに改善。名刺情報を1枚ずつ保存する方式を廃し、人にひもづける形で複数の名刺情報を統合する「名寄せ」機能に対応した。
登録済みの人物の名刺を別の担当者が入手・登録した場合、システム内には2つのデータが存在する。これらを1人にひもづく情報として集約しつつ、肩書や部署が異なる際に、どちらが新しいのかを判定する――というのが名寄せの特徴だ。
「この後Sansanによく似たサービスが市場に出てきたが、データ管理の中心にあったのは名刺で、人物ではなかった。結果的に、この判断が競合製品との差別化につながった」
独自の武器を得たSansanは、12年には導入企業が500社に達し、社員数も増えた。だがここで、再び課題に直面する。ユーザー増によってスキャンする名刺の量がかなり増えたため、オペレーターの手作業による処理に限界が来たのだ。
Sansanでは当時、約100人のオペレーターがチェックに当たっていたが、ユーザー企業と名刺情報は増え続ける一方だった。その中で正確性を保ち続けるには、人数を増やすのではなく、業務プロセスを見直す必要があると経営陣は判断した。だが、チェック業務の全てを機械に委ねると、ミスを見落とす危険性が残る。最後の砦としてオペレーターを起用することは譲れなかった。
クラウド×画像認識で効率化
そこでSansanが活用したのが画像認識だ。同社のR&D部門は「名刺上の文字列を20個ほどの単語に分けて読み取り、どれが社名・個人名・アドレスなのかを判別する」という技術を開発。入力の一部も自動化したため、オペレーターの業務は最終的なチェックと入力に減り、短期間で効率よくデータベースに納品できるようになった。
19年現在、この技術はさらに進化している。万が一のミスを防ぐため、「人が見落としやすい入力ミス」をAIに学習させ、オペレーターの入力後に再チェックする仕様にしたのだ。かつての“3人目”に似た役割をAIに代替させ、ミスが疑われる場合は人に修正させることで、正確性をさらに100%に近づけている。
各技術の裏側では、Amazon Web Servicesやオープンソースのクラウドツールを使っている。具体的には、オープンソースのデータ収集ツール「fluentd」がバラバラの文字データを取得し、クラウドストレージ「Amazon S3」に集約。データの加工・抽出ツール「AWS Glue」で氏名やメールアドレスなどを検出し、データ分析基盤「Amazon Redshift」でチェックしている。
一連のトランザクションは、クラウド型のワークフロー管理アプリ「Amazon Simple Workflow Service」(SWF)が制御。顧客向けのデータベースもオープンソースのRDBMSから「Amazon Aurora」に移行し、インフラコストを3分の1に低減した。
大きなビジョンと、課題解決の両立が必要
こうしてデータの入力・処理を効率化したSansanは、ノウハウを生かして12年にEightをリリース。19年までの8年間で累計230万人が名刺情報を登録している。
昨今は、名刺交換をした人の勤務先が異動情報やプレスリリースなどを発表した際、内容をユーザーに自動配信する機能なども実装。ユーザーが商談などを有利に運べるよう改善を続けている。将来的には「こんな人に会いたいのでは?」と、ユーザーに適したビジネスパーソンをお勧めする機能の導入も視野に入れている。
先進的な機能を相次いで導入しつつも、しばらくは人の手によるチェックは継続する。完全自動化を目指して努力を続けているが、実現はまだ先になりそうだ。
「中には、『まずは市場に投入して声を聴きたい』という意見もある。だが、0.1%の精度が欠けることで、ユーザーの課題を解決できないのであれば、出す意味はまったくない」と藤倉CTOは正確性へのこだわりを強調し、セッションを締めくくった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
GMO不正アクセス、犯人側は「27日に顧客のPC攻撃」予告 GMOが端末回収、ホワイトハッカーが解析中
-
2
「楽天トラベル」に不正アクセス 顧客情報最大約260万件など流出か 予約者約3.6万件のクレカ情報も
-
3
GMO熊谷代表「社内ホワイトハッカーが事前に指摘」も対策遅れ、国に「能動的サイバー防御」要請 「責任転嫁では」SNSで批判も
-
4
「年齢は合ってますが、人間ではありません」 6歳の飼い猫に届いた“進研ゼミの案内” なぜ届いたのかベネッセに聞いた
-
5
Google、プライバシーポリシーに「Gmail」「Googleフォト」のデータを広告に使う例外を追加 回避方法は
-
6
「5年でバッテリーが使い物にならなくなる」は本当か テスラ「モデル3」5年目点検で分かったこと
-
7
Apple、「iPad mini」を大幅刷新 8.5インチOLEDとA20 Pro搭載、防水にも対応 11万9800円から
-
8
ジョーシンへの不正アクセス、最大623万件漏えいか 運転免許証2件・マイナカード1件なども
-
9
グッスマに不正アクセス、公式EC閉鎖 会員の住所や注文履歴など漏えいか 再開目処立たず
-
10
野村総研、サイバー攻撃時の「能動的なシステム停止」を支援する新サービス
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR