動画の世紀
香港で目撃した創造的デモとYouTube 過激なアカウントは取り締まれるか(1/3 ページ)
香港・九龍半島と香港島に挟まれた場所に位置するビクトリア・ハーバー。「百万ドルの夜景」として知られ、毎日午後8時からおよそ10分間、ビルのライトアップやサーチライトを組み合わせた光のショー「シンフォニー・オブ・ライツ」が行われます。今年8月7日、私がデモ隊に遭遇したのは、そのショーを見た帰りのことでした。
九龍半島側のウォーターフロントである尖沙咀(チムサーチョイ)地区に、香港太空館(香港スペース・ミュージアム)という施設があります。巨大な半球型のプラネタリウムが目印で、その周囲は開けた空間になっているのですが、そこに大勢の若者たちが集まろうとしていました。
香港に来たのは人工知能に関するカンファレンスに参加するためだったのですが、もちろん香港で逃亡犯条例の改正案(香港で逮捕された容疑者の中国大陸側への引き渡しを認めるという内容で、香港の民主的な体制が脅かされるのではないかと懸念されている)をめぐって大規模な抗議活動が発生していることは理解していて、彼らがデモ隊であることはすぐに分かりました。
ただ奇妙だったのは、多くの若者たちがレーザーポインターを持っていたこと。彼らはそのポインターで太空館の半球や、広場に生えている木をめがけてレーザーを放ち、何度もシュプレヒコールをあげていました。あとで各種報道を読んで分かったのですが、デモ隊が警察や機動隊の催涙弾に対抗するためにレーザーポインターを目くらましとして使うことが増えており、そのためにレーザーポインターを保持していた学生が「攻撃用武器の所持容疑」で逮捕されるという事件が8月6日に起きていたそうです。その抗議として、「レーザーポインターは武器になどならない(その証拠にビルや木に当てても燃えたりしない)」という行為を示すものだったというのです。
不謹慎を承知で言えば、無数のレーザーが飛び交う様子はなかなか美しく、平和的でデモとはいえ若者たちの顔にも笑顔がありました。広場では音楽も流され、レスリー・チャンの「モニカ」(吉川晃司のカバー)で大合唱が起きるなど、デモと知らなければフェスか何かかと勘違いしそうなほど。実際、この様子は動画を通じて拡散されたそうで、私がいる間にも若者の数はみるみる膨れ上がっていました。
一方で香港のデモと動画、特にYouTubeをめぐっては、不穏な動きが起きています。8月22日、YouTubeは公式ブログ上で、210のチャンネルを閉鎖したことを発表しました。理由は対象となったチャンネルが、「香港で行われている抗議活動に関する動画をアップロードする際、組織的な動きをしていることが確認された」ため。YouTubeは中国政府を名指ししていませんが、香港の抗議活動に関して、公的機関による情報操作を防ぐ狙いがあると見られています。
香港デモをめぐる中国政府のソーシャルメディア上の活動に関しては、Twitterも8月19日に、中国政府系とみられるアカウント936件を停止したと発表しています。YouTubeはこうした他社の動きと足並みを揃えるとしており、210のチャンネル閉鎖は、その姿勢を裏付けるものといえるでしょう。
デモ隊の側が映像を効果的に利用していることからも、政治活動における動画の力、特にインターネット時代におけるオンライン動画プラットフォームの影響力は明らかです。そもそも中国政府が関与していると見られるチャンネルが210も存在していたこと自体、その影響力を国家権力の側でも認めていることの証でしょう。政府のプロパガンダ行為を防止するという意味で、今回のYouTubeの取り組みは賛同すべきものと言えます。
ただ210のチャンネルをどう選別したか、また具体的にどのような点を問題視したのかは明らかにされていません。同じような対応が今後も問題なく続けられるのか、という点でも懸念が残ります。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
動画の世紀
20世紀は「映像の世紀」。現在が「動画の世紀」に突入しているのだとすれば、そこにどんな変化が起きているのか。「YouTubeの時代」訳者の小林啓倫氏が描きます。
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
メルカリ、梨の転売疑惑に「盗品の出品は確認されず」 誹謗中傷には利用制限も
-
2
「こんなのに追われたら……」急斜面もやすやす爆走、中国製の車輪付き四足ロボのデモ動画が話題 最高時速20km超
-
3
検索結果に「詐欺ではありません」と表示させる詐欺手口、警視庁が注意喚起 AI要約も餌食に
-
4
はてな、11億円流出の調査報告書を公開 偽警察、口外禁止、残業・休出200時間超、孤立……ほころびが連鎖
-
5
Z世代に聞く次の流行、「AIイラスト」が1位に 「Claude Code」も上位
-
6
東野圭吾さん死去、Xなどで追悼相次ぐ 「ガリレオ」など数々の人気作、エンジニアから転身
-
7
NVIDIAやMicrosoftなど30社超、オープンAIの防御ツール共同開発の「Open Secure AI Alliance」設立
-
8
「あ、その情報メモしたい!」を叶えるワイヤレスイヤフォン、Nothing「Ear (3a)」
-
9
有識者はGoogleやX、Meta、ドワンゴを名指しで批判……総務省、偽広告や誹謗中傷に発信・拡散前の対策求める
-
10
暑さ対策が熱い! 「猛暑対策展」で感じた、転んでもただでは起き上がらない日本人のエネルギー
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR