よくわかる人工知能の基礎知識
AIが瞬時に株取引、為替暴落の危険も 金融業界で進むAIの取り組み(2/5 ページ)
AIが瞬時に株取引、不正検知もお手のもの
一般的に、金融業界には銀行業・保険業・証券業などが含まれる。いずれも金銭的な価値の取引が行われる分野だ。例えば、銀行なら預金や融資、保険なら保険商品の販売や保険金の支払い、証券なら有価証券の売買や売買の仲介などを行っている。
こうした金融業界の中核にあるさまざまな「取引」をAIで進化させようと、各社が取り組んでいる。
取引の進化は、「高度化」「不正検知」という2つの方向性に大別できる。
まずは、高度化の例を考えたい。例えば、AIに株取引を任せたり、将来の株価を予測させ、より利益の出るような取引をさせたりといった具合だ。
高度化を目指すAI活用については、米ゴールドマン・サックスの事例がよく知られている。同社ではかつて、数百人のトレーダーが株式の売買に従事していたが、自動取引アルゴリズム採用後は、トレーダーは数人にまで激減した。その結果、現在では全社員の3分の1がエンジニアになっているという。
同様の取引自動化は業界全体で進んでおり、既に論点は「AIに取引を担当させるべきか」ではなく、「いかに他社より優れた取引アルゴリズムを構築するか」に移っている。
「そもそも取引をすべきかどうか」の判断をAIに任せ、取引を瞬時に低コストで済ませる取り組みもある。
例えばみずほ銀行は19年4月、国内メガバンク初の「法人融資へのAI活用」に踏み切ると発表(PDF)。対象は中小企業で、口座への入出金履歴やネット販売の取引履歴などをAIに分析させ、融資の可否を判断させるというものだ。これによりみずほ銀行は、従来1週間程度掛かっていた審査期間を、最短で2日間に短縮できるとしている。
不正取引の検知にAIを活用する例もある。不正取引は金融機関にとって直接的なダメージをもたらすものであり、多くの企業がこの問題に取り組んできた。
例えば、これまで日本国内だけで使われてきたクレジットカードがあったとして、それが突然海外で使われた場合に、何らかの不正が発生しているのではないかと判断する――といった具合だ。「過去の大量データに基づいて、取引の異常がないかどうか検知する」というアプローチは、現在のAIの主力である機械学習とも親和性が高い。
不正送金検知システムについては、住信SBIネット銀行とNECが開発に着手している。これは、AIを活用して不正送金の疑いが高い取引を自動検知するというもの。既知の不正送金を全て検知する実験に成功し、同行で全面的に導入することが決定した。AIを不正送金の防止に活用する例は国内初で、同行によると行員の作業量を9割以上削減できるとしている。
また住信SBIネット銀行は19年10月、AIを住宅ローン審査に応用し、ローンの不正利用を検知するアルゴリズムを導入したと発表した。こうした領域の拡大は、今後もさらに続くだろう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
よくわかる人工知能の基礎知識
いまや毎日のようにAI(人工知能)の話題が飛び交っている。しかし、どれほどの人がAIについて正しく理解し、他人に説明できるほどの知識を持っているだろうか。本連載では「AIとは何か」といった根本的な問いから最新のAI活用事例まで、主にビジネスパーソン向けに“いまさら聞けないAIに関する話”を解説していく。
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
なぜ酒蔵の許諾なしに? 「VTuberコラボ日本酒」騒動、主催者が経緯説明 仲介者による調整で「準備進んでいると認識」
-
2
「食事量は1日1200kcal以下、でも肥満」な人を14日間追跡調査 痩せない理由は……米コロンビア大などの研究
-
3
本物そっくり“AI生成レシート“が経費精算の脅威に マネフォ「自力で見破るのは難しい」 企業はどう備える?
-
4
かっぱ寿司「配布前のコラボグッズ、フリマで買わないで」 プリキュアコラボ発表日に注意喚起
-
5
「菜の花がおかしい」――イラストレーター制作うたうマラソン大会ポスターに指摘相次ぐ 事務局がAI使用明かす【訂正あり】
-
6
「ペンギンを返して」→「3匹全部採用して」 批判殺到のSuica新キャラ、ファンアートが空気を変えた? SNSの声
-
7
藤井風のリサイタル、公式サイトがインターネット老人会すぎると話題 公民館のチラシみたいだけど東京ドーム開催
-
8
「ランジェリーパープルじゃない」「買おうと思ってたのに」 iPhone 18 Pro/Pro Maxの色に落胆の声
-
9
「iPhone Duo」純正ケース話題、「面白いけど高い」……1万4800円と2万4800円
-
10
デジタル庁に不正アクセス、個人情報24.6万件漏えいか 各府省庁の職員情報など
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR