「政府より早く配るぞ!」 町工場を生かした「墨田区マスクプロジェクト」
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の広がりで世界的にマスクが品薄となる中、古くからメリヤス業が盛んな東京・墨田区である試みが始まった。地元企業の支援を兼ね、町会が布マスクをまとめて発注、各世帯に配布するという。「墨田マスクプロジェクト」を企画した墨田区議会議員の一人、佐藤あつしさんに話を聞いた。
メリヤス(莫大小)は、ニットなど編み物の古い呼び方だ。墨田区は明治時代に深川(江東区)からメリヤス工場が移転し、鐘淵紡績(現在のカネボウ)の設立などもあって繊維業が盛んになった。生産拠点の多くが海外に移った現在も、両国から錦糸町にかけての地域には「莫大小」「メリヤス」の看板を掲げる企業や町工場が数多く存在する。
稼働率の落ちていた工場に発注
マスクの品不足が深刻化していた3月、インバウンド需要の急減と新型コロナウイルスの影響で区内のメリヤス業者は工場の稼働率が落ちていた。一方、区民と接する中で、障がい者の自主生産品を扱う店舗がなくなったことを知った佐藤さんは、メリヤス業者の支援を兼ねたマスク販売を思い付く。
地元企業にまとまった数の布マスクを発注し、区役所の空きスペースに販売店を設ける。企業は在庫リスクなしで生産でき、区民にはマスクを供給。販売員の再雇用もできる“一石三鳥”のアイデアだった。
同僚区議の坂井ひであきさん、藤崎こうきさんと共に、支援者の知り合いなど「友達の友達を紹介してもらう作戦」で有志を募った。すると、3社のメリヤス業者が名乗りを上げた。
そうした中、区の北西部に位置する「京島三丁目北町会」が、町会の防災備蓄予算を使って布マスク400枚を発注することを決めた。「約400世帯に1枚ずつ配布するそうです。町会長さんは、『政府より早く配るぞ!』と言っていましたよ」(佐藤さん)
マスクを製造するのは、1929年創業の小倉メリヤス製作所。綿とポリエステルを使った布マスクを手縫いで作っているという。価格は1枚550円と不織布の使い捨てマスクに比べると高価だが、洗濯して繰り返し使える。性能面では不織布マスクに及ばないかもしれないが、口から飛沫拡散を抑え、子ども達が口や鼻に触れることも避けられる。今はそれが大事だ。
当初考えていた販売店については、手続きにかかる時間や衛生面を考慮していったん棚上げし、今後は必要な場所に素早く供給する形を検討していくという。
「現在、区では学校や保育園など、マスクが必要な場所についてヒアリングの作業を進めています。地元で作ったマスクを必要な人たちに届けられると思います」
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