RISCの生い立ちからRISC-Vまでの遠い道のり
ARMの誕生 ~Sinclair、BBCからNewton、Symbianへ~(3/4 ページ)
そしてNewtonへ
このActive Bookは、Acorn創業者だったハウザー氏が創業した新しい会社である。ハウザー氏はOlivettiによる買収後に同社を去り、Active Book Companyという電子書籍(というか、電子書籍リーダーというのが正確か)の会社を立ち上げた。要するにKindleの超御先祖様であるが、このために省電力なCPUが必要になった訳だ。ここでARMプロセッサの目的が、「RISCを生かして高性能」から「RISCで得られる高性能を生かし、同じ性能をより低消費電力で」に切り替わった瞬間でもある。
Active Book Companyはその後AT&Tに買収され、AT&TのEO Personal Communicatorにつながることになる。あいにくとそのEOは、AT&Tが自社開発していたHobbitという独自のCISCプロセッサを使うことになったため、結果としてスタティック版ARM2はお蔵入りとなったが、これに目を付けたのがApple Computer(当時)のジョン・スカリーCEOである。もっと正確に言えば、スカリー氏が新しい形の情報端末のアイデアを出し、これを受けて当時Appleのラリー・テスラー氏がハウザー氏に渡りをつけ、ハウザー氏がまずスタティック版ARM2を紹介した。
ただこれでは、当時Appleが想定していた未来のNewtonの実現にはいろいろ不足だということで、ここからAppleとAcorn、VLSI Technologyの3社による新しいCPUの共同開発プロジェクトがスタートすることになる。
ところが、開発が進むにつれ、Acornが単独企業ではなくOlivettiの子会社であることが、いろいろと障害になりつつあった。そこでハウザー氏がいろいろと水面下で立ち回り、1990年にAcornのプロセッサ開発部門(わずか12人のエンジニア)がスピンアウトする形で独立企業になった。
もともとAcornはARMという名前でチップを製造していた訳だが、これはAcorn RISC Machineの略だった。ただスピンアウトにあたって、これをAdvanced RISC Machineに改称し、社名もこれを利用することになった。
同社はRISCベースのプロセッサのIP(知的財産)を提供、これをVLSI Technologyが製造し、Appleがこれを組み込むという分業体制が確立した訳だ。初代CEOはロビン・サクスビー卿である。この分業体制で、ARMがNewton向けに開発したのが、ARM6である(アーキテクチャはARMv3)。このARM6はAppleだけでなくAcorn Computerもまた採用したが、ただここから大きくは広がらなかった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
RISCの生い立ちからRISC-Vまでの遠い道のり
IBM Power、MIPS、PA-RISC、SPARC、Alpha、Arm、そしてRISC-V。IT史に詳しい大原雄介さんが、現代のプロセッサにおいて重要なRISCプロセッサの歴史を追っていきます。
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
なぜ酒蔵の許諾なしに? 「VTuberコラボ日本酒」騒動、主催者が経緯説明 仲介者による調整で「準備進んでいると認識」
-
2
「食事量は1日1200kcal以下、でも肥満」な人を14日間追跡調査 痩せない理由は……米コロンビア大などの研究
-
3
本物そっくり“AI生成レシート“が経費精算の脅威に マネフォ「自力で見破るのは難しい」 企業はどう備える?
-
4
かっぱ寿司「配布前のコラボグッズ、フリマで買わないで」 プリキュアコラボ発表日に注意喚起
-
5
「菜の花がおかしい」――イラストレーター制作うたうマラソン大会ポスターに指摘相次ぐ 事務局がAI使用明かす【訂正あり】
-
6
「iPhone Duo」純正ケース話題、「面白いけど高い」……1万4800円と2万4800円
-
7
デジタル庁に不正アクセス、個人情報24.6万件漏えいか 各府省庁の職員情報など
-
8
「ペンギンを返して」→「3匹全部採用して」 批判殺到のSuica新キャラ、ファンアートが空気を変えた? SNSの声
-
9
藤井風のリサイタル、公式サイトがインターネット老人会すぎると話題 公民館のチラシみたいだけど東京ドーム開催
-
10
OpenAI、最先端AI開発の減速を検討か アルトマンCEOが社員に説明と米報道
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR