小寺信良のIT大作戦
いま見られている動画とは? トレンドに見るYouTubeの今(3/4 ページ)
「インフォーマル感」とは何か
2つ目のトレンドとして、「インフォーマル感」がある。インフォーマルとは、フォーマルの逆で、公式ではない、形式張っていないといった意味がある。つまり、素の姿を見せたり、自然体であったりといったことがウケる時代となった。
代表的なものとしては、タレントのメークアップ動画や、チャンネル総視聴回数10億回を誇る「THE FIRST TAKE」が挙げられている。昨今はInstagramでも海外セレブが加工なしの姿を見せて称賛されている流れもあるが、これまで作品として作られた姿と、ありのままの姿のギャップであったり、セレブにもリアルな日常があるという事実への気付きが注目されているということだろう。
そもそもインフォーマルな姿を大人数の撮影スタッフが撮るというのもおかしな話なわけで、日本でも流行ったリアリティー番組も、実は台本なきドキュメンタリーではなく、台本ありの進行構成に基づいている。演出された姿をリアルだと勘違いして出演者への誹謗中傷に走った人も多く、「テラスハウス」は出演者の自死という形で終了を迎えた。事実関係を曖昧にしたままのコンテンツ制作は、視聴者をだます結果となり、コントロール不能となるという問題がある。
こうした反動もあり、視聴者は本物のインフォーマルを求めるようになった。THE FIRST TAKEの一発撮りは、演出の要素を限りなく排除する制作方法であり、すっぴんから始めるメークアップ動画も同様である。
こうした動画の特徴は、プロの撮影者・制作スタッフの存在を限りなく排除することである。本人が自分で撮るプライベートショットは、一種のセルフィーではあるが、一瞬で終わる写真と違い、手持ちでは成立しないため、固定カメラとなる。
これまで「三脚」というものは、そこそこ写真が好きな人でも、長時間露出以外ではそれほど使うものでもなく、また話題になることも少なかった。それがデジタルカメラにせよスマートフォンにせよ、動画撮影のために三脚やスマホスタンド的なものを多くの人、あるいはタレント自身が当たり前に使うようになったというのは、セルフィーがまだ写真だった3〜4年前では考えられなかったことである。
また先日発表されたDJIのスマホ用ジンバル「OM 5」は、ジンバルヘッドがロッドで伸び、フェーストラッキングや、ジェスチャーによる撮影の開始・停止といった機能がある。これは他者を撮影するためというより、一人で自分を動画撮影するための機能であり、単純な固定カメラから一段ステップアップするための機能でもある。
緊急事態宣言で外に出られない反動もあるだろうが、インフォーマル感を感じさせるコンテンツからは、自宅撮り、固定カメラ、自己完結といった要素を感じさせる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
小寺信良のIT大作戦
ベテランのテクノロジーライターである小寺信良さんがIT分野全般にわたって考察する。
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
GMO、ランサム被害にあった顧客に新しいPC提供へ 犯行グループは1人の顧客情報公開か
-
2
NECのルータ「Aterm」、PHP脆弱性の影響なし 設定画面URLの「.php」は無関係
-
3
GMO、不正アクセス実行犯の手がかりに懸賞金 1億5000万円規模
-
4
「楽天トラベル」に不正アクセス 顧客情報最大約260万件など流出か 予約者約3.6万件のクレカ情報も
-
5
メアドを検索→AIで“その人専用フィッシングメール”を生成する手法、クリック率が約2.7倍に 7000人以上で実験
-
6
GMO、攻撃者の公開情報に「アクセスは絶対に控えて」 悪質な拡散者には法的措置を準備
-
7
IPO目論見書に「AIは人類の存亡リスク」「コードの9割はClaude製」 Anthropicが示した規格外の見立て
-
8
Google DeepMind、ワールドモデル「Genie 4」発表 音声や会話もリアルタイム生成、Geminiと連携
-
9
Google、プライバシーポリシーに「Gmail」「Googleフォト」のデータを広告に使う例外を追加 回避方法は
-
10
So-net、会員情報約259万件が漏えい 一部メールサービスではパスワードも流出
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR