西川善司の「日産GT-Rとのシン・生活」
全て“当たり”にするこだわり、刀鍛冶を思わせるブレーキ焼き入れ――「日本のものづくり」マインドが凝縮されたGT-R(2/6 ページ)
GT-Rのような高性能スポーツカーは月に何台も売れるものではない。注文がなければ製造ラインは稼働率が下がり、その製造ラインはただ工場の敷地面積を専有しているだけの文字通りの「デッドスペース」(Dead Space)となる。フェアレディZやスカイラインも、大量に注文が来るようなタイプの車種ではないが、ここでGT-Rの混流生産が加われば、工場の稼働率を向上させられる。
結果、2007年末に発売された日産GT-Rの最初期モデルは777万円という、今、思えばとんでもないバーゲン価格で発売された。当時の自動車メディアやファン達は、その絶対的な価格の高さをあまり歓迎しなかったが、2002年に最終型として発売されたR34型「スカイラインGT-R V-SpecII nur」(280馬力)が610万円だったことを考えると、当時の国産車最大級出力480馬力の日産GT-Rの価格が777万円に収まったことは、一定の妥当性はあったように思える。ただ、当時のわれわれが抱いていた「GT-R」に対するブランドイメージよりは、だいぶ車格が上昇してしまい、そこに反発が起きたことについては無理もないとは思う。
ただ、後に取材に応じてくれた栃木工場関係者は「専用工場で生産していたらGT-Rは1000万円台中盤から2000万円くらいの、当時のポルシェ911に近い価格になっていたと思う」と述べていたので、この「混流生産」という選択がなければ、その批判はさらにすさまじいものになったことだろう。
実際、他社の事例にはなるが、最終モデル「TYPE-S」の生産をもって終了されるホンダの現行型「NSX」は、米国オハイオ州メアリズビルに約80億円を投資してNSX専用工場を設立し、新規に工員100人を雇用して生産に取り組んだが、結果、市場価格は2400万円超になってしまった。車格と時代が違うとはいえ、先代「NSX」(デビュー当時の新車価格800万円)から3倍近い価格になってしまったことは、ファンの間でやはり残念がられた。
なお、オハイオの現行型NSXの専用製造工場(Performance Manufacturing Center)は、2016年から製造が開始されたが2022年一杯で稼働が終了する。わずか6年で終了はとてももったいない気がする。
日産栃木工場のフェアレディZ、スカイライン、GT-Rの混流生産ラインは、GT-R製造については、15年間稼働し続けられたわけだが、もしかすると、GT-Rも専用工場を新規に設立していた場合は、ホンダNSXのようになっていた可能性は拭えない。ちなみに、初代NSXは、ホンダの栃木県(本田技研工業高根沢工場)で生産されていた。栃木県の自動車製造工場は「国産スポーツカー製造のメッカ」といったところである。
ところで、注目が集まる日産の新型EVタイプのSUV「アリア」は、GT-R混流生産ラインと建屋は違うものの、この栃木工場に新設された製造ラインで組み立てられることが明らかとなっている。最新のAI技術とIT技術を駆使した、その未来的な製造設備については筆者が詳細にまとめているので、是非とも一読を願いたい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
西川善司の「日産GT-Rとのシン・生活」
IT系ライターの西川善司さんはクルマ愛好家でもあり、スポーツカーに関する記事も執筆している。そんな西川さんが手に入れることになった最新スポーツカー「GT-R nismo Special Edition」を切り口に、これからのクルマのものづくりを解き明かしていく。
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
「Xが情報収集に役立たない……」熊本地震で不満の声続出 「Twitterを返して」
-
2
メルカリ、梨の転売疑惑に「盗品の出品は確認されず」 誹謗中傷には利用制限も
-
3
「こんなのに追われたら……」急斜面もやすやす爆走、中国製の車輪付き四足ロボのデモ動画が話題 最高時速20km超
-
4
検索結果に「詐欺ではありません」と表示させる詐欺手口、警視庁が注意喚起 AI要約も餌食に
-
5
はてな、11億円流出の調査報告書を公開 偽警察、口外禁止、残業・休出200時間超、孤立……ほころびが連鎖
-
6
Z世代に聞く次の流行、「AIイラスト」が1位に 「Claude Code」も上位
-
7
携帯各社、熊本の一部で通信障害 震度7の地震で 他社回線につながる「JAPANローミング」開始【追記】
-
8
東野圭吾さん死去、Xなどで追悼相次ぐ 「ガリレオ」など数々の人気作、エンジニアから転身
-
9
NVIDIAやMicrosoftなど30社超、オープンAIの防御ツール共同開発の「Open Secure AI Alliance」設立
-
10
農水省の“クソダサ”ポスター話題 「AIよりよっぽど良い」の声も 担当者に狙いを聞いた
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR