連載「日産GT-Rとのシン・生活」を本誌で執筆中のテクノロジージャーナリスト西川善司氏が、AI、ロボットを投入した日産の最新工場を取材した。
日産自動車の栃木工場といえば、GT-R、フェアレディZ、スカイラインなどを生産している工場としても有名だ。東京ディズニーランド6個分というその広い敷地で年内に新しい工場が稼働する。
この新工場の最大の特徴は、製造ラインの要所要所に、最新のIT技術とロボット技術を組み合わせた新開発設備が導入されているところにあり、その名も「Nissan Intelligent Factory」(NIF)と命名されている。
NIF構想は、2019年に発表されているが、ついに完成し実稼働するということで、2021年10月にメディア向けに公開された。本稿では、取材から見えてきた注目ポイントを紹介したい。
Nissan Intelligent Factoryとは何ぞや、という部分から軽く紹介しておこう。
日産は「ニッサン・グリーン・プログラム」と呼ばれるプロジェクトも全社をあげて推進中である。これは「2050年までのカーボンニュートラル実現」を目指すもので、その一環として「自動車の製造プロセスにおいてもCO2削減していこう」とする取り組みがある。今回、公開されたNIFは、その一連の試みに関する成果物の1つということになる。
では、その「自動車製造工場におけるCO2削減」とはいったいどういうものなのか、というところに関心が行くわけだが、日産は、そのロードマップを示している。
現在は、工場で利用しているガス、燃料、電力といった利用エネルギーの大部分を外部のエネルギー供給企業から買って使っているが、このエネルギーを2030年以降から2050年にかけて段階的に、工場自身での自然エネルギー発電の割合を増やしたり、再生可能エネルギーに移行させる計画を進めているという。
ただし、今回のNIF公開においては、このあたりの実際の設備の公開はなし。
日産は、このNIFのコンセプトにおいては、そうした「ゼロエミッション化生産システムの構築」といった目標以外に、「人とロボットを共生させた製造システム」を掲げており、今回、見学できたのはどちらかといえばこちらのテーマに則した設備になる。
日産は「自動車の製造効率を高めることができれば、エネルギー利用の効率化が進められ、結果的にはCO2削減へとつながる」と考えており、その「製造効率の向上」に当たってはIT技術、ロボット技術、人工知能技術を応用するのが効果的と判断し、新工場建造ではそうした技術の積極活用に取り組んだとしている。
なお、このNIFはまず日産の新型電気自動車(EV)である「アリア」の製造工場として運用される予定で、最終的には多様な車種の製造にも対応・拡大していく予定だ。いずれは海外各地の製造拠点に対してもNIFのコンセプトを波及させていく計画もあると述べている。
では実際に今回見学できた設備を中心に、解説していく。
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