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» 2021年11月05日 08時00分 公開

匠の技をデジタルで再現する新しい「日本のものづくり」 日産の最新インテリジェント工場がすごいことになっていた(7/8 ページ)

[西川善司,ITmedia]

AR/MR技術による工員教育とIoT技術による設備保全

 「複雑な推進構造を持つハイブリッドカーや電動自動車の製造」「自動運転やそれに準じたITベースの運転支援技術の搭載」など、自動車そのものが複雑化していることもあり、その製造工場の仕組みも同時に複雑化してきている。そして、これに伴って、そこで働く人々が習得すべき技能も高度化している。

 そこで課題となるのが工員の教育である。

 NIFでは、なんと、マイクロソフトのHoloLens2を用いた、MRベースの作業工程習熟支援システム「IOSS」(Intelligent Operation Support System)を新規開発。これにより、新米の工員が、実際に配属される予定の作業工程の現場にて、作業対象物を目の前にしながら訓練ができるようになったという。

photo HoloLens2を使ったMRベースの作業工程習熟支援システム「IOSS」(Intelligent Operation Support System)を用いての工員技能習得訓練の様子
実際の訓練を想定したデモンストレーション

 複雑化した工程が高度に連携した工場では、ひとたび何らかのトラブルが発生するとその復旧作業も大変なことになる。トラブルに直面した工程の現場、その担当部署だけでは解決できないトラブルの可能性もある。迅速に製造ラインの復旧ができなければ、経済的な損失も大きくなってしまう。

 そこで、NIFでは、工場設備の状態を把握して監視することができる高度にIT化した集中管理室を設立した。このシステム名に日産は「MASTER-CBM」(Maintenance Alliance System Towards Equipment Reliability/Condition Based Maintenance)という名称を与えている。

 現状のMASTER-CBMでは、29種のNIF内設備で8600超のデータを測定し、リアルタイムにデータベースとして構築。そのデータベースを故障診断システムが解析し、故障の予兆が検出されると保全スタッフに警告を促してくれる仕組みになっているという。なんだか夢のようなシステムだが、その動作の仕組みを聞けば、なるほどと納得できる。解説しよう。

 NIF内で作業を担当しているロボットアームのほぼ全てには振動センサーが組み付けられており、その振動センサーからの振動データが、データベースに蓄積されている。その後、あるタイミングでそのロボットアームが故障したとすると、その故障する直前までの数時間分の「振動データの遷移」は「故障の兆し」の知識データとして利用できる。よって、以降、別のロボットアームから、この「故障の兆し」に近い「振動データ遷移」が検出された場合は「故障が近いかも」と推測することが成り立つのだ。こうした推測が行えるようになれば、そうした「故障の予兆」が検出されたロボットアームを良品に交換することができる。そう、実際に故障して製造ラインがトラブルに陥ることを抑止できるのだ。

photo 集中管理室の様子。多画面天国である
photo 復旧にあたる担当者もIT端末を活用する

 そして万が一、実際にトラブルが起きた場合は、この集中管理室が主導をとり、トラブルに関係する全部署に対して的確な指示を行うことになる。なお、その際に指示を与えるのは、集中管理室に勤務する、各部門での20年以上の実務経験があるエキスパート達だという。

 この集中管理室のエキスパート達からの指示を受けて製造ラインの復旧に当たるのは、現場の工員ということになるが、工場内は広く、さまざまな製造設備が入り組むように立体的に配置されていることもあり、「どこそこにある、なんたらという機械をこう操作せよ」というシンプルな指示さえも伝わりにくい。そこで、作業にあたる担当工員はタブレット端末を携行したり、あるいはAR/MRヘッドセット、スマートウォッチなどを装着して作業に当たることになる。メンテナンス作業位置、復旧すべき機械の特定は、全て、そうしたIoT端末を通して行われることになるのだ。

 なお、工場には270台からなる小型カメラが設置されていることから、集中管理室からの音声による指示も、スパイ映画の司令室シーンさながらの精度で誘導や指示が行えるようだ。

集中管理室の様子と、トラブルが起きたと想定しての復旧作業の実演デモ

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