プロ棋士向け最強将棋AIマシンを組む!
「CPU最強 vs. GPU最強」──進化する将棋AIのいま プロに勝利した「Ponanza」から「水匠」「dlshogi」まで(4/4 ページ)
「CPU最強 vs. GPU最強」の結果は
こうして実現したのが、21年8月に行われた「電竜戦長時間マッチ」だ。第二回電竜戦TSECの優勝プログラムである水匠と、同大会B級優勝プログラムのdlshogiの対局であることから「CPU最強 vs. GPU最強」となるわけだが、ここまでの流れを振り返れば、連綿と続いてきたCPU計算によるコンピュータ将棋にニューラルネットワークを取り入れたソフトと、AlphaGo以来のディープラーニング系GPUソフトの頂上戦、という見方もできそうだ。
その対局の様子はYouTubeの電竜戦公式チャンネルに上がっている他、前述で引用していた「りゅうおうのおしごと!」作者である白鳥士郎さんの全4回にわたるインタビューが詳しい。
結果から言えば、第1局は水匠のバグに起因する投了でdlshogiの勝利、第2局は水匠の勝利、第3局はdlshogiの勝利だった。第2局は終盤の読み合いで水匠が千日手を打開し勝利、第3局は序盤からdlshogiが水匠に比べ高い評価値を付け、終始優勢ムードで勝利。
「DL系は序盤に強く、一方で(NNUE系に比べれば)終盤に弱い」という特徴がよく現れた対局だったともいえる。
同格に見えるがマシンの価格に差 研究にはCPUとGPUどちらも必要か
バグをノーカウントとすれば1勝1敗で同格とも取れるが、この連載としては「プロ棋士が研究に使えるか」に注目したい。それぞれの実行環境を見てみると、水匠は引き続き「Ryzen Threadripper 3990X」で臨んだ一方で、dlshogiはAWSのインスタンスによってNVIDIA A100×8基を用意していた。
Threadripperも単体で約50万円と、CPUの最高峰に似つかわしい価格をしているが、仮にA100を8基購入しようとすると1000万円はかかる。インスタンスを契約するにしても、当初の山岡さんのように審査に落ちる場合もある。必然的に、個人で実行する場合には「GeForce RTX 3090」など個人が購入できるグラフィックスカードで実行することになるが、A100×8に比べれば当然棋力は下がる。
それでも、RTX 3090などでdlshogiを動かして研究する意義はある。「DL系は序盤に強い」という特徴があるから、棋力が下がっても手筋の読み方がNNUE系とは微妙に変わってくる。逆に、終盤についてdlshogiでうまく評価できない部分は水匠などNNUE系の評価や候補手を参考にすればいい。
つまり、いま将棋AIで研究をするのなら「CPUとGPU、どちらの環境も持っていた方がいい」といって差し支えなさそうだ。
ちなみに長時間マッチの後、21年11月に開催された第二回電竜戦本戦では1位をGCT電竜、2位をdlshogiが独占。4位までDL系が占めた。興味深いのは3位に入った、みざーさんとやねうらおさんが開発した「ふかうら王」で、決勝こそA100×8で挑んだが初日のリーグは「Ryzen Threadripper 3970X」+「GeForce RTX 3090」×2+メモリ256GBという、デスクトップPCで実現可能なスペックで勝負に出た。
初日の順位は2位で、水匠とdlshogiには白星をあげていた。ふかうら王は評価関数にdlshogiを取り込みながら、探索部にはやねうら王の知見を生かす方針としているようだ。
そうであれば、なおさら“強いCPU”と“強いGPU”を両立した環境を用意したいもの。そこで筆者は、ある自作PC専門家に協力を仰いだ──。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
プロ棋士向け最強将棋AIマシンを組む!
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
個人向けGeminiのモデル選択が厳格化 無料ユーザーが使えるのは「Flash-Lite」のみに
-
2
「Androidのマイナンバーカード」提供へ 20日から 物理カードなしでも本人確認など可能に
-
3
「OpenAIの文化は壊れている」──安全性報告書を統括した従業員が退社し、寄稿
-
4
タイムズカー漏えいで集団訴訟の動き、登録3000人弱 呼び掛けた弁護士に聞いた──「謝罪で済む案件ではない」
-
5
再び浮上した「クレカ表現規制問題」 クリスタやpixiv FANBOXの騒動からマンガ家が感じた不安と焦り
-
6
「アバハウス」全顧客の情報漏えいか 会員・受注DBに不正アクセス 「不審な返金メール届いた」報告で判明
-
7
第一生命に不正アクセス 従業員情報12万人分漏えいか 退職者も対象
-
8
免許証の悪用防ぐ届出集中、CIC・JICCで手続き遅延 タイムズカー情報流出直後に
-
9
貧乏な子どもが“稼げる大人”になる条件とは? 米ハーバード大などがFacebook7000万アカウント超から分析 2022年にNature掲載
-
10
Google「AI Plus」4割値下げ、月725円に ストレージ倍増、価格攻勢でシェア拡大へ
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR