小寺信良のIT大作戦
iPodは「Goodbye, MD」し、世界を変えて、Goodbyeした(1/4 ページ)
米Appleが現地時間の5月10日、iPod touchの販売を、在庫がなくなり次第終了すると発表した。日本のApple Storeでも、「在庫が無くなり次第終了」という表示が見える。
もともとiPodは音楽再生用デバイスとして登場したが、2019年に発売された第7世代iPod touchはA10 Fusionチップを搭載し、カメラも付いている。App Storeのアプリもほとんどが問題なく動く、言わばキャリア通信ができない低価格iPhoneである。
実際iPod touchを飲食店のオーダーシステムの一部として利用しているケースもあり、この販売終了で数年後にはシステムの入れ替えが必須となってしまったところもありそうだ。
筆者ももちろん歴代のiPodを使ってきたが、iPhoneをはじめとするスマートフォンのストレージ容量が拡大するにつれて、次第に使わなくなっていった。逆に今回の発表で、「まだ売ってたのか」と思った方も多いのではないだろうか。
第7世代iPod touchは現存する最後のiPodであり、これが販売終了となることで、およそ20年におよぶiPodの歴史に幕が下りることとなる。だがiPodが社会に与えた影響は、小さくなかった。今回は、日本の社会におけるiPodの位置づけについてまとめてみたい。
大容量MP3プレーヤーとして
MP3という技術は1995年頃から徐々に世の中に浸透していき、データ量が小さいのにちゃんと鑑賞に堪えうる音質だということで、主にパソコン内での音楽再生で利用されていった。1997年ごろだったか、実家に帰省した折、ノートパソコンに収録したMP3で音楽再生しながら原稿を書こうとしたら、再生が途切れ途切れになって実用にならなかったのを覚えている。当時のノートパソコンのCPU(Pentium 133MHz)程度では、まだMP3のデコードは負荷が高かったのだ。
したがって、単体でMP3が再生できるデバイスの登場に期待が高まった。世界最初の携帯型MP3プレーヤー「mpman」が日本で入手可能になったのは、1998年のことである。ネーミングからも、当時携帯音楽プレーヤーの代名詞であったソニー「Walkman」を連想させる。「ナントカman」を付ければすなわちポータブルであるというコンセンサスが取れていた時代、とも言える。
当時の日本は、ポータブルプレーヤーではMDが人気だった。一方MP3は非合法な音楽交換に使われ始めたこともあり、アンダーグラウンドな見方をされていた。ただパソコンユーザーの多くは、自分で買った大量のCDを1時間ごとに入れ替えるのは面倒ということで、パソコンにリッピングしてなんらかのプレーヤーで聞くといった方法に切り替えていった。2000年直前は、CD-Rドライブの台頭とともに、パソコンと音楽が急接近していった時代である。
初代iPodの登場は、2001年だった。この時系列からわかるように、当時MP3のポータブルプレーヤーはすでに多くのメーカーが参入しており、Appleが先陣を切ったわけではない。ただストレージにHDDを採用したことで、容量が破格に大きいところがウリだった。
初代iPodはMacにしか対応しておらず、Macの周辺機器扱いだった。当時のMacは、ジョブズ復帰後にiMacやiBookなどのカラーリング戦略がウケていた時代である。iPodが大きく注目されたのは、翌年の第2世代でWindowsに対応してからだ。
今では信じられないかもしれないが、当時WindowsにはiTunesがなく、サードパーティー製MP3プレーヤーの「MusicMatch Jukebox Plus」が付属していた。コーデックのAACもまだなく、iPodはMP3再生機だったのだ。エコシステムがちゃんと動いていなかったが、それでも「世界を取る」ためにはWindowsへの対応が必須だった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
小寺信良のIT大作戦
ベテランのテクノロジーライターである小寺信良さんがIT分野全般にわたって考察する。
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
なぜ酒蔵の許諾なしに? 「VTuberコラボ日本酒」騒動、主催者が経緯説明 仲介者による調整で「準備進んでいると認識」
-
2
「食事量は1日1200kcal以下、でも肥満」な人を14日間追跡調査 痩せない理由は……米コロンビア大などの研究
-
3
かっぱ寿司「配布前のコラボグッズ、フリマで買わないで」 プリキュアコラボ発表日に注意喚起
-
4
本物そっくり“AI生成レシート“が経費精算の脅威に マネフォ「自力で見破るのは難しい」 企業はどう備える?
-
5
「菜の花がおかしい」――イラストレーター制作うたうマラソン大会ポスターに指摘相次ぐ 事務局がAI使用明かす【訂正あり】
-
6
「ペンギンを返して」→「3匹全部採用して」 批判殺到のSuica新キャラ、ファンアートが空気を変えた? SNSの声
-
7
藤井風のリサイタル、公式サイトがインターネット老人会すぎると話題 公民館のチラシみたいだけど東京ドーム開催
-
8
「iPhone Duo」純正ケース話題、「面白いけど高い」……1万4800円と2万4800円
-
9
松本デジタル相、24.6万件漏えい可能性について説明 「既知の脆弱性を対応前に悪用」
-
10
デジタル庁に不正アクセス、個人情報24.6万件漏えいか 各府省庁の職員情報など
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR