今に生きる「Winny」の技術 総務省も採択、天才プログラマー・金子勇さんが遺したもの(3/3 ページ)
自動運転、スマート工場、P2P技術の可能性
柴田さんは、今後のP2P技術の適用について、こう語る。
「一つは自動運転です。現在の自動運転の多くは、走行状況などのデータを適時サーバに送信しています。しかし、車同士がサーバを介さず直接データをやりとりできれば、より迅速な予測・判断・制御が可能になります。また、交差点で車同士が、お互いこれからどう動くか通知できれば、より安全な車社会が作れます」
要は、端末同士が協調したほうが、効率よく大きな仕事が成し遂げられるということだ。昨今、製造業を中心に注目されているスマート工場でも同じことがいえる。製造機器同士が直接コミュニケーションできるようになれば、自律的なモノづくりに一歩近づく。
Skeedの白川正人CEOは、既存のスマート工場の課題をこう語る。
「既存のスマート工場では、IoTデータをクラウドなど工場外のサーバに送ることが多いのです。しかし、多くの製造業は、工場外の機器やネットワークが原因でラインが止まるのを防ぎたいと考えています。ですから、P2P技術を使って工場内のネットワークで完結させることに価値があると思っています」
「面白い」がすべての原動力
「Winnyは当時多くの人に使われ、ノード数がとてつもなく増えました。あのときの振る舞いを、金子さんは『面白い』と言っていたんです」(飯澤さん)
「金子さんがP2P技術に目をつけたのは、そんな理由だと思うんです。カチッとしたプログラムを書いて、理路整然と動かすのではなく、小さな端末がそれぞれ自律的に動きながら、全体として何となくうまく動く、みたいな」(柴田さん)
どう動くかなんてやってみなきゃ分からない。人智すら越えた動きをするかもしれない。そういうものがたまらなく面白くて、手を動かさずにはいられない。そんな感覚が、金子さんを突き動かしていたのではないだろうか。
金子さんは、2012年のインタビューで、こう語っていた。
「私の場合、表現方法がプログラムなんです。『面白いことを思いついたんだけど、こんなのどうですか?』って。究極の趣味プログラマーなので、きれいなプログラムは書けません。実験的で、動くかどうか分からないようなコードを書くのが得意なんです。そもそも動くって分かっているものが、あんまり好きじゃない。動かないと思うんだけど、動いたらラッキーみたいな」
インタビューでは、警察が押収しなかったバックアップの中にWinnyのソースコードが残っていたこと、引っ越しを機に、(映画にも登場した)愛用の電動式起き上がりベッドは捨ててしまったこと、キーボードを抱えるか枕元に置いて寝ていることなども教えてくれた。「パソコンがないと何にもできないヤツなので」。金子さんは肩を揺らして笑った。そして、若いプログラマーにこんなメッセージを送った。
「裁判では、やれるだけのことをやって無罪を勝ち取りました。私が有罪になるよりは、無罪になる方がプログラマーにとっていいだろうと思って頑張りました。私も若い頃と違って無理がきかなくなってきたんですけれども、若いんだから、頑張って張り切って、すごいプログラムを作ってください」
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