小寺信良の「プロフェッショナル×DX」
「もう電波放送は終わっていいんじゃないか」――イギリス放送通信庁の提案、ネット完全移行は現実的か?(3/4 ページ)
独特の英国テレビ放送事情
英国のテレビ放送事情を分析する前に、日本と英国の放送システムの違いについて把握しておく必要がある。日本はご承知のように垂直統合型で、1つのテレビ局がコンテンツを手配し、番組編成を行い、送出業務を行い、電波塔など放送インフラの管理運営を行っている。
一方米国は水平分業型で、ハードとソフトが完全分離している。テレビ局はソフト面、番組制作を行うのみだ。
ハード面でも分業化されている。番組編成や送出業務は、別の事業者が行っている。Red Bee Mediaというのが最大手のようだが、他にも事業者があるようだ。英国は各放送局が同じ周波数帯を使うマルチプレックス方式なので、このマルチプレックスを行う事業者というのがある。これは免許制で期限がある。電波塔を含めた放送網を管理運営する送信事業は、Arqivaという事業者がほぼ独占であるという。
従って、地上波を停波するかどうかという話は、テレビ局としては単純に外部に支払っている送信コストの話でしかない。一方でハード事業者にとっては、死活問題である。
現在ほとんどのテレビ番組が、電波網とIPのハイブリッドで配信されているが、テレビ局側は放送網への支払いに加えて、IP配信費も追加された格好だ。さらにIP配信では、多数の配信プラットフォーマーのために、同じ番組でもSDやHDなど異なる解像度や納品フォーマットデータを用意しなければならない。
つまりテレビ局は、配信プラットフォームが増えれば増えるほど、配信コストがかかっていくという事になる。IPは今のところ視聴者も順調に推移しており、技術革新に小まめに追従できることで配信コストは徐々に減少していくことが考えられる。一方電波網による放送は視聴者が減少しており、配信コストはほぼ固定費で変わらない。どこかの時点で配信コストが収益を上回る時が来ると予測される。
一方でIPの世界では、テレビ番組はNetflix、Disney、Amazon Primeなどの海外プラットフォーマーが手配してくる強力なコンテンツと戦っていく必要があり、さらにはYouTubeなどの動画共有プラットフォームコンテンツとも時間の取り合いになる。
そうなると考えられるのは、テレビ局だけで独自のIP配信プラットフォームを立ち上げ、海外プラットフォーマーに対抗していくという方法論だ。イギリスでは今年、BBCが中心となって民放各社も参画する「Freely」というプラットフォームを立ち上げた。
そこまでふまえて、改めて最初の3つの選択肢を見てみると、最初に見た印象とはまた違った景色が見えてくる。
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小寺信良の「プロフェッショナル×DX」
クラウド活用にリモート編集環境と、映像にまつわるプロフェッショナルの分野にDXの波が押し寄せている。プロの現場で何が起こっているのか。最新のITトピックを小寺信良氏が解説する。
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