小寺信良のIT大作戦
実は攻めていたパナソニック「VIERA」 事業売却検討まで落ち込んだ“日本特有の事情”とは(3/3 ページ)
「テレビ」でなければ?
日本の家電メーカーの多くがテレビを手掛けていたのは、一家に一台三種の神器と言われた時代から、それだけ需要がある家電だったからだ。核家族化して世帯数が増えたことで、さらにテレビも売れた。21世紀に入ってからはアナログからデジタルへの転換、薄型化、HDから4K、ネットサービス化といった技術的イノベーションが立て続けに起こり、走り続けることができた。
だがそれは日本だけに起こったことではなく、世界中で起こった。日本のテレビが品質で負けたとは思わないが、価格競争で中国メーカーに負けた。現パナソニック株式会社の中に「中国北東アジア社」があることからも想像できるように、パナソニック全体にとって中国市場は収益の柱である。その中国市場に食い込めないテレビは、キツいというわけだ。
とはいえ、情報社会まっただ中の現在、ディスプレイは至る所に使い道がある。PC用ディスプレイは大型化が進み、湾曲タイプも広く受け入れられている。またモバイル用として小型拡張ディスプレイも好調だ。デジタルサイネージもまだまだ伸びしろが大きい。チューナーレステレビも登場するたびに、大きな話題になる。にもかかわらず、こうした分野も中国メーカーに取られた。
日本企業のテレビ産業は、テレビ局との蜜月関係があるかぎり、聖域でいられた。番組をスポンサーし、テレビCMでテレビを売っていくという、メディア産業と構造が一体化していたために、あまりにも特殊すぎたのだ。
多くの人がパナソニックという企業に持っているイメージは、丈夫・壊れない・安心といったところだろう。「ナショナルって言う聞いたことないメーカーの製品があった」という話がときおりネットでバズるように、現役で動き続ける製品も多い。ナショナルブランドがなくなったのが08年だったので、少なくともそれ以前の製品という事である。
テレビ事業も、チューナーがないディスプレイならVIERAブランドがほしい人は多いのではないだろうか。最先端を追わなくとも、ネットコンテンツを見たり、PCをつないだりといったデカい汎用モニターとして、10年以上壊れない製品なら、高くてもVIERAを選ぶ。業務用ならなおさら中国メーカーは選べない。壊れた場合の責任の所在と処理が面倒だからだ。
「テレビ」という冠を外してしまえば、ディスプレイはやれることが多いはずだ。近未来のスマートライフは、「テレビはもういいよ」という前提の先にあるとは考えられないだろうか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
小寺信良のIT大作戦
ベテランのテクノロジーライターである小寺信良さんがIT分野全般にわたって考察する。
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
メルカリ、梨の転売疑惑に「盗品の出品は確認されず」 誹謗中傷には利用制限も
-
2
Anthropic、「Claude Opus 5」公開 Fable 5に迫る性能を半額で――サイバー安全策は緩和、拒否時は自動フォールバックも
-
3
「iPhone高騰」はこれからも続く? 中国CXMTに近づくApple、メモリ競合へのけん制が不発に終わりそうなワケ【後編】
-
4
「ニューロマンサー」実写ドラマ、Apple TV+で2027年1月配信開始へ
-
5
「こんなのに追われたら……」急斜面もやすやす爆走、中国製の車輪付き四足ロボのデモ動画が話題 最高時速20km超
-
6
検索結果に「詐欺ではありません」と表示させる詐欺手口、警視庁が注意喚起 AI要約も餌食に
-
7
海外の新作バカゲー「電車アタック」にマンガ家が感心した理由 ブッ飛んだ内容と完成度の高さ、そして“日本”
-
8
「めっちゃカメレオン」公式Discord乗っ取り 担当者PCがマルウェア感染、管理者が全員BANに 現在は復旧
-
9
暑さ対策が熱い! 「猛暑対策展」で感じた、転んでもただでは起き上がらない日本人のエネルギー
-
10
スーパーに並んだ「ごちゃごちゃ生成AIポップ」が物議 “看板王”こと、きぬた歯科院長「これはアリ」
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR