小寺信良の「プロフェッショナル×DX」
"非クリエイター層"に本腰のAdobe 生成AIで激変するクリエイティブ領域、それを担うAI戦略とは(2/3 ページ)
AIとクリエイティブ業界の関係
クリエイティブ業界は、AIとの関係をどう考えるべきかの岐路に立っている。米OpenAIの「Sora2」は、既存のキャラクターが生成できてしまったことで、日本のクリエイティブ業界からは一斉に非難の声が上がった。
Sora2が採用しているオプトアウト方式は、問題があったら言ってください、個別対応します、というものである。だが数多いキャラクターを個別にオプトアウトを申請していると、その間にもどんどん生成されてしまう。そもそも学習するなよという、オプトイン方式への転換が求められている。
Adobeの生成AIであるFireflyは、こうした意見が出ることは事前に理解しており、ライセンスされた素材のみを使って学習させたモデルとして商業利用できるというスタンスは、今も変わらない。
現在起こっているAIとクリエイティブの問題について、Adobe Chief Legal OfficerのLouise Tentland氏に、Adobeとしての見解を伺うことができた。
Adobe Fireflyでは、学習させたクリエイターの知的財産に対して、ライセンスフィーを払うという方法を取っている。ただAIの開発・運用会社の考え方はいろいろであり、オプトインもあり得るしオプトアウトもあり得るだろうという。
ただいずれの場合においても、最終出力に関しては何らかのフィルタリングにより、コントロールすることは可能だとする。実際Fireflyでは、公序良俗に反するプロンプトに関しては、生成できないようになっている。
知財保護の観点においてAdobeは、作風もまた保護すべきというスタンスを示している。作風は著作権法でカバーされないため、模倣するのは違法ではないとする意見もある。だがそれが知財であることには間違いなく、独自の作風が模倣されれば、そのクリエイターは収入を得ることができなくなる。これに関しても、フィルターで対応できる技術はすでにあるとしている。
これは話を伺った上での個人的な感想だが、一般にネットの情報を学習するAIは、ある意味勝手にどんどんクローリングしてしまうので、何を学習し、何を学習しないかといったコントロールが難しいのではないかと感じた。つまり、学習しないものを識別するためには、その対象をいったん学習して認識できなければならないという、論理的矛盾がある。それならばアウトプット直前にフィルタリングで抑制する方法論が現実的だ。
筆者がもう一つ気になったのは、生成AIと出演者の権利の関係だ。ハリウッドでは2023年、生成AIを使うことに対して俳優組合が大規模なストライキを実施した。AIが俳優の容姿や声を無断で利用することに反対するものだ。
例えばPremiereに搭載されたクリップの延長機能は、生成AIがクリップの最後のフレームからうまくつながるように続きを生成してくれる機能である。このクリップに俳優が映っていた場合、その俳優の容姿を使って続きを生成することになる。
あるいは群衆のシーンが必要になった場合、これまではエキストラを大量に雇用してそのシーンを撮影していた。だが生成AIを使えば、ローコストで群衆のシーンが生成できるため、エキストラの仕事を奪うということになる。
Tentland氏によれば、こうした事例については技術的、あるいは法的な措置ではなく、契約による解決が行われているという。つまり俳優には、出演契約書内に生成AIを用いるケースがあるということを明記した上で契約を行う。当然、それに対してのフィーの上乗せなども検討されるということだろう。
またエキストラに関しても、ハリウッドでは生成AIで俳優を置き換えることはないという方針を打ち出した。これもある種の契約による解決といえる。
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小寺信良の「プロフェッショナル×DX」
クラウド活用にリモート編集環境と、映像にまつわるプロフェッショナルの分野にDXの波が押し寄せている。プロの現場で何が起こっているのか。最新のITトピックを小寺信良氏が解説する。
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