なぜ今、鉄道各社は「顔パス改札」を競うのか 東武・日立が「SAKULaLa」で描く“第3の道”(3/4 ページ)
JR東、京成電鉄……各社の異なるアプローチ
ICカードをかざす従来の仕組みは、物理的な接触や読み取りに時間がかかる。このため、改札を立ち止まらずに通れる「ウォークスルー型」が、業界共通の次なる目標だ。顔認証は、この体験を実現する最も有力な手段として注目されている。
ただし、各社のアプローチは大きく異なる。最も大胆な一手を打ったのが25年3月、国内で初めてほぼ全ての駅に顔認証改札を入れた大阪メトロだ。戦略の核心は、既存のICカードでは通過できない仕様とし、自社アプリ「e METRO」へ顧客を誘導したこと。顔認証改札を使うには、アプリで会員登録と顔画像の登録を行い、デジタル乗車券を買う必要がある。
このハードルの高さは技術的な制約ではなく、ビジネス上の判断によるものだ。狙いは、匿名のICカード利用者では作れなかった「個人に結び付く顧客データベース」を築くこと。ただし万博開催時の顔認証改札は「かなり空いていた」とも報じられており、認知度と登録の手間によるハードルが課題としてうかがえる。
JR東日本は、「改札はタッチするという当たり前を超える」と宣言。しかし大阪メトロとは対照的に、新幹線という限られた場面で導入を始めた。上越新幹線での実証実験でターゲットにしたのは、「荷物を持った利用者」「複数の切符を扱う不慣れな利用者」といった明確な不便さを抱える人だ。特定の課題に狙いを定める形で、ウォークスルーが提供する価値を検証する。
京成電鉄はさらに絞り込み、成田空港へのアクセス特急「スカイライナー」だけで顔認証を始めた。対象は訪日外国人などが多い、オンラインチケットの利用者。空港からのスムーズな移動に高い価値を感じる層に狙いを定めた、低リスクな戦略だ。
こうした各社の施策の中で、異なる動きを見せ始めたのがSAKULaLaだ。大阪メトロの「新規エコシステム」型でも、JRの「既存資産+顔認証」型でもない──業種を超えて使えるプラットフォームとして、第3の道を歩もうとしている。
長年、日本の鉄道改札を支えてきたICカードの特徴は「匿名性」だった。しかし顔認証の導入は、匿名の利用者を事業者が管理する「個人に結び付くデジタルID基盤」の利用者へと作り変える動きだ。その覇権を巡る競争が、今、始まっている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
GMO、ランサム被害にあった顧客に新しいPC提供へ 犯行グループは1人の顧客情報公開か
-
2
NECのルータ「Aterm」、PHP脆弱性の影響なし 設定画面URLの「.php」は無関係
-
3
GMO、不正アクセス実行犯の手がかりに懸賞金 1億5000万円規模
-
4
「楽天トラベル」に不正アクセス 顧客情報最大約260万件など流出か 予約者約3.6万件のクレカ情報も
-
5
auメールで朝から障害 全国で利用しづらい状況に
-
6
GMO、攻撃者の公開情報に「アクセスは絶対に控えて」 悪質な拡散者には法的措置を準備
-
7
So-net、会員情報約259万件が漏えい 一部メールサービスではパスワードも流出
-
8
メアドを検索→AIで“その人専用フィッシングメール”を生成する手法、クリック率が約2.7倍に 7000人以上で実験
-
9
IPO目論見書に「AIは人類の存亡リスク」「コードの9割はClaude製」 Anthropicが示した規格外の見立て
-
10
Apple、M6搭載の14インチ「MacBook Pro」発表 AI性能向上、33万9800円から
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR