ビジネス向けにも影響? 9万9800円の「MacBook Neo」が突きつけた低価格PCの“新基準”(2/3 ページ)
「長く使えるのか」という話はSSDが問題ではない
メインメモリが少ない分、MacBook Neoは他のMacに比べて仮想記憶を多用する。SSDが速いために速度低下は一定の範囲内で維持できている。とはいえ、大きなサイズのデータを扱い、多数のアプリを切り替えつつ使うと、仮想記憶の利用量がより増えるため、動作の遅さを感じやすくなる。プロワークには上位機種の方がいい、というのはこのためだ。
ただ、だからといってSSDの寿命が極端に短くなるかというと、「おそらくは問題ない」。というのは、2020年発売のM1搭載MacBook Proにも8GBモデルがあったが、それらでSSDの故障が多発した......という話はないからだ。少なくとも5、6年の使用であれば、問題は起きないと想定できる。
実際問題、個人市場向けPCでのSSDの故障は「書き込みの多発による寿命」よりも、コントローラーICや電源などの絡む事例の方がずっと多いとされている。その場合、故障確率が上位モデルと下位モデルで劇的に変わると想定するのは難しい。
むしろ課題は、「OSのアップデートなどは、8GBのモデルでいつまで問題なく続くのか」という点だ。1年・2年は確実に問題ない。5年も大丈夫かもしれない。だが、その先はどうか。
買ったら10年使い続けられる......とはいかないだろう。
教育市場以上に「ビジネスシーン」にも影響か
MacBook Neoは見事なバランスの製品だ。正直なところ、MacBook Airを購入していた層がMacBook Neoを選ぶのでは......と、競合を心配してしまうほどだ。
筆者としては、やはりメモリが16GBあるMacBook AirやMacBook Proをお勧めしたくはなる。MacBook Air(M5版)の価格はMacBook Neoの2倍近い。だが、性能は確実に2.5倍以上あるので、安心してより長く「現役」として使えるだろう。だが、そこまでを求めない人もいる。20万円という予算が出せても、あえて安価なモデルを選ぶ人もいそうだ。故障や紛失、盗難のリスクを考えると、持ち出すのは安価な機器にしたい......という人もいそうだ。
MacBook Neoは「教育市場向け」と言われることがある。実際、アメリカでは中学生から大学生までの層を狙っている。日本でもその層にはウケるだろう。
ただ、いわゆる「GIGAスクール」市場向けにはこれでも高価だし、求められる要件も違う。高校・大学などでの一括納入だとMacBook Neo以前のスペックで基準が定められており、その見直しがどこまで行われるのかはなんとも言えない。
なお、「iPad」とも競合するわけだが、あちらはカメラやペンなども重視した、もう少し年齢層が低いところでの教育市場をカバーしている。
そうすると、MacBook Neoは「親が自発的に子どもに買い与える製品」もしくは「ビジネスパーソンが自分の私物として買う」パターンが多いのかもしれない。またもちろん、学生自身が「学校の推奨を意識しないで買う」というパターンもありそうだ。
すなわち、意外と「ビジネス向けノートPC」の市場にも影響が出そう、ということになる。
低価格機種では他社との差がまた開く
もちろん、コスパが良ければ売れるという簡単な話ではない。OSがWindowsであることを求められる市場は多い。これまでMacを使ったことがない人も二の足を踏むかもしれない。
一方で、Windows PCでここまでのコスパが出しにくい部分があるのも事実だ。低価格な製品はあるが、それらは「いかにも低価格」な仕上げであることも多いし、完成度の面で疑問があるものもある。Windowsは多数のハードウェアで動かすが故に、8GBでは快適な動作が見込めない。
MacBook Neoの「8GB」というメモリ量が批判されたのも、Windowsでの経験から来る部分が大きいはずだ。
だが、米Appleは米Microsoftとは異なり、少数の自社製ハードウェアだけを対象にすればいいので、最適化も進めやすい。だからMacBook Neoは快適な製品になっているのだ。
結局のところ、6年前にAppleがMacを「Apple Silicon」に移行した時から、省電力性を含めた性能の面で、Appleは他のプロセッサメーカーに対して優位な面があったのは事実だ。
こういう話をすると「Apple信者」のように反応されそうだが、そういう話ではない。
事実Microsoftは、Apple Silicon搭載MacBookとの競合を重視し、同社のPC「Surface」シリーズで米Qualcommとの協業をすすめた。ビジネス的にはまだ成功したとは言えないが、Arm版Windowsを推進する動きは、Appleへの対抗心がなければ進まなかった。
米IntelやAMDも、消費電力と処理性能、GPU性能などでAppleシリコンを強く意識している。主に処理能力の点では、優位な部分が多くなっている。メインストリームとなる15万円以上の価格帯を考えると、Windows PCのコストパフォーマンスは決して悪くない。手のひらサイズのミニPCが増加しているのも、プロセッサの進化によるものだ。
ただ、今回MacBook NeoがA18 Proを採用したことによって生まれた「低価格機種での性能」という部分では、また差が生まれたように思う。
この点は、ハードメーカーとの協業による最適化を進めないと、競合は難しいかもしれない。単純に安い製品を作ることはできても、それが不快なものになっては意味がない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
「Xが情報収集に役立たない……」熊本地震で不満の声続出 「Twitterを返して」
-
2
メルカリ、梨の転売疑惑に「盗品の出品は確認されず」 誹謗中傷には利用制限も
-
3
「こんなのに追われたら……」急斜面もやすやす爆走、中国製の車輪付き四足ロボのデモ動画が話題 最高時速20km超
-
4
検索結果に「詐欺ではありません」と表示させる詐欺手口、警視庁が注意喚起 AI要約も餌食に
-
5
はてな、11億円流出の調査報告書を公開 偽警察、口外禁止、残業・休出200時間超、孤立……ほころびが連鎖
-
6
Z世代に聞く次の流行、「AIイラスト」が1位に 「Claude Code」も上位
-
7
携帯各社、熊本の一部で通信障害 震度7の地震で 他社回線につながる「JAPANローミング」開始【追記】
-
8
東野圭吾さん死去、Xなどで追悼相次ぐ 「ガリレオ」など数々の人気作、エンジニアから転身
-
9
NVIDIAやMicrosoftなど30社超、オープンAIの防御ツール共同開発の「Open Secure AI Alliance」設立
-
10
農水省の“クソダサ”ポスター話題 「AIよりよっぽど良い」の声も 担当者に狙いを聞いた
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR