小寺信良のIT大作戦
普通のキーボードを“勝手に”エルゴノミクスに変える「MX Tilter Kit」を買ってみた(4/4 ページ)
カラムスタッガードで再挑戦
次は、カラムスタッガードのキーボードをチルトさせてみる。現在メインで使用している「Ergo68」がカラムスタッガードだったので、これをチルトさせてみることにした。今度は手前側は最初からフラットのままである。
この効果は絶大であった。キーが立体になっても位置のズレは感じられず、奥のキーへ指が届きやすいというメリットだけが享受できる。
キーキャップは指あたりが優しいシリコン製のものを使っているのだが、キーの印字がシリコンを透かして見るような状態なので、キーの文字の認識に難があった。数字は読めるのだが、数字の横に記載してある記号キーが読みづらい。しかし奥側が持ち上がっていることで、視認性が向上した。特に記号キーはあまり使わないこともあり、位置を暗記しているわけでもない。毎回確認が必要なのだが、以前は見えづらさからわざわざ上から覗き込んでおり、そうした余計な手間が削減された。
キーの押し込み角度だが、キーキャップは傾いているものの、スイッチ自体は垂直に押し込む。その分、力が分散するのではないかと思われたが、それによる力のロスはごくわずかで、特に硬いとか押下しづらいと感じることはなかった。
MX Tilter Kitは、非常に単純な仕組みである。3Dプリンターで作られた製品ゆえに、これが1万円近くするのはどうなんだ、という意見もあると思う。実際3Dプリンターをお持ちの方なら、自分で設計して作ろうと思えば作れるだろう。
だが本製品は、絶妙にフィットする角度や高さなど、試行錯誤に相当な時間をかけて作られたものであろうことは想像できる。コデラも3Dプリンターは持っているのでよく分かるが、小さい部品を大量に作ろうとすると、途中で倒れたり絡まったりして、歩留まりはかなり悪くなるだろう。
とはいえ、こうしたスペーサー軸を作ってキーキャップを持ち上げることで立体化するというアプローチは、これまでありそうでなかった発想である。今後は市販のエルゴノミクスキーボードの製造においても、いいヒントになったのではないだろうか。
ポイントは、基板やスイッチは平面でいいわけだから、メカニカルスイッチを使ったエルゴノミクスキーボードの製造が比較的容易になる、ということである。価格も下げられるだろう。
自作キーボード界隈では、時折こうしたイノベーティブな発想が出てくるから面白い。すでにレガシーデバイスの仲間入りをしているキーボードに、今更ながら革新や発明の波が押し寄せている。
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小寺信良のIT大作戦
ベテランのテクノロジーライターである小寺信良さんがIT分野全般にわたって考察する。
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