小寺信良のIT大作戦
ビジュアルアーティストの“作風”を保護する米国「CREATOR法案」とは? その建て付けと生成AI時代の課題(2/3 ページ)
この法律案のポイントは、侵害の判断は「AIによる模倣」だけに限ったものではないということだ。AIによる模倣がきっかけになったことは間違いないが、法律全体としては「作風」に権利を与えるものであって、侵害は人間の行為にも当てはまる。
ただし人間の行為に対しては除外項目が設けられており、細かい部分はそこでふるいにかけるという建て付けになっている。除外項目としては、
1)論評、批評、学術、研究、教育
2)パロディや風刺で、特定芸術家やその特徴的な視覚的特徴を論評・批評するもの
3)歴史的、伝記的、ドキュメンタリー作品(合理的なフィクション化を含む)で、承認や関与を偽って示唆しないもの
4)ニュース報道や公共問題の論評で、特徴的な視覚的特徴への言及が主題に実質的に関連するもの
5)一時的・偶発的・ごくわずかな類似で、特徴的な視覚的特徴の重要な組み合わせを再現しないもの
となっている。米国著作権特有のフェアユースのような、駆け引きできる仕組みではなく、かなり的を絞っている。
ストレートに人間が商業目的で模倣することは規制対象となるが、現実には手作業では量産もままならないので、やってる側としても人件費などを考えれば、割に合わない。
また人間が模倣すればより安易な道を選ぶため、トレースが基本になるので、どうしても構図やレイアウトまで似てしまう。1人の作家の作風だけに限って学習し、構図やレイアウトは真似ずに出力するというのは、人間にはかなり難しい。どうしても自分のクセや、他の学んだ結果が反映されてしまう。
日本の著作権法では、人間が真似した場合は翻案という形で著作権侵害の対象となるケースがある。これに関しては大学ICT推進協議会がまとめた資料があるので、どういう理由で侵害となったか、あるいはならなかったのか参考になるだろう。
民事訴訟と救済措置
この法案では、権利者は違反者に対して民事訴訟を提起できる。また救済措置として、違反者に対して裁判所から差止命令が発令される。一般的には違反状態が継続しないよう、訴訟が提起された段階から裁判終結まで、一時的に下される処分だ。
勝訴した場合は、権利者の選択として、「実損害+違反者の利益の請求」か、または「法定損害賠償請求」のどちらかが選択できる。
法定損害賠償に関しては、作風の模倣という行為を2段階に分けているようだ。一つは「Stylistic Impersonation」で、作風や表現様式を模倣する行為を指す。誰とは明示していないが真似しているのは明らか、というような場合だ。もう一つは「Intentional Targeting」で、特定の個人や権利者を意図的に狙った行為を指す。つまり誰々の新作などと偽って販売するような場合だ。
それぞれ法定損害賠償額が違い、「Stylistic Impersonation」の場合は模倣作品1件につき、1万ドル以上10万ドル以下、日本円ではだいたい160万円~1600万円程度になる。「Intentional Targeting」作品1件につき、5万ドル以上15万ドル以下とされているので、800万円~2400万円ということになる。
これでは安いと思うならば、「実損害+違反者の利益の請求」に切り替えればいいということになる。
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小寺信良のIT大作戦
ベテランのテクノロジーライターである小寺信良さんがIT分野全般にわたって考察する。
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